無印編
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「……忘れてたフリしてたんですけどねぇ」
ジープの中で、野宿していたある夜。
うなされていた八戒が一人、車を降りて森の中へ足を進める。
ここ数日、ずっと眠れてないようだった。
「名前ちゃんにそんな顔させて、罪な男だな八戒も」
「悟浄、起きてたの?」
横を見ると、口角を上げる悟浄になぜかウインクされた。
「それそれ」
「?」
「チビ猿と話す時もそうだけど、たまに敬語なくなるよな。名前ちゃん。そっちの方がお似合いだぜ?」
「いや、えっと、私の敬語はクセのようなものでして……そんな事より」
「ああ、そうだな。あいつのシケた面拝んでやるか」
「すぐに戻れよ」
どうやら三蔵も起きていたようで、少し驚いたあと頷く。
しばらくして、佇む八戒の背中を見つけた。
声をかける前に肩を叩かれて振り返ると、人差し指を唇にあてた悟浄。
そっと私の背中を押して、八戒の真後ろまで移動させた。
少し身体を傾けて横から覗き込むと、八戒はじっと手のひらを見つめているようだった。
「お前、生命線短いな」
「……びっくりしたぁ。悟浄と、名前さんまでいつの間に」
「そりゃこっちのセリフだっつの。二人でこうも簡単にお前の背後取れるなんてな」
目を丸くした碧緑の瞳と、至近距離で視線が交わる。
八戒は数歩うしろへ下がり、悟浄は私の頭上から喉を鳴らす。
落ち着いた八戒と悟浄と、お互いの手のひらの生命線を見比べ合った。
「俺なんか手首まで伸びてやがんの。名前ちゃんは……八戒よりもちょっと長いカンジだな」
「あ、ホントですね」
「……もしかして、僕が起こしちゃいました?」
「というより、八戒が気になって勝手について来ちゃいました」
「来ちゃいました、つってな」
笑う悟浄に、八戒も眉尻を下げて困ったように微笑む。
夜風が吹いて、遠くを見つめる八戒の横に、悟浄がしゃがみ込んだ。
私は悟浄の反対側へ、八戒を真ん中にするように立つ。
神妙な面持ちになった悟浄が、おもむろにつぶやいた。
「奴の事だろ、あの易者」
「ええ、清一色」
聞き覚えのない名前。
それはつい先日、式神が現れた町で私と離れている間に出会った占い師の事だと、二人から教えてもらった。
カタカタと、草木の陰から物音がして振り向く。
「ニーハオ、ヒトゴロシノ猪悟能」
「!」
「な、こいつ何で八戒の昔の名前を……!?」
怨と書かれた麻雀牌を持つ、小さなカラクリ人形が現れた。
人形は八戒を猪悟能と呼び、気味悪く嘲笑う。
「忘レテルミタイダカラ、僕ガ思イダサセテアゲル。君ニハ、安ラゲル場所ナンテ何処ニモナインダヨ。ダッテ君ハ罪人ナンダカラ!」
「おっしゃりたい事はよく分かりました。でも僕にご用がおありなら、出てきて喋ったらどうですか」
八戒の、初めて見る険しい顔。
内から湧き上がる、静かな怒りで満ちあふれていた。
「ソウ、ソノ顔ダヨ……猪悟能!ソレガ君ノ本当ノ顔ダヨ!」
「てめっ!」
「悟浄!」
悟浄が人形を蹴り上げるも、その口から放たれた閃光を食らう。
倒れた悟浄へ駆け寄ると、胸元が赤く染まり、痛々しいほど血管が浮き上がっていた。
「八戒!何があった!?」
「何だよコレ!」
「三蔵!悟空!悟浄が……!」
人形は笑う。
悟浄に、血管の血を吸って根をはる生きた種を植え付けたと。
人形は八戒が苦しんでる様子を笑い、残酷な事に楽しみよろこんでいるようだっだ。
三蔵が銃で、人形を破壊する。
「八戒、俺が撃ったら即、傷を塞げ。悟空!悟浄の腕を押さえとけ!名前は脚だ!」
「マジかよ……」
「すみません、悟浄。重いだろうけど、今は我慢してください」
「……ハハッ、名前ちゃんには、ベッドの上で乗ってほしかったぜ」
なりふり構わず私は馬乗りになり、悟浄の脚を押さえつける。
緊張の一瞬。
三蔵の銃により種は撃ち抜かれて、悟浄は意識を失うも何とか一命を取り戻した。
「よかった……」
「……僕のせいなんですね」
「違う、八戒」
