無印編
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三蔵の取り仕切る慶雲院にお世話になり、数日後。
「毎度毎度、ここは線香くせぇなー」
「失礼します。三蔵さん、今回の依頼にかかった経費ですけど……おや?」
ガラリと扉を開けて、穏やかそうな眼鏡の青年と深紅の髪の派手な青年が入ってきた。
心底驚いたような二人と、目が合う。
「えっと、こんにちは。三蔵様へのお客様ですね?」
「あ、はい。こんにちは」
「そうだけど……キミみたいなかわい子ちゃんが、なーんでまたこんな寺に?」
壁を背に腕が伸びてきて、影が降ってくる。
口の端をつり上げた赤い瞳に迫られて、困惑する。
パシーンッと、軽快に鳴り響く音が赤毛の青年の頭から聞こえた。
「った〜!何すんだ、この生臭坊主!」
「てめぇこそ何してやがる。さっさと離れろ」
「あ?オイオイ、まさか……チェリーちゃんの彼女?」
「殺すぞ」
低い声でにらみを利かせる三蔵に、一人はニヤニヤと、もう一人は眉尻を下げて笑っている。
「八戒に悟浄!なんだ来てたんだ!」
「おう、バカ猿。相変わらず元気そうだな」
「うるせーエロ河童!なあ、八戒!お土産は?」
「はいはい。今日はリンゴを買ってきましたよ」
「わーい!」
悟空もやってきて、何だかにぎやかになる。
私は八戒、悟浄と呼ばれた二人を前に、三蔵の隣で頭を下げて自己紹介をした。
「苗字名前です」
「この人は俺が幼少の頃、大変お世話になったお方だ。訳あって先日より、ここ慶雲院に滞在されている。失礼のないようにしろ」
物珍しいものでも見たかのように瞬きする二人が、ゆっくりと口を開く。
「三蔵、おめぇ……」
「三蔵さん、貴方……敬語が使えたんですね?」
人間相手に対して、と付け加えられる。
青筋を浮かべた三蔵は、額を押さえて当たり前だと吐き捨てた。
「なるほど。八戒さんと悟浄さんは、三蔵様の仕事のお手伝いをされているのですね」
「ただの下僕だ」
「んだと、てめぇ!」
「まあまあ、悟浄」
「なあ、三蔵。メシは?」
「今さっき食ったばかりだろうが、チビ猿!」
「リンゴ、もう一個食べますか?悟空」
「食う!」
仲の良さそうな四人を見て、思わず笑みがこぼれる。
よかった、三蔵の周りにはこんなに楽しそうな人たちがいたんだ。
「名前さんもどうですか?」
「いいんですか?すみません、八戒さん」
「いえいえ」
「あ、それじゃあ私、皆さんの分も切ってきますね。悟空は、そのまま丸かじりがいい?」
「いーや!俺のも切って!」
ニッと笑う悟空の分も受け取り、紙袋を持って部屋を出る。
調理場に着くと、静かな空間に一人ため息を吐く。
紙袋から出したリンゴを切りながら、私は自分の居場所について考えていた。
行く当てがないとはいえ、このままここに居ていいのだろうか。
にぎやかな四人の中にいた、三蔵の顔を思い浮かべる。
面影はあるものの、険しい顔つきに、荒々しい口調、今は煙草もお酒も嗜む。
当たり前だが、私の知っている江流はもういない。
それが少し寂しくも思うけれど。
「そりゃ大人になったんだから、人も環境も変わるよね」
「誰が変わるって?」
「わっ!?……って、悟浄さん」
よっ、と片手を上げる悟浄さんが、いつの間にか後ろに立っていた。
「名前ちゃんの言うその人って、もしかしてあの性格破綻美人?」
「ふふ、それ三蔵様の事で合ってます?」
