Star Festival

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『いつでもいいので、連絡ください。引退のときみたいに、泣いたり喚いたりしないから。』

囲み取材が終わって控え室に戻ると、あいつからメールが来ていた。

…あれ、思ったより冷静やん。

彼は、テレビを見てくれたらしかった。

テレビ局までの移動時間を利用して、電話をかけた。

ワンコールで彼が出る。

殊更に明るい声を出した。

もう後戻りはできひんのやから、不安はいっぱいあるけど、前に進むしかない。

彼は、言葉少なだった。

心配と、戸惑いと、少しの期待と。

彼の気持ちが手に取るように分かった。


キス、したいな……。

そう思っていると、電話越しにちゅっと。

「わーお♡」

心臓がドキドキしてきて、なんとか明るく受け止め、慌てて電話を切った。

あいつは、いつも俺の予想のつかないことをして、俺の心を鷲掴みにする。



俺の短冊にはこう書こう。


いつまでも二人でいられますように。



俺とあいつを出会わせてくれたスケートに感謝して。


4年ぶりの、俺のシーズンが始まる。



終わり

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