埋葬編
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月明かりの下、縁側に座る法衣姿の男が二人。
手には盃、傍らには徳利と酒の肴。
風が吹いて夜空は陰り、鈴虫の音色もとうに鳴き止んでいた。
「……ねえ、光明。例えばアンタが月で、僕が夜なら、名前さんは何かな?」
にやりと顔を歪める烏哭に、光明は静かに夜空を見上げる。
雲に隠れた大きな満月を。
「海、だと思いますよ」
「へぇ。僕としては、月に住むウサギちゃんかな」
「そして太陽に棲む烏である貴方が、食べにやってくると」
「何か問題でも?」
「大ありですよ」
烏哭は光明の開かれたまっすぐな瞳を見て、一瞬、口を閉ざす。
それは以前、名前を抱いた翌日に会った時と同じ眼差しで。
「うわ、マジな目じゃん……また半殺しとか勘弁してよ」
「以前は保護者として、そしてほんのちょっぴり羨ましさも込めて殴りました。貴方が人を愛するのは良い事ですが、やはり名前はダメです」
「じゃあ何?今度は本気で惚れちゃったってワケ?」
「そうみたいですね」
あっさり白状した光明に、烏哭は肩透かしを食らう。
ふーん、とつまみを口にして、烏哭は横目に光明を見た。
「……嫌味でも何でもなくてさ、今さら遅すぎない?」
「まあ、初めは本当に親心に近いものを抱いていましたから」
「やたらとちゅーしてたくせに?」
「だってほら、家族の間でもするでしょう?キス」
首を傾げる光明に、本気か冗談かわからず烏哭はため息を漏らす。
光明は今頃、夢の中にいるであろう名前を思い描いていた。
出会った瞬間から感じていた。
誰よりも何よりも幸せになってほしい、愛しい人。
そう願うあまり、自分の幸せを追い求める事はなかった。
今までは。
「まあ、そういう事なので、今後名前に手を出すようならそれなりの覚悟をしておいてくださいねって話です」
「ヤるたびに半殺しとか、代償重すぎ」
「あきらめますか?」
「まさか」
「でしょうね」
光明は盃を口にして微笑む。
お互い譲る気など、さらさら持ち合わせていない。
賭けるものがまたひとつ、増えただけ。
ゆっくりと雲が晴れて、月明かりが再び二人の三蔵法師を照らした。
「それでも誰かの元へ、どこかへ行く事になったら、私は彼女の意志を尊重しますよ」
「お優しい事で。僕はその逆だな。会いたくなったらどこまでも探して、追いかけて、連れ戻してみせますよ」
「烏哭、知ってますか。それ、ストーカーっていうんですよ」
ああ恐ろしい、と肩をさする光明。
烏哭は笑みを浮かべて、酒を一気に仰いだ。
手には盃、傍らには徳利と酒の肴。
風が吹いて夜空は陰り、鈴虫の音色もとうに鳴き止んでいた。
「……ねえ、光明。例えばアンタが月で、僕が夜なら、名前さんは何かな?」
にやりと顔を歪める烏哭に、光明は静かに夜空を見上げる。
雲に隠れた大きな満月を。
「海、だと思いますよ」
「へぇ。僕としては、月に住むウサギちゃんかな」
「そして太陽に棲む烏である貴方が、食べにやってくると」
「何か問題でも?」
「大ありですよ」
烏哭は光明の開かれたまっすぐな瞳を見て、一瞬、口を閉ざす。
それは以前、名前を抱いた翌日に会った時と同じ眼差しで。
「うわ、マジな目じゃん……また半殺しとか勘弁してよ」
「以前は保護者として、そしてほんのちょっぴり羨ましさも込めて殴りました。貴方が人を愛するのは良い事ですが、やはり名前はダメです」
「じゃあ何?今度は本気で惚れちゃったってワケ?」
「そうみたいですね」
あっさり白状した光明に、烏哭は肩透かしを食らう。
ふーん、とつまみを口にして、烏哭は横目に光明を見た。
「……嫌味でも何でもなくてさ、今さら遅すぎない?」
「まあ、初めは本当に親心に近いものを抱いていましたから」
「やたらとちゅーしてたくせに?」
「だってほら、家族の間でもするでしょう?キス」
首を傾げる光明に、本気か冗談かわからず烏哭はため息を漏らす。
光明は今頃、夢の中にいるであろう名前を思い描いていた。
出会った瞬間から感じていた。
誰よりも何よりも幸せになってほしい、愛しい人。
そう願うあまり、自分の幸せを追い求める事はなかった。
今までは。
「まあ、そういう事なので、今後名前に手を出すようならそれなりの覚悟をしておいてくださいねって話です」
「ヤるたびに半殺しとか、代償重すぎ」
「あきらめますか?」
「まさか」
「でしょうね」
光明は盃を口にして微笑む。
お互い譲る気など、さらさら持ち合わせていない。
賭けるものがまたひとつ、増えただけ。
ゆっくりと雲が晴れて、月明かりが再び二人の三蔵法師を照らした。
「それでも誰かの元へ、どこかへ行く事になったら、私は彼女の意志を尊重しますよ」
「お優しい事で。僕はその逆だな。会いたくなったらどこまでも探して、追いかけて、連れ戻してみせますよ」
「烏哭、知ってますか。それ、ストーカーっていうんですよ」
ああ恐ろしい、と肩をさする光明。
烏哭は笑みを浮かべて、酒を一気に仰いだ。