RELOAD編
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それはまさに、瞬く間に起こった出来事。
「悟空!」
どくどくと傷口から血を流して、地面に倒れ込んだ悟空が吐血する。
何が起こったか、わからない。
でも、茫然としてる場合じゃない。
自身の服の袖を切り裂いて止血するが、腕から脚から全身から、とめどなく血が流れ出す。
「三蔵!三蔵!」
「……ッ!」
その場に立ち尽くしていた三蔵が我に帰り、私たちを引き寄せて銃を構える。
敵は妖怪か、人間か。
姿が見えずわからない。
後ろを振り返った三蔵が銃を放つも、そこにあるのは暗闇だけだった。
「おいどうしたよ、悟空!?」
「これは、一体……!」
「八戒!お願いします!早く悟空の傷を……!」
騒ぎを聞きつけた八戒と悟浄が駆けつけて、私は八戒に場所を譲り手足の止血を進める。
「三蔵、貸して!傷を塞ぎます」
声をかけられても三蔵は微動だにせず、その手は悟空の体をつかんだまま離さない。
声を上げようとした瞬間、乾いた音が鳴り響く。
「あ……?」
「悟空を離しなさい」
「三蔵、お願いします」
八戒が三蔵の頬を叩いて、やっと悟空から離れた。
「深い傷が多すぎる……出血に追いつかない!」
「ざけんなよッ!おい悟空、死ぬな!死んだらブッ飛ばすぞ!」
内臓がほとんどやられていると言う八戒の言葉に、冷や汗が止まらない。
私たちが手を施してもその血は止まる事なく、地面を赤に染め上げる。
「殺す……あいつを殺す」
「どこ行くんだ、こんな時によ!」
「三蔵、待って!」
呼び止める声も聞かず、三蔵は一人駆け出していってしまった。
無理もありません、と静かにつぶやく八戒を悟浄と二人して見つめる。
「手遅れです」
八戒のその言葉に、頭が真っ白になる。
激怒した悟浄が八戒の胸ぐらをつかみ上げる。
そのまま八戒が、困惑する私と悟浄へと視線を向けた。
「名前、悟浄。最後の可能性に賭けてみませんか。金鈷を外すんです」
「え、」
「今、この場でか……?」
周りを見ると、何事かと町の人たちが集まり出している。
金鈷を外して本来の姿に戻った悟空を止められるか、誰も保証はできない。
それでも。
「八戒、悟浄。やりましょう」
「名前……」
「悟浄、迷ってる時間はありませんよ」
「……迷いやしねぇよ」
私たちを見て頷いた悟浄の手が、金鈷へと伸びる。
まだ死んじゃダメだ、悟空。
力なく冷えていく悟空の手を握り、私は必死に祈った。
悟空の、金晴瞳が大きく開かれる。
勢いよく舞い上がった風圧により、私は地面へ倒れ込む。
咆哮と地響き。
斉天大聖の姿となった悟空は、屋根の上へと移る。
大地の気を吸い上げて、重傷だった身体は完治していた。
「悟空、治りましたけど」
「あぁ。結果は最高、状況は最悪ってな」
「やるしかありませんね」
もう一度、金鈷をはめ直せばいい。
ただそれが、一筋縄ではいかない事を皆知っている。
見えない敵を追いかけて、殺意とともにいなくなった三蔵。
今一番、悟空にとって必要な人がこの場にいない。
三蔵、早く戻ってきて。
にやりと顔を歪ませた悟空の牙が、町の人たちへと向かう。
八戒と悟浄が止めるが、間に合わない。
そう、思った時。
「騙されるとこやったわ、悟空はん。いや、斉天大聖」
「ヘイゼルさん、どうして……」
銃声とともにヘイゼルたちが現れた。
なぜ、ヘイゼルがその名を知っているのか。
ガトと悟空の攻防が続くが、銃弾が悟空の体にあたる事はない。
「以前にもありましたね、こんな状況が」
「八戒?」
