埋葬編
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淡い月明かりが輝く夜更けの事。
私を呼ぶ幼い声に振り返る。
「江流、まだ起きていたのですか?」
「ええ、名前様。お師匠様がお呼びですよ」
そう言われて光明様の自室に行くと、障子の隙間の向こう、縁側に座っている人影を見つけた。
手には盃が、横には徳利が置かれている。
「光明様」
「名前さんもいかがですか?般若湯」
「……いただきます」
湯なんて付いてるけど、ようはお酒だ。
徳利を手にした光明様によりお酌されて、盃に口をつける。
お酒のせいか、光明様の色っぽい視線のせいか、身体が熱くなる。
そういえば光明様の酔ってる姿、見た事ないな。
「お二人共、お酒もほどほどにされませんと」
「ええ、わかってますよ」
本当は江流とも一緒に呑みたいと言う光明様に、もうしばらくの辛抱ですね、と笑う。
江流も光明様に似たら、きっとお酒は強い方だろう。
「気にせず先に休んでてください」
「じゃあ、失礼します。お師匠様、名前様」
「おやすみなさい、江流」
私も江流に挨拶をして、障子の閉まる音の後、かすかな虫の鳴き声が響き渡る。
「名前さん、本当は帰りたい場所があるのではないですか?」
突然の問いかけに、ピクリと肩を揺らす。
どうして、と聞き返すと光明様は夜空の月のひかりのように微笑む。
「わかりますよ。ずっと貴方を見てきましたから」
「光明様……」
どうしてそんな、勘違いするような事を言うのだろうか。
「前にも言いましたが私のためではなく、貴方は貴方のためだけに生きてください」
それが、光明様のやさしさだとはわかってる。
それにいつかは、ここを離れなければならないという事も。
桃源郷は、私の世界とは違う、別世界だから。
でも。
「私、これ以上、光明様のおそばにいては、ダメ……でしょうか?」
声が震えて、視界がにじむ。
まるで光明様にとって私は必要ないと、そう言われたように感じたから。
するりと、光明様の指先が私の頬をなでる。
そのまま輪郭をなぞり、あごを持ち上げて上へ向かせられる。
ぐっと、縮まる距離。
心まで見透かすような瞳に耐えきれず、目をつぶる。
唇を喰む感触とぬくもりに、身体が熱くなる。
「んっ……ふぁ、光明さ、ま」
お酒の味が口いっぱいに広がり、酔いがまわったかのように頭がくらくらする。
月明かりの下、長い事、お互いを確かめるように交わされたやさしい口づけ。
そっと離れる唇を名残惜しく思い、潤む目で光明様を見上げる。
「……光明、様」
「貴方にそんな物欲しそうな目で見られたら、さすがの私も我慢できませんよ」
「わっ!」
背中と膝の裏に腕をまわされて、軽々しく横抱きにされる。
そのまま光明様の自室へと入り、敷かれていた布団の上へと降ろされた。
香の香りの中、障子の閉まる音に、どきりと胸打つ。
「ずっと疑問に思っていました。私とともに生きる事が、本当に貴方の幸せになるのだろうか、と。そして、烏哭と貴方の関係を見守るつもりでしたが、それもやはり間違いでした。本当は、誰の元にも、どこにも帰したくないんです」
影が降ってきたかと思えば、やんわりと肩に手をかけられて押し倒される。
部屋の明かりは燭台の、ほのかな揺らめきだけ。
酔った勢い、なんて事は決してない。
覆いかぶさる光明様の、真剣な瞳に見下ろされて鼓動が速まる。
「烏哭の事が好きなら、本気で拒絶してください」
そんな言い方、ずるい。
光明様の手によりはだけた首筋に吐息がかかり、唇と舌が這う感触。
耳の下から鎖骨にかけてゆっくりと降りてくる。
「光明、様……んっ……」
反射的に動く脚を、光明様の長い脚に絡め取られる。
密着して感じる、光明様の硬い男の人の身体。
私はそれを受け入れるように、すがりつくように背中へ腕をまわして、法衣をぎゅっと握りしめた。
「ッ……そんな事をされたら、もう止められませんよ?」
「いいん、です。だって、ずっと……お会いした時からずっと、お慕いしておりました、から」
恥ずかしい、なんていうのは今さらだけど。
思いの丈を打ち明けて、光明様の顔を直視できなくて視線をそらす。
こつん、と額と額が合わさり光明様の髪が頬をくすぐった。
「本当に可愛い人ですね。優しくしようとしてるのに、どうにかなってしまいそうですよ」
「どうにかなりそうなのは、私の方です……」
「名前、愛しています。誰よりも、何よりもずっと」
「光明さ、……んっ、はぁ……」
何度も交わされる、貪るような深く激しい口づけ。
熱く乱れる吐息に、着物の擦れる音、頭に響く水音。
どちらともわからぬ唾液が糸を引いては、再び混ざり合う。
それすらも、光明様とすると神聖なものに思えて。
手のひらが重なり、お互いの指と指が絡み合う。
「こちらを向いて、私だけを見てください。今夜は、私だけの名前」
私を求めて荒々しくなる光明様に、私も求めて。
一糸まとわぬ姿で、溶けるように愛し合う。
「……このまま、ひとつになれたら、いいのに」
「それは困りますね」
「光明様?……ひゃあっ!」
「こうして可愛らしい名前の事、抱けませんから」
