RELOAD編
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森のざわめきが聞こえる中、烏哭の唇が弧を描く。
「さっすがァ!オイシイもんな〜登場のタイミングが」
「てめぇが烏哭か。よくもまぁウチの名前ちゃんを攫ったうえ、最高僧をボロ雑巾みてぇにしてくれちゃって」
「なぁ名前、このあいだ話してくれたよな。俺の事半殺しにしたのも、コイツ?」
「はい」
「なるほど。だから三蔵も、あの男を追ってこんな……」
「ボロ雑巾にされたんだなッ!?」
皆から散々ボロ雑巾呼ばわりされて、私の膝の上に頭を乗せる三蔵が青筋を立てる。
気がつけば、見えなくなっていたヘイゼルとガトもこの場に戻っていた。
「あれ、雑巾がボロになって何が悪いんですか?」
「八戒……」
「そーそ。ヤるだけヤってボロ布ンなったなら、残りのお掃除は、俺らに任せたっていんじゃね?」
悟浄と悟空が同時に烏哭に向かって行くが、その攻撃は空を切る。
烏哭は切り株に座り、余裕綽々といった様子だ。
「展開、早ッ!普通、少しは敵とのトーク広げない?ねぇ、名前さん」
「名前にちょっかいかけんじゃねーよ!」
「すっかり三蔵一行のお姫サマだねぇ。まぁその方が、奪い甲斐があるってモンだ」
「名前はただのお姫様じゃねぇ!仲間だッ!」
「悟空……!」
無闇に近づいてはダメだと、三蔵とともに声を上げる。
休む暇も与えず三人は攻撃を仕掛けるが、何一つ当たらず、すべて無に還る。
「なるほど、これは確かに厄介な敵のようですね」
「どーゆー事だ!?」
「つまり、攻撃を無効にするどころか空間さえも無にして繋いでしまう。瞬間移動もお手の物ですよ」
「そーゆー事。例えば、こんな風に」
烏哭が腕を上げたかと思えば、一瞬にして視界が黒に染まる。
それまで三蔵のすぐそばにいた私は、再び漆黒の法衣に捕らわれていた。
腰にまわされた腕が強くなり、ぐっと顔を寄せられる。
「名前!」
「オイ、名前ちゃんに気安く触ってんじゃねェよ」
「ついでに教えてあげようか。キミらの仲間だと思ってる名前さんと僕のやらしい関係を」
「烏哭、様」
四人の目の前で、首筋に唇を寄せられる。
ぬるりと舌を這われて、反射的に身体が震えた。
「名前さんと僕はとっくの昔に繋がってんの。カラダの方から先にね」
「いいからさっさとその汚ねぇ手を離せ、クソガラス」
「昔から変わらないねぇ、玄奘ちゃん。悔しいでしょ?」
三蔵の鋭い視線がこちらへ向かう中、笑みを浮かべる烏哭に唇を親指でなぞられる。
まるで挑発するようにゆっくりと触れられたあと、後頭部に手がかかり唇を奪われる。
突如、こちらに向かってきた鎖を烏哭は口づけたまま、いともたやすく無に還した。
「残念、せっかく青姦でもしようかと思ったのに」
「頭にキてんのは三蔵だけじゃねぇぞ」
「そうですよ」
悟浄たちが再び戦闘態勢に入る。
烏哭がその気になれば、先ほどの三蔵のように皆を無に消し去る事も出来る。
そう、出来てしまう。
「玄奘三蔵はともかく、君らを消したくはないんだな勿体なくて。できれば、名前さん含めて全員まとめて研究室にお持ち帰りィ~みたいな?」
笑う烏哭は研究者としての顔を見せる。
悟浄、八戒、悟空、ガトについて標本展示会だと語り、最後に。
「……そして、妖の魂を体内に共生させる事で特殊な蘇生能力を操る呪術師。ヘイゼル=グロース」
信じられない言葉に、耳を疑った。
困惑するヘイゼルに向かい、烏哭は笑みを浮かべながら彼の記憶へと呼びかける。
頭を抱えたヘイゼルは、悲痛な叫び声を上げた。
膝をついて座り込んだヘイゼルに、ガトが歩み寄る。
「ヘイゼル」
「違う。ヘイゼルちゃうわ、ボケ。ワシの名は、ヴラハルや。よう覚えとき、兄ちゃん達」
