決戦は金曜日

part2. side d


スマホを握りしめてゆづの演技を見終え、ほっとひと息ついた俺は、布団の中で目を閉じた。

…あ、スマホ充電したっけ?

と、鳴り響くダースベイダーのテーマ。

俺は慌てて画面をタップした。

「あー悔しいっ、めちゃめちゃめちゃ悔しいっ!!くそぉっ!!」

「……………?!」

いきなり電話口で吠えられて、思わず飛び起きてしまった。

「聞いてんの? 大ちゃんっ。」

「あ、あぁ、聞いとる……」

ゆづ、こっちは明け方の5時前やで?

俺が寝てるとは思わへんのか?

「…ま、まぁ、途中のクワドサルコーまではよかったやん?」

「…………やっぱり見てたんだ。ちゃんと寝なきゃダメって言ったじゃん。」

「……………どの口が言うねん……」

こんな時間に電話かけて叩き起こしてくれてんのは、誰や?

ふふっと電話の向こうでゆづが笑った。

「…ありがとね、大ちゃん。たぶん、起きて見てくれてるって思ったんだ。」

「……お、おう……」

「あ、もう行かなきゃ。これから表彰式だから。またね!」

「おう。」

慌ただしく切れた電話に、俺はスマホを握ったまま、しばらく呆然としていた。

……今の、何やったん?



今度は忘れずにスマホを充電して、もう一度布団に横になった。

まぁ、なんか、最後はすこぶる機嫌が良かったし、ええかな。

いいように振り回されてる気はするけど。

たぶん一番に、俺に連絡をくれた(もうちょっと穏やかな感じやとなおよかったんやけどね…)

俺は、スマホを取り上げて、ゆづに短いメッセージを打った。



『優勝おめでとう。次は悔しがんなよ。』

きっと、今日のすべてがあいつの闘志に火を付ける。



お休み、ゆづ。




終わり

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