「合ってます合ってます。昔、世話してたんだって?名前ちゃん、見るからにまだ若いのに苦労してたんだな」
悟浄さんの言葉に、眉を八の字にして曖昧に笑う。
「あの三蔵サマのガキの頃ねぇ。今以上に生意気そうだ」
「ええ、とてもかわいかったですよ」
「へえ……名前ちゃんの中で、生意気ってのは可愛い事なんだ」
「あれ、違います?」
「……俺にはよくわかんねぇけどな。おっ、ウサギのリンゴなんてカワイイー。名前ちゃん器用じゃん」
「ありがとうございます」
切ったウサギ型のリンゴをお盆にのせて、悟浄さんと一緒に廊下を進む。
「まあ、あの三蔵サマが敬意を払うなんて、名前ちゃんくらいなんじゃね?そんなに長い付き合いでもねぇけど、俺、他に見た事ねぇもん」
「そう、ですか」
思い出したのは、やわらかく微笑む光明様のお姿。
淡いひかりとなって、霞のように消えていく。
お盆を持つ手に思わず力が入って、うつむいた。
「……何を思いつめてるかは知んねぇけどさ、三蔵にとってアンタは大事な人って事に変わりねぇから。だから、そう気を落とす事ないぜ?」
「悟浄さん……」
そう言って笑う、彼の言葉が、心があたたかい。
会って早々いきなり迫られるなんて、あの頃の健邑を思い出して、最初はびっくりしたけれど。
初対面なのに、ここまで気にかけてくれて。
「ありがとうございます。悟浄さんはやさしい人ですね」
「俺は女の子には優しいぜ?もちろんベッドの中でも……って、オイ三蔵!何物騒なモン向けてんだよ!?」
「てめぇ、よほど死にたいらしいな」
部屋に入ると、三蔵の持つ小銃に瞬きする。
八戒さんはいつもの事ですよと、笑みを浮かべながらお盆を受け取った。
はしゃぐ悟空が飛んで来て、三蔵と悟浄さんが文句を言いながらも、みんなで笑いながらリンゴを食べ合った。
「毎度毎度、ここは線香くせぇなー」
「失礼します。三蔵さん、今回の依頼にかかった経費ですけど……おや?」
ガラリと扉を開けて、穏やかそうな眼鏡の青年と深紅の髪の派手な青年が入ってきた。
心底驚いたような二人と、目が合う。
「えっと、こんにちは。三蔵様へのお客様ですね?」
「あ、はい。こんにちは」
「そうだけど……キミみたいなかわい子ちゃんが、なーんでまたこんな寺に?」
壁を背に腕が伸びてきて、影が降ってくる。
口の端をつり上げた赤い瞳に迫られて、困惑する。
パシーンッと、軽快に鳴り響く音が赤毛の青年の頭から聞こえた。
「った〜!何すんだ、この生臭坊主!」
「てめぇこそ何してやがる。さっさと離れろ」
「あ?オイオイ、まさか……チェリーちゃんの彼女?」
「殺すぞ」
低い声でにらみを利かせる三蔵に、一人はニヤニヤと、もう一人は眉尻を下げて笑っている。
「八戒に悟浄!なんだ来てたんだ!」
「おう、バカ猿。相変わらず元気そうだな」
「うるせーエロ河童!なあ、八戒!お土産は?」
「はいはい。今日はリンゴを買ってきましたよ」
「わーい!」
悟空もやってきて、何だかにぎやかになる。
私は八戒、悟浄と呼ばれた二人を前に、三蔵の隣で頭を下げて自己紹介をした。
「苗字名前です」
「この人は俺が幼少の頃、大変お世話になったお方だ。訳あって先日より、ここ慶雲院に滞在されている。失礼のないようにしろ」
物珍しいものでも見たかのように瞬きする二人が、ゆっくりと口を開く。
「三蔵、おめぇ……」
「三蔵さん、貴方……敬語が使えたんですね?」
人間相手に対して、と付け加えられる。
