無印編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どこを見渡しても、高くそびえ立つ岩石ばかり。
足場の悪い石林を、五人でひたすら歩き続ける。
車以外に変身できないのかと怒る悟空に対して、ジープが私の頭の上へと避難した。
「あ、逃げた!」
「先生ー、動物が動物虐待してまーす」
「悟空、あんまりジープをいじめちゃダメだよ」
「ピィー!」
「だってよ〜、名前〜」
「このままじゃ、山を越える前に日が暮れるな」
「では、あそこで一晩の宿を借りてみませんか?」
石林の間から見えたのは、荘厳な寺院。
これまでに数々の寺院を訪れて、わかった事がある。
私はカバンの中からマントを取り出し、頭からすっぽりと身体を隠すようにかぶった。
よし、これで完璧。
「何してんの?名前」
「秘技性別隠し、です。あ、三蔵!笑わないでくださいよ」
「てるてる坊主みたいで可愛いですね、名前さん」
「お、八戒に一足先に取られたな」
「八戒も悟浄も!まじめなんですよ!」
側から見ればただの不審者のよう。
でも、これで女人禁制の問題は何とかなるだろう。
寺院を見上げながら、すみませんと大きく声をかける。
最初こそ僧侶に門前払いを受けたが、三蔵法師が来たとわかるとあわてて迎え入れられる。
「玄奘三蔵法師様、この様な古寺にようこそお越しくださいました」
「歓迎いたみいる」
大きな仏像の前に座る僧正様、両脇に並ぶ僧侶たち、線香の香り。
懐かしい。
初めて訪れた寺院だが、今まで長い事お世話になってきた場所なのでそんな気持ちになる。
「実は光明三蔵法師も十数年ほど前、この寺にお立ち寄りくださったのですよ。光明様の端正で荘厳なお姿が、今も目に焼きついております」
光明様。
思いもしなかった言葉に目を見張り、じんわりと目が潤む。
「そんな事より」
凛とした三蔵の声に、顔を上げて唇を引きしめた。
「この石林を一日で越えるのは難儀ゆえ、一夜の宿を借りたいのだが」
「ええ!それはもちろん喜んで!ただ……」
「何か?」
「ここは神聖なる寺院内でして、本来ならば部外者をお通しする訳には……そちら方々は、仏道に帰依する方にはとても……」
難色を示す僧侶たちに、悟浄が噛みつく。
「この方々はお弟子さんですか?」
そう聞かれると、突然ぐっと腕を引っ張られる。
何事かと瞬きすると、三蔵はうしろの三人へ視線を向けた。
「そっちは下僕だ」
激しく抗議する悟浄と悟空をなだめる八戒の声に、苦笑いする。
べつに、私も下僕の内の一人でもいいのに。
「は~、やっと生き返ったぜ」
「いいお部屋じゃないですか」
三蔵のおかげで五人とも食事を頂き、案内された部屋でくつろぐ。
私はずっと被り続けていた布を脱ぎ、一息つく。
扉が開いてお茶を手に、少年のお坊さんが入ってきた。
名前を、葉という。
「チッ、配膳ぐらいキレーな姉ちゃんにやらせろっての」
「そんな、不浄な!この寺院内は女人禁制ですよ……って、え。ええ!?」
「隠しててごめんなさい、葉くん」
私を見た葉くんが、口をぱくぱくと動かす。
お世話係となればどの道すぐバレると思ったので、女だとあっさりと白状した。
「どういう事ですか!三蔵様っ!」
「なぜ俺にふる」
「三蔵様といえば御仏に選ばれし尊き御方、我々仏教徒にとって絶対的存在にございます!そんな三蔵様にわたくし、生きてお会いできるとは思ってもいませんでした。なのに、なのに……!不浄です!」
「……不浄なのは、てめぇらの方だろうが」
「え?」
