会長選挙・アルカ編
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車に乗り森の中の屋敷を訪れて、先に来ていたゴンと入れ替わる形で中に入る。
「久しぶり、カイト」
「こんな形で再会するとはな」
壁際にいるコアラのキメラアントを一瞥して、ソファに座っている赤毛の少女と対面する。
窓から差し込む陽の光に反射して、宙を舞う埃がキラキラときらめく。
「ここに座ると、懺悔したい気持ちになるね」
「何か後悔してる事があるのか」
いつだって、後悔のない選択はない。
生と死が隣り合わせのこの世界、正しさだけじゃ生きていけなかった。
カイトは優しい人だから、後悔を口にすれば選択と意志を問うて新しい道を示すだろう。
私もそうやって、ただ救われたいのだ。
「あーあ、お菓子でも持ってくればよかったなぁって」
「別に手ぶらでもいいが…そうだな、最近ときどき無性に甘いものが食べたくなる」
「そっか」
身体が変われば当然、味覚も変わる。
テーブルに置かれたカップを手に取り、揺れる水面に口をつける。
苦いコーヒーの味が口いっぱいに広がった。
「私ね、小さい頃は黄色が好きだった」
突然話し始めた私に、大きな瞳を向けたまま少女は黙って耳を傾ける。
「近所に咲いてた明るいひまわりの色。それから空の青が好きになって、その次はかわいいピンクだったけど、似合わないからって小さなピンク色の持ち物ばかり増えて。いつの頃か、黒になって」
もう二度と戻ることのない、胸の奥底にしまった遠い淡い記憶を一瞬だけ蘇らせる。
「今は、燃えるような赤色が好き」
どこからか鳥のさえずりが聞こえる。
少しの静寂のあと、目の前の小さな唇の端がニッとつり上がった。
「失礼を承知で言うが、今のあなたといると無垢な少女と話してる気分になる」
「まあ、精神年齢低い自覚はありますけど」
「いつまでも無邪気に笑っていてほしい、そう思っただけだ」
何と返すべきか迷って、小さくありがとうと口にして目を伏せる。
まいったな。
「カイトってば、そういう事恥ずかしげもなく言うよね。ジンと違って」
「誰かさんに似たのかもな」
一体、誰のことを言ってるのやら。
二人そろって笑い合う。
不思議とこの空間はゆっくりと時が流れ、空気が淀みなく澄んでいるようだった。
「拍子抜けだな。てっきり叱られるものばかり思っていた」
「それはもうジンから言われたでしょ?私はこうしてまた話せるだけで充分」
「ああ、完全に修行不足だった。なまえ、また会えてうれしいよ」
「私も」
魂の在り方というものは不思議だ。
ずっとその先などなくて、そこで終わりだと思っていたから。
だから、私は今ここにいるのかもしれない。
少女の額にかかる長い赤毛に、そっと手を伸ばして梳く。
「次に会う時は背も伸びて、うんと可愛らしい女の子になってるだろうね」
「今でもかわいいだろ、あたちは」
眉尻を下げて、そうだねと頭をなでながら笑う。
「なまえ、また話そう」
「もちろん。今度はおいしいお菓子たくさん持ってくるね」
ずっと傍に控えていた、キメラアントの彼へと顔を向ける。
「カイトのこと、よろしくお願いします」
「…ああ」
「よろしくするのはオレの方だがな」
「はは、そうでした。じゃあ、またね」
私の知ってるカイトは、死んだ。
いくつもの魂と混じり合ったその身体で、新たな道を進むだろう。
懺悔はしない。
罪悪感から逃れるために、神に許しを請うことはしたくなかった。
だから、これからもずっと引きずって歩いていく。
あなたがいない、この世界で。
「なまえ様」
「お待たせ、傷の具合は平気?」
「はい、おかげさまで。なまえ様の援護がなければ致命傷でした」
「ううん、腕の良い医療班のおかげよ。よし!じゃあキルアたちのところに戻ろうか、ゴトー」
