無印編
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頭が、痛い。
目が覚めて、身体を抱えられている感触に顔を上げる。
「三蔵、様……」
「名前!」
視界に入ったのは、両腕を無数の糸に縛られ捕われている三蔵の姿。
横を見ると、私を小脇に抱える女性が笑みを浮かべて見下ろしていた。
旅の一座だと言っていたこの人は、妖怪だったのか。
「起きたかい、お嬢ちゃん。暴れるんじゃないよ。アンタは紅孩児様への、ひいては牛魔王様への大事な献上品なんだから」
「……!」
「おい、それはどういう事だ」
「教えてほしいかい?そうそう、徳の高い坊主を食べると、寿命が延びるらしいじゃない。おとなしく食べさせてくれるのなら、教えてあげようじゃないか」
女妖怪の手が、三蔵の頬へ触れそうになる。
抱えられたまま必死にもがき、みぞおちを肘で思いっきり突いた。
「っ!この小娘!私に歯向かうとはよくも……!」
「おっと、俺たちのお姫サマを返してもらおうか」
声がしたかと思えば、身体が浮く感覚。
いつの間にか八戒に抱きかかえられ、妖怪から救い出されていた。
三蔵を捕らえていた糸も切れて解放される。
「怪我はありませんか、名前さん」
「大丈夫です、ありがとうございます」
「フンッ!人質が一人だなんて、誰が言った?」
「朋茗!」
宿の娘である朋茗を盾に、仲間の妖怪たちも現れる。
信じられない事に、女妖怪は八つ目の大蜘蛛へと変化した。
初めて見る、妖怪の異形の姿。
悟空がすぐさま朋茗を救い出すが、蜘蛛女の強靭な糸が再び私たちを縛りつけた。
絶体絶命の中、発砲音が轟く。
「無事か!?朋茗!」
「お父さん……!」
「またしても、おのれ……人間風情がぁ!」
傷を負った蜘蛛女の牙が、突如仲間の妖怪たちの元へ向かった。
「見るな!朋茗!」
三蔵の声と同時に、私は八戒により視界をふさがれる。
聞こえたのは悲鳴と、肉と骨が噛み砕かれる音。
喰っている、仲間を。
朋茗とその父に向けられた攻撃を、悟空が受け止める。
「なぜ低俗で無力な人間などを助ける!?貴様らだって元はと言えば、我らと同じ妖怪じゃないか!」
「え……」
言葉を失う朋茗と同じく、目を見張る。
妖怪。
彼ら、三人が。
拒絶する朋茗を見て、私を支えていた八戒が離れようとする。
その手を、とっさにつかんだ。
「名前さん……」
「妖怪とか人間とか、そんなこと、どーでもいいんだよ。ただ、飯がうまったんだ。そんだけ!」
朋茗たちを必死で守る、悟空の声が聞こえる。
不安げな碧緑の瞳を見上げて、頷く。
別世界から来た私は、妖怪について慣れ親しんだものではないけれど。
「……悟空の言う通りですよ、八戒さん。人間だって、みんなやさしくて思いやりのある人ばかりじゃありません。でも私は、貴方たちが強くて、やさしくて、かっこいい事を知ってますから」
だから大丈夫です、と笑いかける。
「言うねぇ、名前ちゃん。物好きだな、アンタも」
そばにいた悟浄に、頭をくしゃくしゃとなでられる。
目の前にいる八戒も、やわらかな笑みを浮かべていた。
そして、魔戒天浄を唱えた三蔵と悟空の一撃により、蜘蛛女は無事倒された。
◇
「名前ちゃんが、牛魔王への献上品?そりゃどういうこった」
「それが、私にもさっぱり……」
朋茗たちと別れてジープに乗り、町を出て西へと向かう。
ちなみに朋茗のお父さんは、悟空たちが妖怪だと初めから気づいていたそうだ。
悟空は別れ際に朋茗からもらったお弁当を、美味しそうにぱくぱくと食べている。
「敵は、僕たちの命と名前さん自身を狙っている、という事ですか」
「おそらくな。今回の一件には、牛魔王の息子である紅孩児が絡んでいる。奴と対峙すれば、何かわかるかもしれんな」
紅孩児。
彼も牛魔王とともに封印されていたが、何者かによって目醒めたという。
どうして、ただの人間である私が必要なのか。
思い当たるとすれば、私が桃源郷の人間ではないという事だけど。
その真意はわからない。