「茶坊主くん、何か勘違いしてねぇか?名前ちゃんと俺らはそういう関係じゃねぇのよ。ま、将来どうなるかはわかんねーけどな?特に三蔵サマ」
「殺すぞ」
「悟浄、貴方フォローしているのかしていないのか、どっちなんですか」
悟浄の軽口に、八戒がため息を吐く。
ぐっと、眉をつり上げた悟空が葉くんに詰め寄った。
「お前、名前をここから追い出して一人で野宿しろって言うのか?」
「そ、それは……」
「葉くん、明け方になるまでの一晩だけでいいんです。嫌かもしれませんが私を女だとは思わず、ここに置いてくださいませんか?」
「う、うう……」
規律を守る葉くんが悪いなんて事、何一つないのだけど。
皆に圧倒されたようで、目を逸らしながらも渋々と頷いた。
「わかりました。でも、麻雀はダメです!お酒も煙草も!」
「チッ」
「何がチッ、ですか!ここは神聖なる寺院なんですよ!?」
日が暮れて私はお風呂をいただいたあと、葉くんとともに寺院内を案内してもらう。
「名前様は、仏道に興味をお持ちですか?」
葉くんの質問に、眉尻を下げて笑う。
「興味、というかお寺が好きで。初めは光明様に連れられてですけど、何年もずっと寺院でお世話になっていたので」
「あの光明三蔵法師様にですか!?すごい!名前様は生きて、お二方の三蔵法師様にお会いなさったのですね!」
両手を組み合わせて、目をきらきらと輝かせた葉くんに見上げられる。
正確には四人だったなと、大切な人たちを思い出して目を細める。
突然、近くで何か崩れたような轟音を耳にした。
「なんでしょうか?」
「葉くん、部屋に戻って三蔵たちを呼んできてください!」
「名前様!?」
もう何回、何十回と経験してきたからわかる。
刺客の妖怪たちだ。
音の方へ走って向かうと、すでに大勢の妖怪たちが大広間へと侵入していた。
「出てこい!三蔵一行!殺してやる!」
「皆さん逃げてください!早く!」
「お、そこにいるのは三蔵一行の女だな?紅孩児様への手土産を探す手間が省けたぜ!」
逃げ惑う人たちに、鳴り止まない悲鳴、血飛沫。
迫り来る妖怪たちは、武器も持たない僧侶たちを容赦なく次々と殺していく。
「これは、一体……」
「葉くん!逃げて!」
壁を背に座り込む葉くんの前に、立ちふさがる。
「ククッ……どうした、震えてるぞ?女一人に何が出来るっていうんだァ?」
舌なめずりしながら妖怪は、余裕たっぷりに見下ろす。
うしろでは葉くんが、声を上げる事も逃げる事も出来ずに震えている。
このままじゃ、葉くんが殺される。
「!……な、に」
胸と口から、血を流して妖怪が倒れる。
私は妖怪の心臓目がけて、小刀を突き刺していた。
あの日、再びこの世界に来て観世音菩薩様から授かった小刀を。
「う、……」
殺した。
初めて、人を、妖怪を。
込み上げてくるものを、吐き気を、必死で抑える。
「女ァ!よくも仲間を殺ってくれたな!ぶっ殺してやる!」
「名前!」
悟空たち三人がやってきて、その姿に安堵して膝から崩れ落ちる。
影が降ってきたかと思えば銃声が聞こえて、三蔵の後ろ姿がそこにあった。
減点だ、なんて言って余裕ある様子に力なく笑う。
「お前ごときの刺客をよこす様じゃ、俺達はよほど見くびられてるらしいな。貴様らの主君、紅孩児とやらに。牛魔王蘇生実験の目的はなんだ?その裏に何がある」
「……ヘッ、アンタ血生臭ェな。今まで何人の血を浴びてきた?三蔵の名が聞いてあきれるぜ」
三蔵が引き金を引こうとした、その時。
爆発音と衝撃波に、目をつぶる。
自爆した。
主君である紅孩児のために、自ら死を選んだ。
「あ、あなたたちは……」
