RELOAD編
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「名前、昨日はありがとうございました」
「いえ、また何かあったら言ってくださいね」
「何?八戒と名前ちゃん、なんかあったの?」
「えっと、まあ……」
特別、何かをしたわけではない。
悟浄の質問に言葉を濁していると、肩に八戒の手が置かれる。
人差し指を上げて、にっこりと微笑んでいた。
「秘密です」
「……だ、そうです」
「え、何よ。もしかしてお二人さん、一線越えちゃったカンジ?」
「また悟浄は、すぐそういう話に持ち込むんですから」
朝から、大きなハリセンの音が響き渡った。
「どこに逃げ込んだ?」
「わからん、こっちだと思ったが……」
それは皆で食事をしていた時の事。
何やら外が騒がしいと思えば、勢いよく扉が開く。
「あ、こりゃ失礼。おかしいなぁ。ここに子供が来なかったかい?」
「子供?いいえ、どうかなさったんですか?」
八戒が尋ねると、上の森からよく食べ物を盗みに来る妖怪の子供がいるらしい。
お兄さんたちも気をつけな、と男たちが立ち去り扉が閉まる。
「……行ったぜ」
「ほら、もう大丈夫だよ」
テーブルの下から出てきた妖怪の子供に、パンを手渡す。
その子はぺこりと頭を下げて、足早に部屋を出ていった。
今まで静観していたヘイゼルが立ち上がる。
「お前、まだこりてねぇのかよ!?」
妖怪の子供を追うつもりのようだ。
三蔵以外のみんなが、口々にヘイゼルを止める。
「まるで、うちが悪者みたいな物言いやねぇ」
「あんたがどうこうってんじゃねぇ、その力が危険だってんだ!」
「……あんさんらがどんな人生歩んできたかわからしまへんけど、一度は思ったことありまへんの?この人が生き返ったらどんなにか、て」
ヘイゼルの言葉に息を呑む。
光明様。
きゅっと、痛んだ胸を抑えるように手を当てる。
私たちとヘイゼルとのにらみ合いは続き、一触即発。
八戒の提案により、私たちは町から山奥へと移動した。
◇
森の中、三蔵と私はヘイゼルたちとの戦いを見守っている。
止める事はしない。
お互い譲れないものの為に戦っているから。
それでも、他に道はないのだろうか。
月明かりの下、悟空とガトが楽しそうに手合わせしていた。
そんな、宿でのひと時を思い出す。
「お前、なんであいつの言いなりなんだよ!お前のやりたい事ってなんだよ!」
「……償いだ。自分などない。俺の全ては、ヘイゼルとともにある」
ガトの銃口が悟空に向かった瞬間、一発の銃声が轟く。
撃ったのは、三蔵だった。
「誰の肩も持たん、て言わはりませんでした?」
「状況が変わったんでな。おいチビ、隠れてねぇで出て来い」
「……なんで?なんでケンカしてるの?オレを、助けてくれた人達なのに」
木陰から出てきた子供。
この戦闘の火種となった、妖怪の子供だった。
「どうした?説明してやれ」
「……お兄ちゃんなぁ、君の命が欲しいんや」
ヘイゼルが子供の前に片膝をついて微笑む。
とてもやさしい声色で、残酷な事を口にする。
君の命があれば、病気で死んだ赤ん坊が助かる。
お腹を空かせて、人間に追いかけられて、しんどい思いして。
楽になりたいのだろうと。
「……うん、いいよ」
「待って!」
駆け出そうとした瞬間、腕をつかまれて止められる。
任せろ、と言う三蔵に頷いて、その場で行く末を見守る。
「なぜ震える?」
「っ、だって……」
「怖いのか?なぜ恐れる」
「……に、たくない……から……」
三蔵がかけた言葉により、弱々しくも聞こえた本音。
聞こえねぇぞ、もう一度だと、繰り返し聞き出す。
「もっとでけぇ声で言え!」
「ヤダッ……やっぱり嫌だぁ!死にたくないよ!死にたくない!わあああああ!」
「聞こえたな?」
私は泣き喚く子供の元に歩み寄り、抱きしめる。
ヘイゼルが力のない笑みを浮かべて、その子へ向けて手を伸ばした。
「ヘイゼルさん」
「安心しい、名前はん。怖がらせてしもたな……堪忍な」
ヘイゼルが子供の頭をやさしくなでる。
子供の件は一段落したが、それでもヘイゼルの信念は変わらないと言う。
「じゃあさ、競争しよーぜ」
ヘイゼルたちが妖怪を全滅させるのが先か、私たちが異変を止めるのが先か。
「名前はん。少しはわかりましたわ、悟空はんたちの事」
「認めて、くれたんですね」
出会ってから初めて、ヘイゼルが悟空の名前を口にした。
彼の青い目が、きれいに微笑む。
「その勝負、のらしてもらいまひょ。ま、今日の所は勘弁しといたるわ」
「おおきに、でよろしいですか?」
「覚悟した方がいいですよ、ヘイゼルさん。私たちみんな負けず嫌いですから」
「せやなぁ。あぁ、名前はん。三蔵はんらに愛想が尽きたらいつでもうちにおいでや?歓迎やで」
ぱちぱちと瞬きをした後、ふふっと笑みをこぼす。
「ありがたい話ですけど、天地がひっくり返ってもありませんので」
「つーわけで、残念だったな司教サマ」
「名前も相当頑固ですからね」
「だよなッ!」
「……フッ」
「笑わんとってや、三蔵はん。なんや盛大にフラれてしもうたわ」
「じゃあヘイゼルさん、ガトさん。お元気で」