「ヘイゼル、さん」
「だから、ちゃう言うとるやろ。そこの美味そうな姉ちゃん」
そこにいたのは、ヘイゼルではない誰かだった。
烏哭の言った通り、ヘイゼルは記憶とともにその体内に妖怪を封じ込めていたのだ。
今まで、ずっと。
呼吸を荒くする中、一瞬、ヘイゼルが自我を取り戻したかと思ったが、再び不気味な笑みを浮かべる。
「思い上がっとったんやろなァ、自分の力を。その過信が招いた犠牲、罰や魔物のせいなんかやない。お前のせいで、マスターは死んだ。お前が殺したんじゃ!」
悲痛な絶叫とともに、ヘイゼルの背中から何かが生えてくる。
それは悪魔のような、真っ黒な羽。
「ホラね、やっぱり天使ちゃんだ」
「天使、だなんて」
「だって西で言う堕天使って、悪魔の事でしょ」
ヘイゼルを中心に、凄まじい突風が吹き荒れる。
木々が鋭く切り裂かれ、容赦のない攻撃が皆を襲う。
ヘイゼルの姿をした妖怪は高笑いする。
「抵抗する気力ももうあらへんやろ。邪魔しよる奴は、皆殺しやで虫ケラども」
「無力だねぇ、名前さん」
耳元で、烏哭がやさしく残酷にささやく。
指が頬を伝い降りてきて、ぐっとあごを持ち上げられた。
「賭けてみるかい?ここで三蔵一行がヤられるか、はたまた天使ちゃんがヤられるか。ま、賭けるまでもなさそうだけど」
「……負けません。三蔵たちも、ヘイゼルも、誰一人として」
私は、信じている。
ヘイゼルとともに過ごした時間は、短い。
だけど、わかる。
彼は私たちと対峙しても、揺るがない信念を持っていた。
ヘイゼルはきっと、自我を取り戻す。
「ヘイゼルさん!貴方の大事な人を殺したのは、その妖怪です!ヘイゼルさんじゃありません!それだけは、絶対です!」
「うるさいやっちゃなァ。口先だけでなんも役に立たん小娘は黙っとき」
烏哭に捕われた私の元へ凄まじい攻撃が向かうが、それも無に還される。
舌打ちをするヘイゼルに、烏哭は笑みを浮かべて手を振る。
相手がヘイゼルなため、皆下手に攻撃が出来ない状況。
プライドが高けりゃ、と三蔵がつぶやいて笑う。
「黙って聞いてりゃ、つくづく醜い野郎だな」
「……何やとォ?」
「てめぇは黙ってろ。お前が不様だって言ってんだよ、ヘイゼル=グロース」
三蔵は妖怪ヴラハルの中にいる、ヘイゼルへと呼びかける。
「名前の後ろに隠れていろと、言ってたのは誰だ?隠れてるのはてめぇの方がじゃねえか。それに、命を扱う重さは理解しているとも言ったな……笑わせる。そんな下衆妖怪に多少痛い所を突かれたぐらいで憶するような、てめぇの覚悟はその程度か」
「ハッ!無駄や、もう出て来おへんわ」
「その程度かって聞いてんだよ!答えてみろヘイゼル=グロース!」
「~じゃかぁしいわ!」
顔を歪ませるヘイゼルの手から、巨大な光の塊が解き放たれた。
衝撃に煙が立ち込める中、今度は八戒が口を開く。
「人にさんざっぱらご高説のたまっておいて、挙げ句の果てには妖怪風情に乗っ取られて、悲劇の主人公面でリタイヤですか。いいご身分で」
三蔵だけでなく、八戒もヘイゼルへと呼びかける。
数々の攻撃を悟空、悟浄とともに防ぎながら、八戒はまっすぐ見据える。
「僕ごときの雑言にすら返せる言葉もありませんか?ガッカリですねぇ。名前の前であれだけカッコつけておきながら、憎まれ口も立つ方だったのに……ザマぁねーなってカンジですよ」
「黙らんかいこのダボがぁあ!」
八戒に向かった羽の切っ先は、その目の前で止まる。
ヘイゼルは自身の首をしめて、妖怪の力を抑えていた。
自我を、取り戻したんだ。
「ヘイゼルさん!」
「よお好き勝手……喋らはるお人らやな、眼鏡はん……三蔵はん……それに、名前はんも。ちゃんと、聞こえたで。ま、今日のとこ……は、勘弁しといたる……」
