埋葬編
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太陽が沈み、虫も静まり返る夜更け。
寝床に入ろうとしたところ、部屋の外から名前を呼ばれる。
うっすらと、人影の見える障子を開けた。
「ダメだなぁ、名前さん。そんな風に簡単に開けたら」
「な、何ですか。健邑くん」
「ナニって、前話したように楽しい事をしようと思ってね」
「え、」
「まあ、ようは夜這いだよ」
一瞬だけ見えた月を背に、健邑くんはスッと障子を閉める。
呆然としてたところ、肩に両手をかけられる。
力任せに押され、勢いよく背中から布団に倒れ込んだ。
覆いかぶさる健邑くんの、闇のような瞳に見下ろされて背筋が凍る。
「ちょ、ちょっと、」
「待てない。見つかるって言ったのは、名前さんの方でしょ?ねぇ、見つけさせてよ」
突然の事に困惑して、頭がうまく回らない。
たしかに初対面の健邑くんにも同じような事をされたが、あの時は日中で、空の下で、光明様がいて。
健邑くんの手が着物の襟を分けて、胸の形をなぞるようにうごめく。
反対の手は太ももをなでながら、上へ上へと這い上がってくる。
「っ!健邑くん……こういう事は、恋人同士と、」
「あのね、名前さん。男は好きでもない女を抱けるの」
唇を耳元に近づけて、吐息とともにささやく。
耳を喰む感触とぬめりとした熱に、身体が震える。
「安心してよ。名前さんは特別に優しくしてあげるからさ」
「健邑くん……私、」
何とかしなければ。
こうなったら、頭がおかしいと思われても構わない。
危機とした状態の中、思いついたのはひとつの真実だった。
「私、別世界から来たの」
「……は?」
「桃源郷じゃない、妖怪のいない世界。妖術はなくても、化学はありました。世界にはいろんな国があって、私が住んでた国は日本という島国で、桃源郷とそう違わない文化があって、それから、」
「名前さん」
「はい」
「もういいよ、はあ……萎えた萎えた」
額に手を当てた健邑くんが、ため息とともにのろのろと退く。
起き上がって布団の上に座り、乱れた着物を整える。
若気の至り、というやつだろうか。
本気で襲いにきたのでれば、私の話など聞く耳も持たなかったであろう。
「どうやったらそういう発想になるの」
「今言ったのは、本当の事でして」
「はいはい、わかったから」
完全に妄言だと思っている。
健邑くんは布団の上であぐらをかき、ククッと肩を震わせる。
それを見て、私も頬をゆるめて笑った。
「……なんでアンタも笑ってんの」
「健邑くんが笑うと、うれしいから」
「何ソレ」
あ、また笑った。
先ほどまでの、熱をもたない冷酷な健邑くんはもういない。
ああ、そうか。
「健邑くんも、私にとって大切な人なんですよ」
「今、犯されそうになったのに?」
「なったのに、です。もちろんダメな事ですけれど。そういえば、健邑くん。本当に剛内様からお叱り受けました?」
「えぇ、毎日のように受けてますよ?」
頬杖をついて笑う姿に、がっくりと肩を落とす。
こうなったら光明様からもお叱りを受ければいいのに。
いや、人頼りにしてはダメだ。
「まあ今夜は名前さんの機転に免じて、退散しますか。よかったですね、他の男だったらどうなってたか知りませんよ?」
「そもそも他の人はここに来ません。今後、こういう事は合意の上で行ってくださいね」
「じゃあ次は嫌でも合意が取れるよう、がんばりますよ」
嫌だったら、それは合意とは言わないのでは。
部屋を出て行く前に、障子の隙間から健邑くんがニヤリと顔を出す。
「あぁ、そうだ。今後、夜に男を招き入れるのはやめてくださいね。俺以外」
「わかりました。光明様以外はしません」