青筋を浮かべた三蔵は、額を押さえて当たり前だと吐き捨てた。
「なるほど。八戒さんと悟浄さんは、三蔵様の仕事のお手伝いをされているのですね」
「ただの下僕だ」
「んだと、てめぇ!」
「まあまあ、悟浄」
「なあ、三蔵。メシは?」
「今さっき食ったばかりだろうが、チビ猿!」
「リンゴ、もう一個食べますか?悟空」
「食う!」
仲の良さそうな四人を見て、思わず笑みがこぼれる。
よかった、三蔵の周りにはこんなに楽しそうな人たちがいたんだ。
「名前さんもどうですか?」
「いいんですか?すみません、八戒さん」
「いえいえ」
「あ、それじゃあ私、皆さんの分も切ってきますね。悟空は、そのまま丸かじりがいい?」
「いーや!俺のも切って!」
ニッと笑う悟空の分も受け取り、紙袋を持って部屋を出る。
調理場に着くと、静かな空間に一人ため息を吐く。
紙袋から出したリンゴを切りながら、私は自分の居場所について考えていた。
行く当てがないとはいえ、このままここに居ていいのだろうか。
にぎやかな四人の中にいた、三蔵の顔を思い浮かべる。
面影はあるものの、険しい顔つきに、荒々しい口調、今は煙草もお酒も嗜む。
当たり前だが、私の知っている江流はもういない。
それが少し寂しくも思うけれど。
「そりゃ大人になったんだから、人も環境も変わるよね」
「誰が変わるって?」
「わっ!?……って、悟浄さん」
よっ、と片手を上げる悟浄さんが、いつの間にか後ろに立っていた。
「名前ちゃんの言うその人って、もしかしてあの性格破綻美人?」
「ふふ、それ三蔵様の事で合ってます?」
「合ってます合ってます。昔、世話してたんだって?名前ちゃん、見るからにまだ若いのに苦労してたんだな」
悟浄さんの言葉に、眉を八の字にして曖昧に笑う。
「あの三蔵サマのガキの頃ねぇ。今以上に生意気そうだ」
「ええ、とてもかわいかったですよ」
「へえ……名前ちゃんの中で、生意気ってのは可愛い事なんだ」
「あれ、違います?」
「……俺にはよくわかんねぇけどな。おっ、ウサギのリンゴなんてカワイイー。名前ちゃん器用じゃん」
「ありがとうございます」
切ったウサギ型のリンゴをお盆にのせて、悟浄さんと一緒に廊下を進む。
「まあ、あの三蔵サマが敬意を払うなんて、名前ちゃんくらいなんじゃね?そんなに長い付き合いでもねぇけど、俺、他に見た事ねぇもん」
「そう、ですか」
思い出したのは、やわらかく微笑む光明様のお姿。
淡いひかりとなって、霞のように消えていく。
お盆を持つ手に思わず力が入って、うつむいた。
「……何を思いつめてるかは知んねぇけどさ、三蔵にとってアンタは大事な人って事に変わりねぇから。だから、そう気を落とす事ないぜ?」
「悟浄さん……」
そう言って笑う、彼の言葉が、心があたたかい。
会って早々いきなり迫られるなんて、あの頃の健邑を思い出して、最初はびっくりしたけれど。
初対面なのに、ここまで気にかけてくれて。
「ありがとうございます。悟浄さんはやさしい人ですね」
「俺は女の子には優しいぜ?もちろんベッドの中でも……って、オイ三蔵!何物騒なモン向けてんだよ!?」
「てめぇ、よほど死にたいらしいな」
部屋に入ると、三蔵の持つ小銃に瞬きする。
八戒さんはいつもの事ですよと、笑みを浮かべながらお盆を受け取った。
はしゃぐ悟空が飛んで来て、三蔵と悟浄さんが文句を言いながらも、みんなで笑いながらリンゴを食べ合った。