西から来た男と、西を目指す私たち。
それぞれの道へと進んだ。
「いえ、また何かあったら言ってくださいね」
「何?八戒と名前ちゃん、なんかあったの?」
「えっと、まあ……」
特別、何かをしたわけではない。
悟浄の質問に言葉を濁していると、肩に八戒の手が置かれる。
人差し指を上げて、にっこりと微笑んでいた。
「秘密です」
「……だ、そうです」
「え、何よ。もしかしてお二人さん、一線越えちゃったカンジ?」
「また悟浄は、すぐそういう話に持ち込むんですから」
朝から、大きなハリセンの音が響き渡った。
「どこに逃げ込んだ?」
「わからん、こっちだと思ったが……」
それは皆で食事をしていた時の事。
何やら外が騒がしいと思えば、勢いよく扉が開く。
「あ、こりゃ失礼。おかしいなぁ。ここに子供が来なかったかい?」
「子供?いいえ、どうかなさったんですか?」
八戒が尋ねると、上の森からよく食べ物を盗みに来る妖怪の子供がいるらしい。
お兄さんたちも気をつけな、と男たちが立ち去り扉が閉まる。
「……行ったぜ」
「ほら、もう大丈夫だよ」
テーブルの下から出てきた妖怪の子供に、パンを手渡す。
その子はぺこりと頭を下げて、足早に部屋を出ていった。
今まで静観していたヘイゼルが立ち上がる。
「お前、まだこりてねぇのかよ!?」
妖怪の子供を追うつもりのようだ。
三蔵以外のみんなが、口々にヘイゼルを止める。
「まるで、うちが悪者みたいな物言いやねぇ」
「あんたがどうこうってんじゃねぇ、その力が危険だってんだ!」
「……あんさんらがどんな人生歩んできたかわからしまへんけど、一度は思ったことありまへんの?この人が生き返ったらどんなにか、て」
ヘイゼルの言葉に息を呑む。
光明様。
きゅっと、痛んだ胸を抑えるように手を当てる。
私たちとヘイゼルとのにらみ合いは続き、一触即発。
八戒の提案により、私たちは町から山奥へと移動した。
◇
森の中、三蔵と私はヘイゼルたちとの戦いを見守っている。
止める事はしない。
お互い譲れないものの為に戦っているから。
それでも、他に道はないのだろうか。
月明かりの下、悟空とガトが楽しそうに手合わせしていた。
そんな、宿でのひと時を思い出す。
「お前、なんであいつの言いなりなんだよ!お前のやりたい事ってなんだよ!」
「……償いだ。自分などない。俺の全ては、ヘイゼルとともにある」
ガトの銃口が悟空に向かった瞬間、一発の銃声が轟く。
撃ったのは、三蔵だった。
「誰の肩も持たん、て言わはりませんでした?」
「状況が変わったんでな。おいチビ、隠れてねぇで出て来い」
「……なんで?なんでケンカしてるの?オレを、助けてくれた人達なのに」
木陰から出てきた子供。
この戦闘の火種となった、妖怪の子供だった。
「どうした?説明してやれ」
「……お兄ちゃんなぁ、君の命が欲しいんや」
ヘイゼルが子供の前に片膝をついて微笑む。
とてもやさしい声色で、残酷な事を口にする。
君の命があれば、病気で死んだ赤ん坊が助かる。
お腹を空かせて、人間に追いかけられて、しんどい思いして。
楽になりたいのだろうと。
「……うん、いいよ」
「待って!」
駆け出そうとした瞬間、腕をつかまれて止められる。
任せろ、と言う三蔵に頷いて、その場で行く末を見守る。
「なぜ震える?」
「っ、だって……」
「怖いのか?なぜ恐れる」
「……に、たくない……から……」
三蔵がかけた言葉により、弱々しくも聞こえた本音。
聞こえねぇぞ、もう一度だと、繰り返し聞き出す。
「もっとでけぇ声で言え!」
「ヤダッ……やっぱり嫌だぁ!死にたくないよ!死にたくない!わあああああ!」
「聞こえたな?」
私は泣き喚く子供の元に歩み寄り、抱きしめる。
ヘイゼルが力のない笑みを浮かべて、その子へ向けて手を伸ばした。
「ヘイゼルさん」
「安心しい、名前はん。怖がらせてしもたな……堪忍な」
ヘイゼルが子供の頭をやさしくなでる。
子供の件は一段落したが、それでもヘイゼルの信念は変わらないと言う。
「じゃあさ、競争しよーぜ」
ヘイゼルたちが妖怪を全滅させるのが先か、私たちが異変を止めるのが先か。
「名前はん。少しはわかりましたわ、悟空はんたちの事」
「認めて、くれたんですね」
出会ってから初めて、ヘイゼルが悟空の名前を口にした。
彼の青い目が、きれいに微笑む。
「その勝負、のらしてもらいまひょ。ま、今日の所は勘弁しといたるわ」
「おおきに、でよろしいですか?」
「覚悟した方がいいですよ、ヘイゼルさん。私たちみんな負けず嫌いですから」
「せやなぁ。あぁ、名前はん。三蔵はんらに愛想が尽きたらいつでもうちにおいでや?歓迎やで」
ぱちぱちと瞬きをした後、ふふっと笑みをこぼす。
「ありがたい話ですけど、天地がひっくり返ってもありませんので」
「つーわけで、残念だったな司教サマ」
「名前も相当頑固ですからね」
「だよなッ!」
「……フッ」
「笑わんとってや、三蔵はん。なんや盛大にフラれてしもうたわ」
「じゃあヘイゼルさん、ガトさん。お元気で」
西から来た男と、西を目指す私たち。
それぞれの道へと進んだ。