「葉くん、もう大丈夫、」
うしろにいた葉くんが拳を握り、震えながらも立ち上がる。
「あなたたちは何者なんですか!?今までにも沢山の血を浴びた……って、こんな風に殺生を続けてきたのですか!?」
たとえ誰であろうと殺生は御仏への冒涜だと、必死で嘆く葉くんに眉を落とす。
もちろんここにいる誰一人、好き好んで殺しているわけではない。
「お前、それ本心で言ってるのか?これだけ身内が殺されても、命懸けで守ってくれたこの人の前で、そんな事言えるのかよ」
三蔵の鋭い視線が、葉くんに向かう。
周りには妖怪と、何の罪もないたくさんの僧侶たちの死体。
そして私の手には、いまだ血のついた小刀。
「ごめんね、葉くん。皆を守れなくて」
「そんな、わたくし……」
三蔵が私の手から小刀を取って血を拭い、鞘に納める。
そして、背中と膝の裏に腕をまわされたかと思えば、軽々と抱きかかえられた。
「三蔵……!」
「腰抜けて立てねぇだろ」
「……はい」
いつからか抜けた敬語。
横抱きにされて周りからの視線も気になったが、おとなしく三蔵の腕に収まる。
そんなに神に近づきたければ死んでしまえと、三蔵は容赦なく葉くんに告げた。
「でもまあ、残念な事に。俺たちは生きてるんだな、コレが」
悟浄の言葉に、崩れ落ちた壁からまぶしいほどの朝日が差し込んだ。
◇
私たちは、足早に寺院を立ち去る。
お礼を言われたが、元々自分たちがいなければ襲われなかった事態だ。
「三蔵様!」
葉くんが、私たちの元へ走って追いかけてくる。
「また寺院に立ち寄ってくださいますか?その時は……その時は、わたくしに麻雀を教えてください!」
葉くんの吹っ切れたような明るい表情に、私も頬をゆるめた。
「名前様も!」
「?」
「ぜひ、また会いに来てくださいね!」
「はい!」
合掌して見送る葉くんに別れを告げて、私たちは再び西へと歩みを進めた。
足場の悪い石林を、五人でひたすら歩き続ける。
車以外に変身できないのかと怒る悟空に対して、ジープが私の頭の上へと避難した。
「あ、逃げた!」
「先生ー、動物が動物虐待してまーす」
「悟空、あんまりジープをいじめちゃダメだよ」
「ピィー!」
「だってよ〜、名前〜」
「このままじゃ、山を越える前に日が暮れるな」
「では、あそこで一晩の宿を借りてみませんか?」
石林の間から見えたのは、荘厳な寺院。
これまでに数々の寺院を訪れて、わかった事がある。
私はカバンの中からマントを取り出し、頭からすっぽりと身体を隠すようにかぶった。
よし、これで完璧。
「何してんの?名前」
「秘技性別隠し、です。あ、三蔵!笑わないでくださいよ」
「てるてる坊主みたいで可愛いですね、名前さん」
「お、八戒に一足先に取られたな」
「八戒も悟浄も!まじめなんですよ!」
側から見ればただの不審者のよう。
でも、これで女人禁制の問題は何とかなるだろう。
寺院を見上げながら、すみませんと大きく声をかける。
最初こそ僧侶に門前払いを受けたが、三蔵法師が来たとわかるとあわてて迎え入れられる。
「玄奘三蔵法師様、この様な古寺にようこそお越しくださいました」
「歓迎いたみいる」
大きな仏像の前に座る僧正様、両脇に並ぶ僧侶たち、線香の香り。
懐かしい。
初めて訪れた寺院だが、今まで長い事お世話になってきた場所なのでそんな気持ちになる。
「実は光明三蔵法師も十数年ほど前、この寺にお立ち寄りくださったのですよ。光明様の端正で荘厳なお姿が、今も目に焼きついております」
光明様。
思いもしなかった言葉に目を見張り、じんわりと目が潤む。
「そんな事より」