「おおきに、でよろしいですか?」
黒い羽が消えて元の姿に戻ったヘイゼルは笑ったあと、力なく倒れた。
「さっすがァ!オイシイもんな〜登場のタイミングが」
「てめぇが烏哭か。よくもまぁウチの名前ちゃんを攫ったうえ、最高僧をボロ雑巾みてぇにしてくれちゃって」
「なぁ名前、このあいだ話してくれたよな。俺の事半殺しにしたのも、コイツ?」
「はい」
「なるほど。だから三蔵も、あの男を追ってこんな……」
「ボロ雑巾にされたんだなッ!?」
皆から散々ボロ雑巾呼ばわりされて、私の膝の上に頭を乗せる三蔵が青筋を立てる。
気がつけば、見えなくなっていたヘイゼルとガトもこの場に戻っていた。
「あれ、雑巾がボロになって何が悪いんですか?」
「八戒……」
「そーそ。ヤるだけヤってボロ布ンなったなら、残りのお掃除は、俺らに任せたっていんじゃね?」
悟浄と悟空が同時に烏哭に向かって行くが、その攻撃は空を切る。
烏哭は切り株に座り、余裕綽々といった様子だ。
「展開、早ッ!普通、少しは敵とのトーク広げない?ねぇ、名前さん」
「名前にちょっかいかけんじゃねーよ!」
「すっかり三蔵一行のお姫サマだねぇ。まぁその方が、奪い甲斐があるってモンだ」
「名前はただのお姫様じゃねぇ!仲間だッ!」
「悟空……!」
無闇に近づいてはダメだと、三蔵とともに声を上げる。
休む暇も与えず三人は攻撃を仕掛けるが、何一つ当たらず、すべて無に還る。
「なるほど、これは確かに厄介な敵のようですね」
「どーゆー事だ!?」
「つまり、攻撃を無効にするどころか空間さえも無にして繋いでしまう。瞬間移動もお手の物ですよ」
「そーゆー事。例えば、こんな風に」
烏哭が腕を上げたかと思えば、一瞬にして視界が黒に染まる。
それまで三蔵のすぐそばにいた私は、再び漆黒の法衣に捕らわれていた。
腰にまわされた腕が強くなり、ぐっと顔を寄せられる。
「名前!」
「オイ、名前ちゃんに気安く触ってんじゃねェよ」
「ついでに教えてあげようか。キミらの仲間だと思ってる名前さんと僕のやらしい関係を」
「烏哭、様」
四人の目の前で、首筋に唇を寄せられる。
ぬるりと舌を這われて、反射的に身体が震えた。
「名前さんと僕はとっくの昔に繋がってんの。カラダの方から先にね」
「いいからさっさとその汚ねぇ手を離せ、クソガラス」
「昔から変わらないねぇ、玄奘ちゃん。悔しいでしょ?」
三蔵の鋭い視線がこちらへ向かう中、笑みを浮かべる烏哭に唇を親指でなぞられる。
まるで挑発するようにゆっくりと触れられたあと、後頭部に手がかかり唇を奪われる。
突如、こちらに向かってきた鎖を烏哭は口づけたまま、いともたやすく無に還した。
「残念、せっかく青姦でもしようかと思ったのに」
「頭にキてんのは三蔵だけじゃねぇぞ」
「そうですよ」
悟浄たちが再び戦闘態勢に入る。
烏哭がその気になれば、先ほどの三蔵のように皆を無に消し去る事も出来る。
そう、出来てしまう。
「玄奘三蔵はともかく、君らを消したくはないんだな勿体なくて。できれば、名前さん含めて全員まとめて研究室にお持ち帰りィ~みたいな?」
笑う烏哭は研究者としての顔を見せる。
悟浄、八戒、悟空、ガトについて標本展示会だと語り、最後に。
「……そして、妖の魂を体内に共生させる事で特殊な蘇生能力を操る呪術師。ヘイゼル=グロース」
信じられない言葉に、耳を疑った。
困惑するヘイゼルに向かい、烏哭は笑みを浮かべながら彼の記憶へと呼びかける。
頭を抱えたヘイゼルは、悲痛な叫び声を上げた。
膝をついて座り込んだヘイゼルに、ガトが歩み寄る。
「ヘイゼル」
「違う。ヘイゼルちゃうわ、ボケ。ワシの名は、ヴラハルや。よう覚えとき、兄ちゃん達」
「ヘイゼル、さん」
「だから、ちゃう言うとるやろ。そこの美味そうな姉ちゃん」