「清一色の狙いは明らかに僕個人だ」
八戒のせいじゃないと皆が口にするも、取り乱した八戒はくらりと倒れる。
ここ数日の寝不足と、心労だ。
「私、水を汲んできます」
「俺も!」
「キュウ」
悟空とジープとともに、川辺へ向かって走る。
水筒に水を汲んで戻ろうと、うしろを振り返ったところ。
「悟空……?」
つい先ほどまでそこにいた悟空とジープの姿が、どこにもない。
濃い霧が立ち込める中、薄笑いが聞こえてぼんやりと人影が現れた。
「初めまして、お嬢さん」
「貴方が、清一色……」
「はい。名前さん」
不気味な笑みを浮かべる男。
眉を寄せる私を見て、その口元をさらに歪めてつり上げた。
「貴方は、猪悟能の血塗られた過去について知りたくありませんか?」
「知りたくありません」
「……即答とは。ククッ、貴方、猪悟能と一緒にいるくせに何も知らないんですねぇ。さすが、代わりの女とでも言いましょうか」
「何を、」
「教えて差し上げますよ。罪深き罪人について」
とっさに耳をふさごうとするも、術か何かで身体が硬直する。
そして、清一色は語る。
八戒には、血の繋がった双子の姉である恋人がいた。
彼女は百眼魔王という妖怪に生贄として、町の住人により差し出された。
八戒は町の人間と百眼魔王の城の妖怪を皆殺しにしたが、恋人はすでに妖怪の子供を身籠っており、八戒の目の前で自害した。
そう、笑顔で語られた。
「どうです、気持ち悪いと思いませんか?狂ってると思いませんか?」
「……ひどい」
「ええ。そうでしょう、そうでしょう。ひどい男なんです、猪悟能は」
「違う。そんな人の過去を楽しそうに他人に話す、貴方が……!」
「……猪悟能が貴方をそばに置いておく理由が、よくわかりますよ」
目の前にいた清一色の姿が、音もなく消える。
温かさも冷たさも感じない手が、私の腕を強くつかんだ。
◇
気がつくと、僕は薄暗い洞窟にいた。
三蔵によるとここはまだ森の中で、霧が濃くて今は進めないという。
清一色。
覚えはないが、向こうとは僕の過去を知っていて、そして僕を憎んでいる。
おそらく百眼魔王一族の生き残りだろう。
「……一人残らず殺したと、思ってました」
「ツメが甘いんだよ」
「坊主の台詞かぁ?それ」
洞窟の中に入ってきた悟浄が三蔵に、捜したけどダメだったと手を振る。
捜したって、何を。
「悟空と名前は……!二人が、どうかしたんですか!?」
「お前が倒れた後、二人で水を取りに行って消えた。ジープごとな」
息を呑んで立ち上がろうとしたところ、悟浄に頭を押さえつけられる。
「ここにいろって!奴の狙いはお前なんだからよ」
「これ以上僕のせいで、誰かが傷付くのを見てろっていうんですか!」
「無一物、という言葉がある」
突然、三蔵が語り出す。
仏に逢えば仏を殺せ、祖に逢えば祖を殺せ、何物にも捕らわれず、ただあるがままに己を生きる。
それが、先代の三蔵により説き継がれた事。
頭を冷やして体調を整えろと言われて、おとなしく頷く。
二人が洞窟の外に出たかと思えば、心配していた人の声が聞こえる。
顔を出すと、そこには。
「あ、みんな!」
「名前!無事だったんですね!」
「八戒も!」
「よかった……何かされませんでしたか?どこか怪我は」
「……それが、」
無事な姿に安堵するも、うつむき言葉を濁す名前の様子に嫌な予感が走る。
目には、涙を浮かべていた。
「私、抵抗したのに何も出来なくて……男の人に無理やり……」
「そんな……」
頭が、真っ白になる。
「おい、悟空とジープはどうした」
「わかりません。途中で妖怪に襲われて、置いていかれて……」
僕のせいだ。
冷や汗と、悪寒が止まらない。
「そんな事より私、あんなひどい事されて……耐えられません。もう、生きていけません。だから」
名前は懐から小刀を取り出すと、自身の身体へ切っ先を向ける。
涙を流すその姿が、彼女と重なる。
─さよなら、悟能。
「さようなら、八戒」
「見るな八戒!そいつは偽物だ!」
ゆるゆると、力を失くした青い顔を上げる。
偽物……?