凛とした三蔵の声に、顔を上げて唇を引きしめた。
「この石林を一日で越えるのは難儀ゆえ、一夜の宿を借りたいのだが」
「ええ!それはもちろん喜んで!ただ……」
「何か?」
「ここは神聖なる寺院内でして、本来ならば部外者をお通しする訳には……そちら方々は、仏道に帰依する方にはとても……」
難色を示す僧侶たちに、悟浄が噛みつく。
「この方々はお弟子さんですか?」
そう聞かれると、突然ぐっと腕を引っ張られる。
何事かと瞬きすると、三蔵はうしろの三人へ視線を向けた。
「そっちは下僕だ」
激しく抗議する悟浄と悟空をなだめる八戒の声に、苦笑いする。
べつに、私も下僕の内の一人でもいいのに。
「は~、やっと生き返ったぜ」
「いいお部屋じゃないですか」
三蔵のおかげで五人とも食事を頂き、案内された部屋でくつろぐ。
私はずっと被り続けていた布を脱ぎ、一息つく。
扉が開いてお茶を手に、少年のお坊さんが入ってきた。
名前を、葉という。
「チッ、配膳ぐらいキレーな姉ちゃんにやらせろっての」
「そんな、不浄な!この寺院内は女人禁制ですよ……って、え。ええ!?」
「隠しててごめんなさい、葉くん」
私を見た葉くんが、口をぱくぱくと動かす。
お世話係となればどの道すぐバレると思ったので、女だとあっさりと白状した。
「どういう事ですか!三蔵様っ!」
「なぜ俺にふる」
「三蔵様といえば御仏に選ばれし尊き御方、我々仏教徒にとって絶対的存在にございます!そんな三蔵様にわたくし、生きてお会いできるとは思ってもいませんでした。なのに、なのに……!不浄です!」
「……不浄なのは、てめぇらの方だろうが」
「え?」
「茶坊主くん、何か勘違いしてねぇか?名前ちゃんと俺らはそういう関係じゃねぇのよ。ま、将来どうなるかはわかんねーけどな?特に三蔵サマ」
「殺すぞ」
「悟浄、貴方フォローしているのかしていないのか、どっちなんですか」
悟浄の軽口に、八戒がため息を吐く。
ぐっと、眉をつり上げた悟空が葉くんに詰め寄った。
「お前、名前をここから追い出して一人で野宿しろって言うのか?」
「そ、それは……」
「葉くん、明け方になるまでの一晩だけでいいんです。嫌かもしれませんが私を女だとは思わず、ここに置いてくださいませんか?」
「う、うう……」
規律を守る葉くんが悪いなんて事、何一つないのだけど。
皆に圧倒されたようで、目を逸らしながらも渋々と頷いた。
「わかりました。でも、麻雀はダメです!お酒も煙草も!」
「チッ」
「何がチッ、ですか!ここは神聖なる寺院なんですよ!?」
日が暮れて私はお風呂をいただいたあと、葉くんとともに寺院内を案内してもらう。
「名前様は、仏道に興味をお持ちですか?」
葉くんの質問に、眉尻を下げて笑う。
「興味、というかお寺が好きで。初めは光明様に連れられてですけど、何年もずっと寺院でお世話になっていたので」
「あの光明三蔵法師様にですか!?すごい!名前様は生きて、お二方の三蔵法師様にお会いなさったのですね!」
両手を組み合わせて、目をきらきらと輝かせた葉くんに見上げられる。
正確には四人だったなと、大切な人たちを思い出して目を細める。
突然、近くで何か崩れたような轟音を耳にした。
「なんでしょうか?」
「葉くん、部屋に戻って三蔵たちを呼んできてください!」
「名前様!?」
もう何回、何十回と経験してきたからわかる。
刺客の妖怪たちだ。
音の方へ走って向かうと、すでに大勢の妖怪たちが大広間へと侵入していた。
「出てこい!三蔵一行!殺してやる!」
「皆さん逃げてください!早く!」