漠然とした疑問を胸に、彼らとの旅は続いて行くのであった。
目が覚めて、身体を抱えられている感触に顔を上げる。
「三蔵、様……」
「名前!」
視界に入ったのは、両腕を無数の糸に縛られ捕われている三蔵の姿。
横を見ると、私を小脇に抱える女性が笑みを浮かべて見下ろしていた。
旅の一座だと言っていたこの人は、妖怪だったのか。
「起きたかい、お嬢ちゃん。暴れるんじゃないよ。アンタは紅孩児様への、ひいては牛魔王様への大事な献上品なんだから」
「……!」
「おい、それはどういう事だ」
「教えてほしいかい?そうそう、徳の高い坊主を食べると、寿命が延びるらしいじゃない。おとなしく食べさせてくれるのなら、教えてあげようじゃないか」
女妖怪の手が、三蔵の頬へ触れそうになる。
抱えられたまま必死にもがき、みぞおちを肘で思いっきり突いた。
「っ!この小娘!私に歯向かうとはよくも……!」
「おっと、俺たちのお姫サマを返してもらおうか」
声がしたかと思えば、身体が浮く感覚。
いつの間にか八戒に抱きかかえられ、妖怪から救い出されていた。
三蔵を捕らえていた糸も切れて解放される。
「怪我はありませんか、名前さん」
「大丈夫です、ありがとうございます」
「フンッ!人質が一人だなんて、誰が言った?」
「朋茗!」
宿の娘である朋茗を盾に、仲間の妖怪たちも現れる。
信じられない事に、女妖怪は八つ目の大蜘蛛へと変化した。
初めて見る、妖怪の異形の姿。
悟空がすぐさま朋茗を救い出すが、蜘蛛女の強靭な糸が再び私たちを縛りつけた。
絶体絶命の中、発砲音が轟く。
「無事か!?朋茗!」
「お父さん……!」
「またしても、おのれ……人間風情がぁ!」
傷を負った蜘蛛女の牙が、突如仲間の妖怪たちの元へ向かった。
「見るな!朋茗!」
三蔵の声と同時に、私は八戒により視界をふさがれる。
聞こえたのは悲鳴と、肉と骨が噛み砕かれる音。
喰っている、仲間を。
朋茗とその父に向けられた攻撃を、悟空が受け止める。
「なぜ低俗で無力な人間などを助ける!?貴様らだって元はと言えば、我らと同じ妖怪じゃないか!」
「え……」
言葉を失う朋茗と同じく、目を見張る。
妖怪。
彼ら、三人が。
拒絶する朋茗を見て、私を支えていた八戒が離れようとする。
その手を、とっさにつかんだ。
「名前さん……」
「妖怪とか人間とか、そんなこと、どーでもいいんだよ。ただ、飯がうまったんだ。そんだけ!」
朋茗たちを必死で守る、悟空の声が聞こえる。
不安げな碧緑の瞳を見上げて、頷く。
別世界から来た私は、妖怪について慣れ親しんだものではないけれど。
「……悟空の言う通りですよ、八戒さん。人間だって、みんなやさしくて思いやりのある人ばかりじゃありません。でも私は、貴方たちが強くて、やさしくて、かっこいい事を知ってますから」
だから大丈夫です、と笑いかける。
「言うねぇ、名前ちゃん。物好きだな、アンタも」
そばにいた悟浄に、頭をくしゃくしゃとなでられる。
目の前にいる八戒も、やわらかな笑みを浮かべていた。
そして、魔戒天浄を唱えた三蔵と悟空の一撃により、蜘蛛女は無事倒された。
◇
「名前ちゃんが、牛魔王への献上品?そりゃどういうこった」
「それが、私にもさっぱり……」
朋茗たちと別れてジープに乗り、町を出て西へと向かう。
ちなみに朋茗のお父さんは、悟空たちが妖怪だと初めから気づいていたそうだ。
悟空は別れ際に朋茗からもらったお弁当を、美味しそうにぱくぱくと食べている。
「敵は、僕たちの命と名前さん自身を狙っている、という事ですか」
「おそらくな。今回の一件には、牛魔王の息子である紅孩児が絡んでいる。奴と対峙すれば、何かわかるかもしれんな」
紅孩児。
彼も牛魔王とともに封印されていたが、何者かによって目醒めたという。
どうして、ただの人間である私が必要なのか。
思い当たるとすれば、私が桃源郷の人間ではないという事だけど。
その真意はわからない。
漠然とした疑問を胸に、彼らとの旅は続いて行くのであった。