彼女の死体は砂となり消えて、そこには麻雀牌だけが残っていた。
「チッ、死ぬほど胸くそ悪いもん見せやがって。この借りは高くつくぞ」
「出てこいよ、清一色。三蔵サマ、いや俺たちはかなりご立腹だぜ」
霧の中、清一色が笑い声を上げながら姿を見せた。
三蔵の銃声が轟く。
「クククッ、短気なお人ですねぇ。よく出来た人形だったんですけど、どこでバレました?」
「勉強不足なんだよ」
「全部だ。発言、行動、表情、仕草。すべてがあの人とは違ぇんだよ」
「全部と、そこまで言い切りますか。いやぁ、難しいなぁ」
それならば、名前は、悟空は今どこに。
「さぁて、どうしたと思います?」
笑みを浮かべる清一色に眉間のシワを寄せて、血が出るほど拳を固く握りしめた。
ジープの中で、野宿していたある夜。
うなされていた八戒が一人、車を降りて森の中へ足を進める。
ここ数日、ずっと眠れてないようだった。
「名前ちゃんにそんな顔させて、罪な男だな八戒も」
「悟浄、起きてたの?」
横を見ると、口角を上げる悟浄になぜかウインクされた。
「それそれ」
「?」
「チビ猿と話す時もそうだけど、たまに敬語なくなるよな。名前ちゃん。そっちの方がお似合いだぜ?」
「いや、えっと、私の敬語はクセのようなものでして……そんな事より」
「ああ、そうだな。あいつのシケた面拝んでやるか」
「すぐに戻れよ」
どうやら三蔵も起きていたようで、少し驚いたあと頷く。
しばらくして、佇む八戒の背中を見つけた。
声をかける前に肩を叩かれて振り返ると、人差し指を唇にあてた悟浄。
そっと私の背中を押して、八戒の真後ろまで移動させた。
少し身体を傾けて横から覗き込むと、八戒はじっと手のひらを見つめているようだった。
「お前、生命線短いな」
「……びっくりしたぁ。悟浄と、名前さんまでいつの間に」
「そりゃこっちのセリフだっつの。二人でこうも簡単にお前の背後取れるなんてな」
目を丸くした碧緑の瞳と、至近距離で視線が交わる。
八戒は数歩うしろへ下がり、悟浄は私の頭上から喉を鳴らす。
落ち着いた八戒と悟浄と、お互いの手のひらの生命線を見比べ合った。
「俺なんか手首まで伸びてやがんの。名前ちゃんは……八戒よりもちょっと長いカンジだな」
「あ、ホントですね」
「……もしかして、僕が起こしちゃいました?」
「というより、八戒が気になって勝手について来ちゃいました」
「来ちゃいました、つってな」
笑う悟浄に、八戒も眉尻を下げて困ったように微笑む。
夜風が吹いて、遠くを見つめる八戒の横に、悟浄がしゃがみ込んだ。
私は悟浄の反対側へ、八戒を真ん中にするように立つ。
神妙な面持ちになった悟浄が、おもむろにつぶやいた。
「奴の事だろ、あの易者」
「ええ、清一色」
聞き覚えのない名前。
それはつい先日、式神が現れた町で私と離れている間に出会った占い師の事だと、二人から教えてもらった。
カタカタと、草木の陰から物音がして振り向く。
「ニーハオ、ヒトゴロシノ猪悟能」
「!」
「な、こいつ何で八戒の昔の名前を……!?」
怨と書かれた麻雀牌を持つ、小さなカラクリ人形が現れた。
