無印編
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燦々と、容赦なく照りつける太陽。
見渡す限りの砂海原。
「……あッちィ〜、ただでさえクソ暑いのに何でこんなカッコしなきゃなんねぇんだよ」
「砂まみれになりたきゃ外せばいいだろ猿。喋らせんなよ、焼き猿。口ン中に砂入る」
「誰が焼き猿だ、ひからび河童ッ!」
「怒ると体温上がりますよ、二人共」
「……冷たくしてやろうか?」
「あはは、駄目ですよ三蔵。冷たくなる前に、名前の横で腐っちゃいますから」
この暑さのせいで、みんな相当参ってる。
砂漠を越えるには、あとどれくれいかかるだろう。
頭からマントを被りジープの後部座席でそう考えていたところ、近くの村に住むという子供に出会った。
「いやー、助かりました」
「ああ、よく旅の人がここの砂漠に迷い込むんだ。あんたら、この子に見つかってラッキーだったね」
「ホントですね」
ありがたい事に一晩泊めてもらう事となり、皆それぞれマントを脱ぐ。
「その服……まさか、まさかあんた三蔵法師か!?」
おじさんが三蔵を見るや否や、声を上げて血相を変える。
突然、五人共外へと追い出されてしまった。
私はしゃがみ込んで、分が悪そうな少年にわけを聞く。
一年前にも、この町に三蔵法師が訪れた。
その際、町を上げて歓迎したが、砂漠の妖怪たちが襲いかかって攻めてきた。
目的は、三蔵法師をさらって喰らうため。
「前に蜘蛛女も言ってたな。徳の高い坊主を食べると寿命が伸びると」
それが、妖怪たちの間での言い伝えだと言う。
ここにやって来た三蔵法師って、まさか。
私の頭によぎったのは漆黒の人、烏哭。
しかし彼は、あっさり妖怪にさらわれるような人ではない。
そう頭ではわかっているものの、何かあったのではないかと危惧してしまう。
三蔵はふと黙り、何かを考えている様子だった。
「おい子供。その砂漠の妖怪、どこにいるかわかるか」
「えーと、だいたいはわかりますけど……」
教えてもらった場所へ到着したが、砂の中にあるという居城は見当たらない。
三蔵の目的は、天地開元経文。
話に聞いた三蔵法師が本当に殺されたのだとしたら、まだここにあるかもしれないとの事だが。
「うわぁ!?なんだよ、これ!」
「悟空!」
「嘘だろ、オイ!」
「チッ……罠か!名前!」
「三蔵……!」
「ジープ駄目です!お前まで引きずり込まれて……!」
五人とも足が砂に埋もれていき、下へと引きずり込まれる。
私たちはなす術もなく、砂の中へと飲み込まれた。
◇
目を覚ますと、眩しい空ではなく天井が見える。
ベッドの上にいるようだが、身体が、全身がしびれて動けない。
みんなは、どこに。
「あら、もうお目覚め?ゆっくり寝てらしてね。って言っても、起き上がれないでしょうけど」
目を向けると、そこには妖怪が立っていた。
この人、男?
いや、今はそんな事を考えている場合ではない。
そうか、ここが砂の中にある妖怪の根城。
「三蔵は、」
「そうね、のこのことやってきたご馳走様を先に頂いて来なくちゃ。貴方はただのデザートなんですもの」
「……前に、三蔵法師を食べた事があるというのは、本当?」
妖怪はにやりと笑い、ベッドに座り手をつく。
「ええ、本当よ。最期まで震えながらお経を唱える堅物のじじいだったけど、美味しく頂いたわ。そのおかけで、不老不死の身体を手に入れたの」
違う。
烏哭じゃ、ない。
「二人目の三蔵は若くて美人ね。楽しみだわ」
「!」
扉が閉まる音だけが、虚しく耳に響く。
三蔵、三蔵の元へ向かわないと。
必死に身体を動かすと、ベッドの上から転がり落ちて、打ち付ける痛みに顔を歪める。
でも痛みのおかげで、手足が動くようになってきた。
「名前!大丈夫ですか!?」
「八戒、みんな……!」
牢屋から抜け出してきたという三人と合流して、三蔵がいる部屋を探す。
銃声のする扉を開ける。
そこには銃を手に妖怪をいたぶる、三蔵の姿が目に入った。
「三蔵、何やってんだ!こんな、お前らしくねぇ!」
「俺らしくない……?俺らしいってのは、どんなだ?」
そう言って顔を歪ませる三蔵。
私は三蔵の元まで歩いて、銃を持つ手を握ってそっと降ろす。
悟空も近づき、三蔵の脚を軽く蹴った。
文句を言う三蔵を、悟空はまっすぐ見つめる。
「殴れよ……このバカ猿って言って、ハリセンで殴れば?それが、俺の知っている三蔵だ」
刺々しい雰囲気が、一気に消えた。
悟空のおかげだと、安堵して一息つく。
三蔵が再び、床に倒れている妖怪を見下ろした。
「経文はどこだ」
「うしろの、棚の中に……」
以前の三蔵法師が持っていた経文は、この城のどこかに捨てたとの事。
自身の魔天経文の在処を聞いた三蔵が、妖怪に背を向ける。
その時。
「危ねぇ、三蔵!」
異変に気がついた三蔵が、振り返るよりも前に。
私が貴方を守る。
その一心で、身体が動いていた。
「名前!」
焼けるような痛みと、熱さ。
背中から私の身体を貫いたのは、妖怪の長く鋭い爪。
もしかしたら、光明様もこんな気持ちだったのかな、なんて頭の隅で考えて。