「止めてくれと言われたのに、僕は何も出来ませんでした。長丁場になったら僕も自信がありません。もし、僕が暴走したらその時は、貴方が止めてくださいね、悟浄。そして貴方は逃げてください、名前。でないと、僕が耐えきれないので」
「八戒……!」
そう言って、八戒は戸惑う事なく制御装置である耳のカフスを外した。
尖った耳と爪先に、身体中、顔まで刻まれたツタの紋様。
初めて見る、八戒の妖怪姿。
「今度は止めますよ、悟空!」
繰り広げられる激しい戦闘。
傷を負っても大地により回復する悟空は、まさに不死身。
ふっと、月明かりが消える。
地面が揺れて、嵐が巻き起こり始めた。
「空が……大地が、騒いでいる」
「自然界の力が育んだ生命体、斉天大聖。妖怪どころやない、そんなもんはもう……神や」
「悪ふざけが過ぎますよ!」
悟空が八戒の足をつかみ上げ、地面へ強く叩きつける。
しかし、形勢逆転。
今度は八戒が馬乗りになり、何度も何度も悟空を殴り始めた。
八戒、笑っている。
「悟浄!」
「おう!」
八戒の振り上げた腕を私がつかみ、その隙に悟浄が羽交締めする。
うなり声とともに悟空の鋭い爪が襲いかかってきて、私はそれを何とか避けた。
軽く引き裂かれた腕から血が滲む。
「名前!平気か!?」
「かすり傷です!それよりも」
茫然とする八戒の目の前に行き、その手をつかむ。
自我を失ったと思っていたが、振り払われる事はなかった。
「八戒!しっかりして、八戒!」
「……名前?あぁ、すみません」
「大丈夫か?」
私たちの元へ、ガトたちも寄ってきた。
このままでは埒が明かないと、八戒は何か策があるようでヘイゼルにガトを借りるよう頼む。
八戒はすでに満身創痍だ。
本当はもうこれ以上、傷ついてほしくないけど。
「八戒。死んだら私、怒りますからね」
「えぇ、わかってます名前。貴方を置いて死んだりなんか出来ませんよ」
咆哮とともに、轟く落雷。
腕を伸ばしたガトから八戒へ、そして地面を這う八戒のツタから悟空へと、導線にして感電させる。
悟浄が悟空へ、金鈷をはめ直した。
これでもう悟空は大丈夫だ。
「八戒!目を覚まして、八戒!」
私は無我夢中で、必死に叫ぶ。
倒れて息のない八戒の胸に両手を当てて、心臓の上を何度も押し続ける。
まだだ、まだ八戒は死んでいない。
私を置いて死ねないと、そう言ったじゃないか。
先ほど傷を負った腕から、血が滴り落ちる。
「名前、つれぇだろ。俺が変わる」
「お願いです。悟浄、私に任せてください」
「……あぁ、わかった」
頭を軽く持ち上げて、八戒へ顔を近づけて唇を重ねる。
あの時の、朱泱様の時のような。
三蔵が倒れた後、観世音菩薩様が現れた時のような血気を送り込めるような力が、今の私にあるかはわからない。
それでも、再び目を開ける事を祈りながら息を吹き込み続けた。
私たちのそばへ、誰かが近づく気配を感じる。
「おいヘイゼル!余計な事したらブッ殺すぞ!」
悟浄が声を荒げる耳に、私はそっと八戒から唇を離す。
ピクリと身体が動いて大きく咳き込み、ようやく八戒は息を取り戻した。
その姿に安堵して、全身の力が抜けた。
「……悟空、は?」
「あぁ、元に戻したぜ」
「なんて顔してるんですか、二人共」
「うるせぇ、バカ。もうしゃべんな」
「八戒……本当に、本当によかった」
「名前、また泣かせちゃいましたね」
眉尻を下げて、いまだ妖怪の姿の八戒が力なく笑う。
八戒の胸に顔をうずめると、やさしく頭をなでられた。
雨が上がり、青い空が晴れる。
足音がして振り返ると、待ち望んでいた人がそこにいた。
「名前、行くぞ」
八戒と悟空を抱えた悟浄に呼ばれて、私は八戒を支えつつその場に立ち尽くす三蔵を見つめる。
「悪ィな、両手がふさがっちまってよ。てめぇをブン殴れねえわ」