「光明三蔵法師ならいいんだ。名前さんのえっち」
「そういう意味じゃありません!」
寝床に入ろうとしたところ、部屋の外から名前を呼ばれる。
うっすらと、人影の見える障子を開けた。
「ダメだなぁ、名前さん。そんな風に簡単に開けたら」
「な、何ですか。健邑くん」
「ナニって、前話したように楽しい事をしようと思ってね」
「え、」
「まあ、ようは夜這いだよ」
一瞬だけ見えた月を背に、健邑くんはスッと障子を閉める。
呆然としてたところ、肩に両手をかけられる。
力任せに押され、勢いよく背中から布団に倒れ込んだ。
覆いかぶさる健邑くんの、闇のような瞳に見下ろされて背筋が凍る。
「ちょ、ちょっと、」
「待てない。見つかるって言ったのは、名前さんの方でしょ?ねぇ、見つけさせてよ」
突然の事に困惑して、頭がうまく回らない。
たしかに初対面の健邑くんにも同じような事をされたが、あの時は日中で、空の下で、光明様がいて。
健邑くんの手が着物の襟を分けて、胸の形をなぞるようにうごめく。
反対の手は太ももをなでながら、上へ上へと這い上がってくる。
「っ!健邑くん……こういう事は、恋人同士と、」
「あのね、名前さん。男は好きでもない女を抱けるの」
唇を耳元に近づけて、吐息とともにささやく。
耳を喰む感触とぬめりとした熱に、身体が震える。
「安心してよ。名前さんは特別に優しくしてあげるからさ」
「健邑くん……私、」
何とかしなければ。
こうなったら、頭がおかしいと思われても構わない。
危機とした状態の中、思いついたのはひとつの真実だった。
「私、別世界から来たの」
「……は?」
「桃源郷じゃない、妖怪のいない世界。妖術はなくても、化学はありました。世界にはいろんな国があって、私が住んでた国は日本という島国で、桃源郷とそう違わない文化があって、それから、」
「名前さん」
「はい」
「もういいよ、はあ……萎えた萎えた」
額に手を当てた健邑くんが、ため息とともにのろのろと退く。
起き上がって布団の上に座り、乱れた着物を整える。
若気の至り、というやつだろうか。
本気で襲いにきたのでれば、私の話など聞く耳も持たなかったであろう。
「どうやったらそういう発想になるの」
「今言ったのは、本当の事でして」
「はいはい、わかったから」
完全に妄言だと思っている。
健邑くんは布団の上であぐらをかき、ククッと肩を震わせる。
それを見て、私も頬をゆるめて笑った。
「……なんでアンタも笑ってんの」
「健邑くんが笑うと、うれしいから」
「何ソレ」
あ、また笑った。
先ほどまでの、熱をもたない冷酷な健邑くんはもういない。
ああ、そうか。
「健邑くんも、私にとって大切な人なんですよ」
「今、犯されそうになったのに?」
「なったのに、です。もちろんダメな事ですけれど。そういえば、健邑くん。本当に剛内様からお叱り受けました?」
「えぇ、毎日のように受けてますよ?」
頬杖をついて笑う姿に、がっくりと肩を落とす。
こうなったら光明様からもお叱りを受ければいいのに。
いや、人頼りにしてはダメだ。
「まあ今夜は名前さんの機転に免じて、退散しますか。よかったですね、他の男だったらどうなってたか知りませんよ?」
「そもそも他の人はここに来ません。今後、こういう事は合意の上で行ってくださいね」
「じゃあ次は嫌でも合意が取れるよう、がんばりますよ」
嫌だったら、それは合意とは言わないのでは。
部屋を出て行く前に、障子の隙間から健邑くんがニヤリと顔を出す。
「あぁ、そうだ。今後、夜に男を招き入れるのはやめてくださいね。俺以外」
「わかりました。光明様以外はしません」
「光明三蔵法師ならいいんだ。名前さんのえっち」
「そういう意味じゃありません!」