埋葬編
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「江流、こちらへ」
「苗字名前です。初めまして、江流くん」
しばらく禅奥寺へお出かけなさっていたお師匠様。
やっとここ金山寺に帰って来られたと思ったら、驚く事に見知らぬ女性を連れ添っていた。
膝を折り曲げて同じ目線で微笑む名前様を見て、なぜか身体がこわばる。
「……はじめ、まして」
「ははは、いけませんねぇ名前さん。まだ4歳の少年を誑かすなんて」
「もう、ただ自己紹介しただけじゃないですか。光明様」
話によると、名前様はわけあって金山寺で預かる事になったお師匠様の遠縁の娘だそうで。
女人禁制の寺院で、女性を見たのは初めてだ。
「私は溜まっていた雑事を片付けてきますので、江流。名前さんに寺院の案内、頼めますか?」
「は、はい」
お師匠様が立ち去り、名前様と二人きりになる。
どうしてこんなに緊張するのだろうか。
「いきなりお邪魔して、びっくりしたでしょう。驚かせてごめんなさいね」
「いえ……それでは、ご案内しますね」
「はい、お願いします。江流くんは、とてもしっかりしてるのですね」
お師匠様とはまた違った笑顔で、名前様は笑う。
まるで、荒野に咲く一輪の花のようだと思った。
「名前様は、いつまでこちらに滞在なさるのですか?」
特に深い意味はない。
気になった質問を口にすると、名前様は眉を八の字にして困ったように微笑む。
失礼な聞き方をしてしまっただろうか。
「そうですね。いつ、というのが決まっていなくて……いずれは、光明様の元から離れなければならないのでしょうけれど」
しゅんと、影を落とした名前様の姿に、やはり聞かなければよかったと後悔する。
「すみません」
「いいえ、江流くんはやさしいのですね。光明様にそっくりです」
そう言われて、顔を赤くする。
ふいに降りてくる、やわらかくてあたたかい感触。
気がつけば、名前様に頭をなでられていた。
「あ、あの!名前様……!」
「あ、ごめんなさい!かわいくてつい……勝手に触れられて、やっぱり嫌でした?」
眉を落として見つめられて、また頬に熱が集まるのがわかる。
なんだ、これは。
ひっそりと眉を寄せて、視線をそらす。
「いえ、その……ただ、びっくりしただけで」
「それでは、これからもなでて構いませんか?」
「……はい」
「ありがとうございます。私、江流くんのきれいな金糸の髪、大好きです」
大好き、と言われて心臓がどきりと高鳴った。
にこにこと、すっかり笑顔になった名前様。
むず痒さの中、胸の内があたたかくなるような、何かがしめつけられるような不思議な感じ。
この頃から俺は、名も知らぬ感情を抱き始めていた。
「ふふ、江流と名前さんを見ていると目の保養になりますね」
「もう光明様、また白昼堂々と煙草をお吸いになって」
「今日は一段と美味しくて、仕方ありません」
「苗字名前です。初めまして、江流くん」
しばらく禅奥寺へお出かけなさっていたお師匠様。
やっとここ金山寺に帰って来られたと思ったら、驚く事に見知らぬ女性を連れ添っていた。
膝を折り曲げて同じ目線で微笑む名前様を見て、なぜか身体がこわばる。
「……はじめ、まして」
「ははは、いけませんねぇ名前さん。まだ4歳の少年を誑かすなんて」
「もう、ただ自己紹介しただけじゃないですか。光明様」
話によると、名前様はわけあって金山寺で預かる事になったお師匠様の遠縁の娘だそうで。
女人禁制の寺院で、女性を見たのは初めてだ。
「私は溜まっていた雑事を片付けてきますので、江流。名前さんに寺院の案内、頼めますか?」
「は、はい」
お師匠様が立ち去り、名前様と二人きりになる。
どうしてこんなに緊張するのだろうか。
「いきなりお邪魔して、びっくりしたでしょう。驚かせてごめんなさいね」
「いえ……それでは、ご案内しますね」
「はい、お願いします。江流くんは、とてもしっかりしてるのですね」
お師匠様とはまた違った笑顔で、名前様は笑う。
まるで、荒野に咲く一輪の花のようだと思った。
「名前様は、いつまでこちらに滞在なさるのですか?」
特に深い意味はない。
気になった質問を口にすると、名前様は眉を八の字にして困ったように微笑む。
失礼な聞き方をしてしまっただろうか。
「そうですね。いつ、というのが決まっていなくて……いずれは、光明様の元から離れなければならないのでしょうけれど」
しゅんと、影を落とした名前様の姿に、やはり聞かなければよかったと後悔する。
「すみません」
「いいえ、江流くんはやさしいのですね。光明様にそっくりです」
そう言われて、顔を赤くする。
ふいに降りてくる、やわらかくてあたたかい感触。
気がつけば、名前様に頭をなでられていた。
「あ、あの!名前様……!」
「あ、ごめんなさい!かわいくてつい……勝手に触れられて、やっぱり嫌でした?」
眉を落として見つめられて、また頬に熱が集まるのがわかる。
なんだ、これは。
ひっそりと眉を寄せて、視線をそらす。
「いえ、その……ただ、びっくりしただけで」
「それでは、これからもなでて構いませんか?」
「……はい」
「ありがとうございます。私、江流くんのきれいな金糸の髪、大好きです」
大好き、と言われて心臓がどきりと高鳴った。
にこにこと、すっかり笑顔になった名前様。
むず痒さの中、胸の内があたたかくなるような、何かがしめつけられるような不思議な感じ。
この頃から俺は、名も知らぬ感情を抱き始めていた。
「ふふ、江流と名前さんを見ていると目の保養になりますね」
「もう光明様、また白昼堂々と煙草をお吸いになって」
「今日は一段と美味しくて、仕方ありません」