「お、そこにいるのは三蔵一行の女だな?紅孩児様への手土産を探す手間が省けたぜ!」
逃げ惑う人たちに、鳴り止まない悲鳴、血飛沫。
迫り来る妖怪たちは、武器も持たない僧侶たちを容赦なく次々と殺していく。
「これは、一体……」
「葉くん!逃げて!」
壁を背に座り込む葉くんの前に、立ちふさがる。
「ククッ……どうした、震えてるぞ?女一人に何が出来るっていうんだァ?」
舌なめずりしながら妖怪は、余裕たっぷりに見下ろす。
うしろでは葉くんが、声を上げる事も逃げる事も出来ずに震えている。
このままじゃ、葉くんが殺される。
「!……な、に」
胸と口から、血を流して妖怪が倒れる。
私は妖怪の心臓目がけて、小刀を突き刺していた。
あの日、再びこの世界に来て観世音菩薩様から授かった小刀を。
「う、……」
殺した。
初めて、人を、妖怪を。
込み上げてくるものを、吐き気を、必死で抑える。
「女ァ!よくも仲間を殺ってくれたな!ぶっ殺してやる!」
「名前!」
悟空たち三人がやってきて、その姿に安堵して膝から崩れ落ちる。
影が降ってきたかと思えば銃声が聞こえて、三蔵の後ろ姿がそこにあった。
減点だ、なんて言って余裕ある様子に力なく笑う。
「お前ごときの刺客をよこす様じゃ、俺達はよほど見くびられてるらしいな。貴様らの主君、紅孩児とやらに。牛魔王蘇生実験の目的はなんだ?その裏に何がある」
「……ヘッ、アンタ血生臭ェな。今まで何人の血を浴びてきた?三蔵の名が聞いてあきれるぜ」
三蔵が引き金を引こうとした、その時。
爆発音と衝撃波に、目をつぶる。
自爆した。
主君である紅孩児のために、自ら死を選んだ。
「あ、あなたたちは……」
「葉くん、もう大丈夫、」
うしろにいた葉くんが拳を握り、震えながらも立ち上がる。
「あなたたちは何者なんですか!?今までにも沢山の血を浴びた……って、こんな風に殺生を続けてきたのですか!?」
たとえ誰であろうと殺生は御仏への冒涜だと、必死で嘆く葉くんに眉を落とす。
もちろんここにいる誰一人、好き好んで殺しているわけではない。
「お前、それ本心で言ってるのか?これだけ身内が殺されても、命懸けで守ってくれたこの人の前で、そんな事言えるのかよ」
三蔵の鋭い視線が、葉くんに向かう。
周りには妖怪と、何の罪もないたくさんの僧侶たちの死体。
そして私の手には、いまだ血のついた小刀。
「ごめんね、葉くん。皆を守れなくて」
「そんな、わたくし……」
三蔵が私の手から小刀を取って血を拭い、鞘に納める。
そして、背中と膝の裏に腕をまわされたかと思えば、軽々と抱きかかえられた。
「三蔵……!」
「腰抜けて立てねぇだろ」
「……はい」
いつからか抜けた敬語。
横抱きにされて周りからの視線も気になったが、おとなしく三蔵の腕に収まる。
そんなに神に近づきたければ死んでしまえと、三蔵は容赦なく葉くんに告げた。
「でもまあ、残念な事に。俺たちは生きてるんだな、コレが」
悟浄の言葉に、崩れ落ちた壁からまぶしいほどの朝日が差し込んだ。
◇
私たちは、足早に寺院を立ち去る。
お礼を言われたが、元々自分たちがいなければ襲われなかった事態だ。
「三蔵様!」
葉くんが、私たちの元へ走って追いかけてくる。
「また寺院に立ち寄ってくださいますか?その時は……その時は、わたくしに麻雀を教えてください!」
葉くんの吹っ切れたような明るい表情に、私も頬をゆるめた。
「名前様も!」
「?」
「ぜひ、また会いに来てくださいね!」
「はい!」
合掌して見送る葉くんに別れを告げて、私たちは再び西へと歩みを進めた。