人形は八戒を猪悟能と呼び、気味悪く嘲笑う。
「忘レテルミタイダカラ、僕ガ思イダサセテアゲル。君ニハ、安ラゲル場所ナンテ何処ニモナインダヨ。ダッテ君ハ罪人ナンダカラ!」
「おっしゃりたい事はよく分かりました。でも僕にご用がおありなら、出てきて喋ったらどうですか」
八戒の、初めて見る険しい顔。
内から湧き上がる、静かな怒りで満ちあふれていた。
「ソウ、ソノ顔ダヨ……猪悟能!ソレガ君ノ本当ノ顔ダヨ!」
「てめっ!」
「悟浄!」
悟浄が人形を蹴り上げるも、その口から放たれた閃光を食らう。
倒れた悟浄へ駆け寄ると、胸元が赤く染まり、痛々しいほど血管が浮き上がっていた。
「八戒!何があった!?」
「何だよコレ!」
「三蔵!悟空!悟浄が……!」
人形は笑う。
悟浄に、血管の血を吸って根をはる生きた種を植え付けたと。
人形は八戒が苦しんでる様子を笑い、残酷な事に楽しみよろこんでいるようだっだ。
三蔵が銃で、人形を破壊する。
「八戒、俺が撃ったら即、傷を塞げ。悟空!悟浄の腕を押さえとけ!名前は脚だ!」
「マジかよ……」
「すみません、悟浄。重いだろうけど、今は我慢してください」
「……ハハッ、名前ちゃんには、ベッドの上で乗ってほしかったぜ」
なりふり構わず私は馬乗りになり、悟浄の脚を押さえつける。
緊張の一瞬。
三蔵の銃により種は撃ち抜かれて、悟浄は意識を失うも何とか一命を取り戻した。
「よかった……」
「……僕のせいなんですね」
「違う、八戒」
「清一色の狙いは明らかに僕個人だ」
八戒のせいじゃないと皆が口にするも、取り乱した八戒はくらりと倒れる。
ここ数日の寝不足と、心労だ。
「私、水を汲んできます」
「俺も!」
「キュウ」
悟空とジープとともに、川辺へ向かって走る。
水筒に水を汲んで戻ろうと、うしろを振り返ったところ。
「悟空……?」
つい先ほどまでそこにいた悟空とジープの姿が、どこにもない。
濃い霧が立ち込める中、薄笑いが聞こえてぼんやりと人影が現れた。
「初めまして、お嬢さん」
「貴方が、清一色……」
「はい。名前さん」
不気味な笑みを浮かべる男。
眉を寄せる私を見て、その口元をさらに歪めてつり上げた。
「貴方は、猪悟能の血塗られた過去について知りたくありませんか?」
「知りたくありません」
「……即答とは。ククッ、貴方、猪悟能と一緒にいるくせに何も知らないんですねぇ。さすが、代わりの女とでも言いましょうか」
「何を、」
「教えて差し上げますよ。罪深き罪人について」
とっさに耳をふさごうとするも、術か何かで身体が硬直する。
そして、清一色は語る。
八戒には、血の繋がった双子の姉である恋人がいた。
彼女は百眼魔王という妖怪に生贄として、町の住人により差し出された。
八戒は町の人間と百眼魔王の城の妖怪を皆殺しにしたが、恋人はすでに妖怪の子供を身籠っており、八戒の目の前で自害した。
そう、笑顔で語られた。
「どうです、気持ち悪いと思いませんか?狂ってると思いませんか?」
「……ひどい」
「ええ。そうでしょう、そうでしょう。ひどい男なんです、猪悟能は」
「違う。そんな人の過去を楽しそうに他人に話す、貴方が……!」
