埋葬編
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別れは、いつも残酷だ。
嗅ぎなれた線香の香りではなく、鼻につくのは薬品の匂い。
私はある日突然、元の世界に戻っていた。
いつも通り目覚めたはずが、そこは金山寺の布団の上ではなく、見知らぬ病院のベッドの上。
医者の話によると私は事故に遭い、一週間ほど昏睡状態だったらしい。
精密検査や体力が回復するまでは、しばらくそのまま入院との事。
ベッドに座り、窓から沈みゆく太陽を茫然と眺める。
あれは、桃源郷での出来事は、すべて夢幻だったのだろうか。
光明様、烏哭、江流。
大切な人たちに、一言も別れを告げる事なく去ってしまった。
「やっぱり、私の居るべき場所はここなんだ」
またひとりに戻った。
ただ、それだけ。
「夢、だったんだ。そう、だって私にはもったいないほどの……」
光明様と江流と毎日を過ごして、ふらりと烏哭が訪れる。
大切な人たちに囲まれて、夢のように楽しかった幸せな日々。
それがすべて、うたかたとなって消えた。
江流との約束、果たせないままになってしまったな。
烏哭は私がいなくなった事に気づくまで、何年かかるだろう。
光明様、光明様は私がいなくともきっと……。
「光明、様……」
うつむき、自身の身体を強く抱きしめる。
忘れようとすればするほど、あの日の記憶が押し寄せてくる。
もしも、またあの日に戻れたなら。
愛しい笑顔に巡り逢えたら。
張り裂けそうな胸の内を開いて、声にならない声で叫んだ。
返事など来るはずもないのに、必死に。
それでも、今感じているこの気持ちは、この想いは幻などではないから。
─貴方は貴方のためだけに、生きてください。
暗闇に覆われた新月の夜空を見上げて、手を伸ばすもこぼれ落ちるのは雫だけ。
さよなら、なんて出来そうにない。
止めどなくあふれる涙を流して、私は泣き崩れるように眠りについた。
嗅ぎなれた線香の香りではなく、鼻につくのは薬品の匂い。
私はある日突然、元の世界に戻っていた。
いつも通り目覚めたはずが、そこは金山寺の布団の上ではなく、見知らぬ病院のベッドの上。
医者の話によると私は事故に遭い、一週間ほど昏睡状態だったらしい。
精密検査や体力が回復するまでは、しばらくそのまま入院との事。
ベッドに座り、窓から沈みゆく太陽を茫然と眺める。
あれは、桃源郷での出来事は、すべて夢幻だったのだろうか。
光明様、烏哭、江流。
大切な人たちに、一言も別れを告げる事なく去ってしまった。
「やっぱり、私の居るべき場所はここなんだ」
またひとりに戻った。
ただ、それだけ。
「夢、だったんだ。そう、だって私にはもったいないほどの……」
光明様と江流と毎日を過ごして、ふらりと烏哭が訪れる。
大切な人たちに囲まれて、夢のように楽しかった幸せな日々。
それがすべて、うたかたとなって消えた。
江流との約束、果たせないままになってしまったな。
烏哭は私がいなくなった事に気づくまで、何年かかるだろう。
光明様、光明様は私がいなくともきっと……。
「光明、様……」
うつむき、自身の身体を強く抱きしめる。
忘れようとすればするほど、あの日の記憶が押し寄せてくる。
もしも、またあの日に戻れたなら。
愛しい笑顔に巡り逢えたら。
張り裂けそうな胸の内を開いて、声にならない声で叫んだ。
返事など来るはずもないのに、必死に。
それでも、今感じているこの気持ちは、この想いは幻などではないから。
─貴方は貴方のためだけに、生きてください。
暗闇に覆われた新月の夜空を見上げて、手を伸ばすもこぼれ落ちるのは雫だけ。
さよなら、なんて出来そうにない。
止めどなくあふれる涙を流して、私は泣き崩れるように眠りについた。