そこにいたのは、ヘイゼルではない誰かだった。
烏哭の言った通り、ヘイゼルは記憶とともにその体内に妖怪を封じ込めていたのだ。
今まで、ずっと。
呼吸を荒くする中、一瞬、ヘイゼルが自我を取り戻したかと思ったが、再び不気味な笑みを浮かべる。
「思い上がっとったんやろなァ、自分の力を。その過信が招いた犠牲、罰や魔物のせいなんかやない。お前のせいで、マスターは死んだ。お前が殺したんじゃ!」
悲痛な絶叫とともに、ヘイゼルの背中から何かが生えてくる。
それは悪魔のような、真っ黒な羽。
「ホラね、やっぱり天使ちゃんだ」
「天使、だなんて」
「だって西で言う堕天使って、悪魔の事でしょ」
ヘイゼルを中心に、凄まじい突風が吹き荒れる。
木々が鋭く切り裂かれ、容赦のない攻撃が皆を襲う。
ヘイゼルの姿をした妖怪は高笑いする。
「抵抗する気力ももうあらへんやろ。邪魔しよる奴は、皆殺しやで虫ケラども」
「無力だねぇ、名前さん」
耳元で、烏哭がやさしく残酷にささやく。
指が頬を伝い降りてきて、ぐっとあごを持ち上げられた。
「賭けてみるかい?ここで三蔵一行がヤられるか、はたまた天使ちゃんがヤられるか。ま、賭けるまでもなさそうだけど」
「……負けません。三蔵たちも、ヘイゼルも、誰一人として」
私は、信じている。
ヘイゼルとともに過ごした時間は、短い。
だけど、わかる。
彼は私たちと対峙しても、揺るがない信念を持っていた。
ヘイゼルはきっと、自我を取り戻す。
「ヘイゼルさん!貴方の大事な人を殺したのは、その妖怪です!ヘイゼルさんじゃありません!それだけは、絶対です!」
「うるさいやっちゃなァ。口先だけでなんも役に立たん小娘は黙っとき」
烏哭に捕われた私の元へ凄まじい攻撃が向かうが、それも無に還される。
舌打ちをするヘイゼルに、烏哭は笑みを浮かべて手を振る。
相手がヘイゼルなため、皆下手に攻撃が出来ない状況。
プライドが高けりゃ、と三蔵がつぶやいて笑う。
「黙って聞いてりゃ、つくづく醜い野郎だな」
「……何やとォ?」
「てめぇは黙ってろ。お前が不様だって言ってんだよ、ヘイゼル=グロース」
三蔵は妖怪ヴラハルの中にいる、ヘイゼルへと呼びかける。
「名前の後ろに隠れていろと、言ってたのは誰だ?隠れてるのはてめぇの方がじゃねえか。それに、命を扱う重さは理解しているとも言ったな……笑わせる。そんな下衆妖怪に多少痛い所を突かれたぐらいで憶するような、てめぇの覚悟はその程度か」
「ハッ!無駄や、もう出て来おへんわ」
「その程度かって聞いてんだよ!答えてみろヘイゼル=グロース!」
「~じゃかぁしいわ!」
顔を歪ませるヘイゼルの手から、巨大な光の塊が解き放たれた。
衝撃に煙が立ち込める中、今度は八戒が口を開く。
「人にさんざっぱらご高説のたまっておいて、挙げ句の果てには妖怪風情に乗っ取られて、悲劇の主人公面でリタイヤですか。いいご身分で」
三蔵だけでなく、八戒もヘイゼルへと呼びかける。
数々の攻撃を悟空、悟浄とともに防ぎながら、八戒はまっすぐ見据える。
「僕ごときの雑言にすら返せる言葉もありませんか?ガッカリですねぇ。名前の前であれだけカッコつけておきながら、憎まれ口も立つ方だったのに……ザマぁねーなってカンジですよ」
「黙らんかいこのダボがぁあ!」
八戒に向かった羽の切っ先は、その目の前で止まる。
ヘイゼルは自身の首をしめて、妖怪の力を抑えていた。
自我を、取り戻したんだ。
「ヘイゼルさん!」
「よお好き勝手……喋らはるお人らやな、眼鏡はん……三蔵はん……それに、名前はんも。ちゃんと、聞こえたで。ま、今日のとこ……は、勘弁しといたる……」
「おおきに、でよろしいですか?」
黒い羽が消えて元の姿に戻ったヘイゼルは笑ったあと、力なく倒れた。