[混ぜるな危険]イナホ×コナン[カオスの予感]

とある町のマンションの一角。自室のパソコンに向かい、呟く少女がいた。ただ…反応が大袈裟だった。その言葉に反応したのは、彼女の相棒たる存在。と言っても、家族には視えていない・・・・・・存在なのだが。好奇心旺盛な彼女を抑えるのに毎日苦労している相棒は、彼女の言葉に呆れながら返す。しかし彼女はそれを軽くあしらい、興味津々で恐ろしい場所に向かおうとしている。相棒はは慌てて抵抗をする。彼女が暴走した時の末路を身をもって体感しているためである。だが、彼女に普通の忠告・・・・・が効くわけもない。結局必死に止める相棒を揶揄ったがために、狭い部屋の中で”いつもの地獄絵図”が完成していた。


翌日。米花駅。
電車内から少女を心配する声が聞こえる。
しかし、ホームに足を付け振り返った彼女はいつもの笑みを浮かべてこう言い切った。
「心配ご無用!私は普通じゃないので・・・・・・・・!」

 殺人の温床・米花町。
殺人事件が頻発し、入ったら出ることのできない蟻地獄とも評される日本のヨハネスブルク。
そんな場所に、一人の少女が降り立った。
果たしてそれはどんな結末を迎えるのだろうか?


 駅から降りた彼女はこの地が恐ろしい場所だと分かっていながら、本来の目的を忘れすっかり観光していた。持ち前のテンションを一切崩すことなく。ショウウィンドウ越しに物騒な店の内を覗いてみたり、事件が起きていると思われる場所で野次馬してみたり、警察署に書かれた殺人事件数を見て噴き出したり、わざと怪しげな行動を取ってみたり。相棒は自ら危険に首を突っ込みに行く彼女を制限することで既にヘトヘトだった。そして心の中で呟く。
(事件現場にウキウキで入っていく小学生なんて、イナホ以外いないダニ….。)
 そもそも事件が多い場所など普通の子供・・・・・なら、避けるはずだ。なのに、彼女は寧ろ自ら寄っていく。彼女は恐怖より興味関心のあるものに心の天秤が動いている。だから彼女の言動は突拍子もないことが多く、行動力もある分余計についていくのが大変なのだ。彼女の仲間と言える彼も、彼女の相棒も。


「……なにやってんだ?あの子……。」
本屋帰りのコナンは、自分より年下(精神年齢で)のボブカットの彼女の言動に呆れの目を向けていた。小学校高学年程度に見える、ボブカットで丸眼鏡の少女は、至ってありきたりなガラスを見ては、急に変な方向に回りだしたり真剣な表情で何やら呟いたりと、奇妙な行動を取っている。しかも、スマホで電話をかけている素振りもないのに、どこかにむかって話しているようだ。何を話しているのかは聞き取ることはできないが、彼女が”変わっている”ことだけはすぐに理解できたコナンだった。コナンはつい好奇心を抑えきれず、彼女に声を掛けた。
それが、失敗であると知らずに……。
「ねぇ、お姉さん。何してるの?」
「おぉ!住人発見!」
「へ?」
 声を掛けたにも関わらず、全く会話の成り立たない返事をされ、思わず間抜けた声が出る。普通、"何しているの"と聞かれたら素直に答えるもののはずなのに、彼女は全く質問に答えていなかった。
「米花町在住ですか?少しばかり調査に協力していただけませんか?!」
 そればかりか、こっちの要件も聞かずにグイグイと来る。これは周りが苦労してそうだと、内心で苦笑いを浮かべる。その苦笑いを顔に出さないように頑張って、詳しい内容を聞こうと質問を続ける。
「調査って何を調べてるの?」
「守秘義務故、秘密にさせてください!ネットを介して依頼を受けたんです。」
「依頼って……。お姉さん、探偵なの?」
この街に探偵が多いことの弊害。依頼=探偵と安直に結び付けてしまったのだ。少し考えれば、小学5年生くらいの子供が探偵であるはずがないと、気づくはずなのに。
「よくぞ聞いてくれた!私はイナウサ不思議探偵社の未空イナホ!相棒と共に様々な怪事件を解決してきた名探偵だ!」
 ドヤ顔で言い切るイナホに、コナンはポカンとするしかない。
つい探偵かと聞いてしまったが、あり得ないと思っていたところにこの回答である。まさか探偵だとは思わなかったし、しかも堂々と名乗られるとは思わなかったのだ。流石に子供一人でやっているわけなかろうと思って聞いてみれば、本当に子供一人でやっているらしく、しかも遊び半分なのか依頼料はないらしい。なのに事務所もあればパソコンもある。そんな状況なのに依頼料がない方がおかしい。収支が完全にマイナスだ。
もしや、ウソ言ってるんじゃ?
いつの間にかコナンの中で彼女は警戒の対象になっていた。
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