「三蔵……」
すれ違い際に名前を呼ぶ。
しかし、三蔵がこちらへ振り向く事はなかった。
「悟空!」
どくどくと傷口から血を流して、地面に倒れ込んだ悟空が吐血する。
何が起こったか、わからない。
でも、茫然としてる場合じゃない。
自身の服の袖を切り裂いて止血するが、腕から脚から全身から、とめどなく血が流れ出す。
「三蔵!三蔵!」
「……ッ!」
その場に立ち尽くしていた三蔵が我に帰り、私たちを引き寄せて銃を構える。
敵は妖怪か、人間か。
姿が見えずわからない。
後ろを振り返った三蔵が銃を放つも、そこにあるのは暗闇だけだった。
「おいどうしたよ、悟空!?」
「これは、一体……!」
「八戒!お願いします!早く悟空の傷を……!」
騒ぎを聞きつけた八戒と悟浄が駆けつけて、私は八戒に場所を譲り手足の止血を進める。
「三蔵、貸して!傷を塞ぎます」
声をかけられても三蔵は微動だにせず、その手は悟空の体をつかんだまま離さない。
声を上げようとした瞬間、乾いた音が鳴り響く。
「あ……?」
「悟空を離しなさい」
「三蔵、お願いします」
八戒が三蔵の頬を叩いて、やっと悟空から離れた。
「深い傷が多すぎる……出血に追いつかない!」
「ざけんなよッ!おい悟空、死ぬな!死んだらブッ飛ばすぞ!」
内臓がほとんどやられていると言う八戒の言葉に、冷や汗が止まらない。
私たちが手を施してもその血は止まる事なく、地面を赤に染め上げる。
「殺す……あいつを殺す」
「どこ行くんだ、こんな時によ!」
「三蔵、待って!」
呼び止める声も聞かず、三蔵は一人駆け出していってしまった。
無理もありません、と静かにつぶやく八戒を悟浄と二人して見つめる。
「手遅れです」
八戒のその言葉に、頭が真っ白になる。
激怒した悟浄が八戒の胸ぐらをつかみ上げる。
そのまま八戒が、困惑する私と悟浄へと視線を向けた。
「名前、悟浄。最後の可能性に賭けてみませんか。金鈷を外すんです」
「え、」
「今、この場でか……?」
周りを見ると、何事かと町の人たちが集まり出している。
金鈷を外して本来の姿に戻った悟空を止められるか、誰も保証はできない。
それでも。
「八戒、悟浄。やりましょう」
「名前……」
「悟浄、迷ってる時間はありませんよ」
「……迷いやしねぇよ」
私たちを見て頷いた悟浄の手が、金鈷へと伸びる。
まだ死んじゃダメだ、悟空。
力なく冷えていく悟空の手を握り、私は必死に祈った。
悟空の、金晴瞳が大きく開かれる。
勢いよく舞い上がった風圧により、私は地面へ倒れ込む。
咆哮と地響き。
斉天大聖の姿となった悟空は、屋根の上へと移る。
大地の気を吸い上げて、重傷だった身体は完治していた。
「悟空、治りましたけど」
「あぁ。結果は最高、状況は最悪ってな」
「やるしかありませんね」
もう一度、金鈷をはめ直せばいい。
ただそれが、一筋縄ではいかない事を皆知っている。
見えない敵を追いかけて、殺意とともにいなくなった三蔵。
今一番、悟空にとって必要な人がこの場にいない。
三蔵、早く戻ってきて。
にやりと顔を歪ませた悟空の牙が、町の人たちへと向かう。
八戒と悟浄が止めるが、間に合わない。
そう、思った時。
「騙されるとこやったわ、悟空はん。いや、斉天大聖」
「ヘイゼルさん、どうして……」
銃声とともにヘイゼルたちが現れた。
なぜ、ヘイゼルがその名を知っているのか。
ガトと悟空の攻防が続くが、銃弾が悟空の体にあたる事はない。
「以前にもありましたね、こんな状況が」
「八戒?」
「止めてくれと言われたのに、僕は何も出来ませんでした。長丁場になったら僕も自信がありません。もし、僕が暴走したらその時は、貴方が止めてくださいね、悟浄。そして貴方は逃げてください、名前。でないと、僕が耐えきれないので」