「……猪悟能が貴方をそばに置いておく理由が、よくわかりますよ」
目の前にいた清一色の姿が、音もなく消える。
温かさも冷たさも感じない手が、私の腕を強くつかんだ。
◇
気がつくと、僕は薄暗い洞窟にいた。
三蔵によるとここはまだ森の中で、霧が濃くて今は進めないという。
清一色。
覚えはないが、向こうとは僕の過去を知っていて、そして僕を憎んでいる。
おそらく百眼魔王一族の生き残りだろう。
「……一人残らず殺したと、思ってました」
「ツメが甘いんだよ」
「坊主の台詞かぁ?それ」
洞窟の中に入ってきた悟浄が三蔵に、捜したけどダメだったと手を振る。
捜したって、何を。
「悟空と名前は……!二人が、どうかしたんですか!?」
「お前が倒れた後、二人で水を取りに行って消えた。ジープごとな」
息を呑んで立ち上がろうとしたところ、悟浄に頭を押さえつけられる。
「ここにいろって!奴の狙いはお前なんだからよ」
「これ以上僕のせいで、誰かが傷付くのを見てろっていうんですか!」
「無一物、という言葉がある」
突然、三蔵が語り出す。
仏に逢えば仏を殺せ、祖に逢えば祖を殺せ、何物にも捕らわれず、ただあるがままに己を生きる。
それが、先代の三蔵により説き継がれた事。
頭を冷やして体調を整えろと言われて、おとなしく頷く。
二人が洞窟の外に出たかと思えば、心配していた人の声が聞こえる。
顔を出すと、そこには。
「あ、みんな!」
「名前!無事だったんですね!」
「八戒も!」
「よかった……何かされませんでしたか?どこか怪我は」
「……それが、」
無事な姿に安堵するも、うつむき言葉を濁す名前の様子に嫌な予感が走る。
目には、涙を浮かべていた。
「私、抵抗したのに何も出来なくて……男の人に無理やり……」
「そんな……」
頭が、真っ白になる。
「おい、悟空とジープはどうした」
「わかりません。途中で妖怪に襲われて、置いていかれて……」
僕のせいだ。
冷や汗と、悪寒が止まらない。
「そんな事より私、あんなひどい事されて……耐えられません。もう、生きていけません。だから」
名前は懐から小刀を取り出すと、自身の身体へ切っ先を向ける。
涙を流すその姿が、彼女と重なる。
─さよなら、悟能。
「さようなら、八戒」
「見るな八戒!そいつは偽物だ!」
ゆるゆると、力を失くした青い顔を上げる。
偽物……?
彼女の死体は砂となり消えて、そこには麻雀牌だけが残っていた。
「チッ、死ぬほど胸くそ悪いもん見せやがって。この借りは高くつくぞ」
「出てこいよ、清一色。三蔵サマ、いや俺たちはかなりご立腹だぜ」
霧の中、清一色が笑い声を上げながら姿を見せた。
三蔵の銃声が轟く。
「クククッ、短気なお人ですねぇ。よく出来た人形だったんですけど、どこでバレました?」
「勉強不足なんだよ」
「全部だ。発言、行動、表情、仕草。すべてがあの人とは違ぇんだよ」
「全部と、そこまで言い切りますか。いやぁ、難しいなぁ」
それならば、名前は、悟空は今どこに。
「さぁて、どうしたと思います?」
笑みを浮かべる清一色に眉間のシワを寄せて、血が出るほど拳を固く握りしめた。