私の知らない、新しい世界で。
閉ざした扉を開けることを決めた。
「久しぶり、カイト」
「こんな形で再会するとはな」
壁際にいるコアラのキメラアントを一瞥して、ソファに座っている赤毛の少女と対面する。
窓から差し込む陽の光に反射して、宙を舞う埃がキラキラときらめく。
「ここに座ると、懺悔したい気持ちになるね」
「何か後悔してる事があるのか」
いつだって、後悔のない選択はない。
生と死が隣り合わせのこの世界、正しさだけじゃ生きていけなかった。
カイトは優しい人だから、後悔を口にすれば選択と意志を問うて新しい道を示すだろう。
私もそうやって、ただ救われたいのだ。
「あーあ、お菓子でも持ってくればよかったなぁって」
「別に手ぶらでもいいが…そうだな、最近ときどき無性に甘いものが食べたくなる」
「そっか」
身体が変われば当然、味覚も変わる。
テーブルに置かれたカップを手に取り、揺れる水面に口をつける。
苦いコーヒーの味が口いっぱいに広がった。
「私ね、小さい頃は黄色が好きだった」
突然話し始めた私に、大きな瞳を向けたまま少女は黙って耳を傾ける。
「近所に咲いてた明るいひまわりの色。それから空の青が好きになって、その次はかわいいピンクだったけど、似合わないからって小さなピンク色の持ち物ばかり増えて。いつの頃か、黒になって」
もう二度と戻ることのない、胸の奥底にしまった遠い淡い記憶を一瞬だけ蘇らせる。
「今は、燃えるような赤色が好き」
どこからか鳥のさえずりが聞こえる。
少しの静寂のあと、目の前の小さな唇の端がニッとつり上がった。
「失礼を承知で言うが、今のあなたといると無垢な少女と話してる気分になる」
「まあ、精神年齢低い自覚はありますけど」
「いつまでも無邪気に笑っていてほしい、そう思っただけだ」
何と返すべきか迷って、小さくありがとうと口にして目を伏せる。
まいったな。
「カイトってば、そういう事恥ずかしげもなく言うよね。ジンと違って」
「誰かさんに似たのかもな」
一体、誰のことを言ってるのやら。
二人そろって笑い合う。
不思議とこの空間はゆっくりと時が流れ、空気が淀みなく澄んでいるようだった。
「拍子抜けだな。てっきり叱られるものばかり思っていた」
「それはもうジンから言われたでしょ?私はこうしてまた話せるだけで充分」
「ああ、完全に修行不足だった。なまえ、また会えてうれしいよ」
「私も」
魂の在り方というものは不思議だ。
ずっとその先などなくて、そこで終わりだと思っていたから。
だから、私は今ここにいるのかもしれない。
少女の額にかかる長い赤毛に、そっと手を伸ばして梳く。
「次に会う時は背も伸びて、うんと可愛らしい女の子になってるだろうね」
「今でもかわいいだろ、あたちは」
眉尻を下げて、そうだねと頭をなでながら笑う。
「なまえ、また話そう」
「もちろん。今度はおいしいお菓子たくさん持ってくるね」
ずっと傍に控えていた、キメラアントの彼へと顔を向ける。
「カイトのこと、よろしくお願いします」
「…ああ」
「よろしくするのはオレの方だがな」
「はは、そうでした。じゃあ、またね」
私の知ってるカイトは、死んだ。
いくつもの魂と混じり合ったその身体で、新たな道を進むだろう。
懺悔はしない。
罪悪感から逃れるために、神に許しを請うことはしたくなかった。
だから、これからもずっと引きずって歩いていく。
あなたがいない、この世界で。
「なまえ様」
「お待たせ、傷の具合は平気?」
「はい、おかげさまで。なまえ様の援護がなければ致命傷でした」
「ううん、腕の良い医療班のおかげよ。よし!じゃあキルアたちのところに戻ろうか、ゴトー」
私の知らない、新しい世界で。
閉ざした扉を開けることを決めた。