「八戒……!」
そう言って、八戒は戸惑う事なく制御装置である耳のカフスを外した。
尖った耳と爪先に、身体中、顔まで刻まれたツタの紋様。
初めて見る、八戒の妖怪姿。
「今度は止めますよ、悟空!」
繰り広げられる激しい戦闘。
傷を負っても大地により回復する悟空は、まさに不死身。
ふっと、月明かりが消える。
地面が揺れて、嵐が巻き起こり始めた。
「空が……大地が、騒いでいる」
「自然界の力が育んだ生命体、斉天大聖。妖怪どころやない、そんなもんはもう……神や」
「悪ふざけが過ぎますよ!」
悟空が八戒の足をつかみ上げ、地面へ強く叩きつける。
しかし、形勢逆転。
今度は八戒が馬乗りになり、何度も何度も悟空を殴り始めた。
八戒、笑っている。
「悟浄!」
「おう!」
八戒の振り上げた腕を私がつかみ、その隙に悟浄が羽交締めする。
うなり声とともに悟空の鋭い爪が襲いかかってきて、私はそれを何とか避けた。
軽く引き裂かれた腕から血が滲む。
「名前!平気か!?」
「かすり傷です!それよりも」
茫然とする八戒の目の前に行き、その手をつかむ。
自我を失ったと思っていたが、振り払われる事はなかった。
「八戒!しっかりして、八戒!」
「……名前?あぁ、すみません」
「大丈夫か?」
私たちの元へ、ガトたちも寄ってきた。
このままでは埒が明かないと、八戒は何か策があるようでヘイゼルにガトを借りるよう頼む。
八戒はすでに満身創痍だ。
本当はもうこれ以上、傷ついてほしくないけど。
「八戒。死んだら私、怒りますからね」
「えぇ、わかってます名前。貴方を置いて死んだりなんか出来ませんよ」
咆哮とともに、轟く落雷。
腕を伸ばしたガトから八戒へ、そして地面を這う八戒のツタから悟空へと、導線にして感電させる。
悟浄が悟空へ、金鈷をはめ直した。
これでもう悟空は大丈夫だ。
「八戒!目を覚まして、八戒!」
私は無我夢中で、必死に叫ぶ。
倒れて息のない八戒の胸に両手を当てて、心臓の上を何度も押し続ける。
まだだ、まだ八戒は死んでいない。
私を置いて死ねないと、そう言ったじゃないか。
先ほど傷を負った腕から、血が滴り落ちる。
「名前、つれぇだろ。俺が変わる」
「お願いです。悟浄、私に任せてください」
「……あぁ、わかった」
頭を軽く持ち上げて、八戒へ顔を近づけて唇を重ねる。
あの時の、朱泱様の時のような。
三蔵が倒れた後、観世音菩薩様が現れた時のような血気を送り込めるような力が、今の私にあるかはわからない。
それでも、再び目を開ける事を祈りながら息を吹き込み続けた。
私たちのそばへ、誰かが近づく気配を感じる。
「おいヘイゼル!余計な事したらブッ殺すぞ!」
悟浄が声を荒げる耳に、私はそっと八戒から唇を離す。
ピクリと身体が動いて大きく咳き込み、ようやく八戒は息を取り戻した。
その姿に安堵して、全身の力が抜けた。
「……悟空、は?」
「あぁ、元に戻したぜ」
「なんて顔してるんですか、二人共」
「うるせぇ、バカ。もうしゃべんな」
「八戒……本当に、本当によかった」
「名前、また泣かせちゃいましたね」
眉尻を下げて、いまだ妖怪の姿の八戒が力なく笑う。
八戒の胸に顔をうずめると、やさしく頭をなでられた。
雨が上がり、青い空が晴れる。
足音がして振り返ると、待ち望んでいた人がそこにいた。
「名前、行くぞ」
八戒と悟空を抱えた悟浄に呼ばれて、私は八戒を支えつつその場に立ち尽くす三蔵を見つめる。
「悪ィな、両手がふさがっちまってよ。てめぇをブン殴れねえわ」
「三蔵……」
すれ違い際に名前を呼ぶ。
しかし、三蔵がこちらへ振り向く事はなかった。