「んっ、光明様……」
心も身体も光明様で満たされて、夢のようなひと時を過ごした。
私を呼ぶ幼い声に振り返る。
「江流、まだ起きていたのですか?」
「ええ、名前様。お師匠様がお呼びですよ」
そう言われて光明様の自室に行くと、障子の隙間の向こう、縁側に座っている人影を見つけた。
手には盃が、横には徳利が置かれている。
「光明様」
「名前さんもいかがですか?般若湯」
「……いただきます」
湯なんて付いてるけど、ようはお酒だ。
徳利を手にした光明様によりお酌されて、盃に口をつける。
お酒のせいか、光明様の色っぽい視線のせいか、身体が熱くなる。
そういえば光明様の酔ってる姿、見た事ないな。
「お二人共、お酒もほどほどにされませんと」
「ええ、わかってますよ」
本当は江流とも一緒に呑みたいと言う光明様に、もうしばらくの辛抱ですね、と笑う。
江流も光明様に似たら、きっとお酒は強い方だろう。
「気にせず先に休んでてください」
「じゃあ、失礼します。お師匠様、名前様」
「おやすみなさい、江流」
私も江流に挨拶をして、障子の閉まる音の後、かすかな虫の鳴き声が響き渡る。
「名前さん、本当は帰りたい場所があるのではないですか?」
突然の問いかけに、ピクリと肩を揺らす。
どうして、と聞き返すと光明様は夜空の月のひかりのように微笑む。
「わかりますよ。ずっと貴方を見てきましたから」
「光明様……」
どうしてそんな、勘違いするような事を言うのだろうか。
「前にも言いましたが私のためではなく、貴方は貴方のためだけに生きてください」
それが、光明様のやさしさだとはわかってる。
それにいつかは、ここを離れなければならないという事も。
桃源郷は、私の世界とは違う、別世界だから。
でも。
「私、これ以上、光明様のおそばにいては、ダメ……でしょうか?」
声が震えて、視界がにじむ。
まるで光明様にとって私は必要ないと、そう言われたように感じたから。
するりと、光明様の指先が私の頬をなでる。
そのまま輪郭をなぞり、あごを持ち上げて上へ向かせられる。
ぐっと、縮まる距離。
心まで見透かすような瞳に耐えきれず、目をつぶる。
唇を喰む感触とぬくもりに、身体が熱くなる。
「んっ……ふぁ、光明さ、ま」
お酒の味が口いっぱいに広がり、酔いがまわったかのように頭がくらくらする。
月明かりの下、長い事、お互いを確かめるように交わされたやさしい口づけ。
そっと離れる唇を名残惜しく思い、潤む目で光明様を見上げる。
「……光明、様」
「貴方にそんな物欲しそうな目で見られたら、さすがの私も我慢できませんよ」
「わっ!」
背中と膝の裏に腕をまわされて、軽々しく横抱きにされる。
そのまま光明様の自室へと入り、敷かれていた布団の上へと降ろされた。
香の香りの中、障子の閉まる音に、どきりと胸打つ。
「ずっと疑問に思っていました。私とともに生きる事が、本当に貴方の幸せになるのだろうか、と。そして、烏哭と貴方の関係を見守るつもりでしたが、それもやはり間違いでした。本当は、誰の元にも、どこにも帰したくないんです」
影が降ってきたかと思えば、やんわりと肩に手をかけられて押し倒される。
部屋の明かりは燭台の、ほのかな揺らめきだけ。
酔った勢い、なんて事は決してない。
覆いかぶさる光明様の、真剣な瞳に見下ろされて鼓動が速まる。
「烏哭の事が好きなら、本気で拒絶してください」
そんな言い方、ずるい。
光明様の手によりはだけた首筋に吐息がかかり、唇と舌が這う感触。
耳の下から鎖骨にかけてゆっくりと降りてくる。
「光明、様……んっ……」
反射的に動く脚を、光明様の長い脚に絡め取られる。
密着して感じる、光明様の硬い男の人の身体。
私はそれを受け入れるように、すがりつくように背中へ腕をまわして、法衣をぎゅっと握りしめた。
「ッ……そんな事をされたら、もう止められませんよ?」
「いいん、です。だって、ずっと……お会いした時からずっと、お慕いしておりました、から」
恥ずかしい、なんていうのは今さらだけど。
思いの丈を打ち明けて、光明様の顔を直視できなくて視線をそらす。
こつん、と額と額が合わさり光明様の髪が頬をくすぐった。
「本当に可愛い人ですね。優しくしようとしてるのに、どうにかなってしまいそうですよ」
「どうにかなりそうなのは、私の方です……」
「名前、愛しています。誰よりも、何よりもずっと」
「光明さ、……んっ、はぁ……」
何度も交わされる、貪るような深く激しい口づけ。
熱く乱れる吐息に、着物の擦れる音、頭に響く水音。
どちらともわからぬ唾液が糸を引いては、再び混ざり合う。
それすらも、光明様とすると神聖なものに思えて。
手のひらが重なり、お互いの指と指が絡み合う。
「こちらを向いて、私だけを見てください。今夜は、私だけの名前」
私を求めて荒々しくなる光明様に、私も求めて。
一糸まとわぬ姿で、溶けるように愛し合う。
「……このまま、ひとつになれたら、いいのに」
「それは困りますね」
「光明様?……ひゃあっ!」
「こうして可愛らしい名前の事、抱けませんから」
「んっ、光明様……」
心も身体も光明様で満たされて、夢のようなひと時を過ごした。