見開かれた紫暗の双眸と目が合って微笑み、私の意識はそこで途絶えた。
見渡す限りの砂海原。
「……あッちィ〜、ただでさえクソ暑いのに何でこんなカッコしなきゃなんねぇんだよ」
「砂まみれになりたきゃ外せばいいだろ猿。喋らせんなよ、焼き猿。口ン中に砂入る」
「誰が焼き猿だ、ひからび河童ッ!」
「怒ると体温上がりますよ、二人共」
「……冷たくしてやろうか?」
「あはは、駄目ですよ三蔵。冷たくなる前に、名前の横で腐っちゃいますから」
この暑さのせいで、みんな相当参ってる。
砂漠を越えるには、あとどれくれいかかるだろう。
頭からマントを被りジープの後部座席でそう考えていたところ、近くの村に住むという子供に出会った。
「いやー、助かりました」
「ああ、よく旅の人がここの砂漠に迷い込むんだ。あんたら、この子に見つかってラッキーだったね」
「ホントですね」
ありがたい事に一晩泊めてもらう事となり、皆それぞれマントを脱ぐ。
「その服……まさか、まさかあんた三蔵法師か!?」
おじさんが三蔵を見るや否や、声を上げて血相を変える。
突然、五人共外へと追い出されてしまった。
私はしゃがみ込んで、分が悪そうな少年にわけを聞く。
一年前にも、この町に三蔵法師が訪れた。
その際、町を上げて歓迎したが、砂漠の妖怪たちが襲いかかって攻めてきた。
目的は、三蔵法師をさらって喰らうため。
「前に蜘蛛女も言ってたな。徳の高い坊主を食べると寿命が伸びると」
それが、妖怪たちの間での言い伝えだと言う。
ここにやって来た三蔵法師って、まさか。
私の頭によぎったのは漆黒の人、烏哭。
しかし彼は、あっさり妖怪にさらわれるような人ではない。
そう頭ではわかっているものの、何かあったのではないかと危惧してしまう。
三蔵はふと黙り、何かを考えている様子だった。
「おい子供。その砂漠の妖怪、どこにいるかわかるか」
「えーと、だいたいはわかりますけど……」
教えてもらった場所へ到着したが、砂の中にあるという居城は見当たらない。
三蔵の目的は、天地開元経文。
話に聞いた三蔵法師が本当に殺されたのだとしたら、まだここにあるかもしれないとの事だが。
「うわぁ!?なんだよ、これ!」
「悟空!」
「嘘だろ、オイ!」
「チッ……罠か!名前!」
「三蔵……!」
「ジープ駄目です!お前まで引きずり込まれて……!」
五人とも足が砂に埋もれていき、下へと引きずり込まれる。
私たちはなす術もなく、砂の中へと飲み込まれた。
◇
目を覚ますと、眩しい空ではなく天井が見える。
ベッドの上にいるようだが、身体が、全身がしびれて動けない。
みんなは、どこに。
「あら、もうお目覚め?ゆっくり寝てらしてね。って言っても、起き上がれないでしょうけど」
目を向けると、そこには妖怪が立っていた。
この人、男?
いや、今はそんな事を考えている場合ではない。
そうか、ここが砂の中にある妖怪の根城。
「三蔵は、」
「そうね、のこのことやってきたご馳走様を先に頂いて来なくちゃ。貴方はただのデザートなんですもの」
「……前に、三蔵法師を食べた事があるというのは、本当?」
妖怪はにやりと笑い、ベッドに座り手をつく。
「ええ、本当よ。最期まで震えながらお経を唱える堅物のじじいだったけど、美味しく頂いたわ。そのおかけで、不老不死の身体を手に入れたの」
違う。
烏哭じゃ、ない。
「二人目の三蔵は若くて美人ね。楽しみだわ」
「!」
扉が閉まる音だけが、虚しく耳に響く。
三蔵、三蔵の元へ向かわないと。
必死に身体を動かすと、ベッドの上から転がり落ちて、打ち付ける痛みに顔を歪める。
でも痛みのおかげで、手足が動くようになってきた。
「名前!大丈夫ですか!?」
「八戒、みんな……!」
牢屋から抜け出してきたという三人と合流して、三蔵がいる部屋を探す。
銃声のする扉を開ける。
そこには銃を手に妖怪をいたぶる、三蔵の姿が目に入った。
「三蔵、何やってんだ!こんな、お前らしくねぇ!」
「俺らしくない……?俺らしいってのは、どんなだ?」
そう言って顔を歪ませる三蔵。
私は三蔵の元まで歩いて、銃を持つ手を握ってそっと降ろす。
悟空も近づき、三蔵の脚を軽く蹴った。
文句を言う三蔵を、悟空はまっすぐ見つめる。
「殴れよ……このバカ猿って言って、ハリセンで殴れば?それが、俺の知っている三蔵だ」
刺々しい雰囲気が、一気に消えた。
悟空のおかげだと、安堵して一息つく。
三蔵が再び、床に倒れている妖怪を見下ろした。
「経文はどこだ」
「うしろの、棚の中に……」
以前の三蔵法師が持っていた経文は、この城のどこかに捨てたとの事。
自身の魔天経文の在処を聞いた三蔵が、妖怪に背を向ける。
その時。
「危ねぇ、三蔵!」
異変に気がついた三蔵が、振り返るよりも前に。
私が貴方を守る。
その一心で、身体が動いていた。
「名前!」
焼けるような痛みと、熱さ。
背中から私の身体を貫いたのは、妖怪の長く鋭い爪。
もしかしたら、光明様もこんな気持ちだったのかな、なんて頭の隅で考えて。
見開かれた紫暗の双眸と目が合って微笑み、私の意識はそこで途絶えた。