会長選挙・アルカ編
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ハンター協会本部に入り、ぞろぞろとみんなに続いて通路を歩く。
今まさに会長選挙が行われている会場へ近づくにつれて、耳に入ってきた演説の声に眉をひそめた。
「んだよ、なまえ。ウンコでも我慢してるような顔して」
「ハゲの人ってデリカシーないんですか?」
「オレはハゲてねェし、デリカシー云々はそっくりそのまま返すぜ」
「なまえ、行きたくないの?」
振り向きながら前を歩くゴンに、そんなことないよと手を振って笑いかける。
なんたってここには、ずっと会いたかったジンがいるもんね。
ハンゾー以外にも、ゴンのために集まった人々と共に病院から移動してついに到着。
滝のように涙と鼻水を流すモラウが、閉め切った扉を音を立てて勢いよく開けた。
「レオリオ!!」
「ゴンン!!うオオおをちくしょオオオ心配したぞ!!!!!」
ハンターたちの大きな拍手に包まれて、レオリオとゴンの再会のハグを微笑ましく見つめる。
背後から低い声がかかって、鼻をすする大きな身体を見上げた。
「お前さん、なまえって言ったか。あんたのことはすでにキルアから聞いてるぜ。協力、感謝する」
「こちらこそ、ゴンとキルアのこといろいろとありがとうございました。でも私、本当に何もしていないので…みなさんが力を貸してくださったおかげです。あ、よかったらハンカチいります?」
「ん?あぁ、悪いな」
傍にいたビスケから、猫かぶってんじゃないわよと小さなツッコミが入ってきた。
ちらりと会場の壇上にいる会長候補たちを見ると、マイクを手にキラキラと笑みを張り付けている男とばちりと目が合う。
私もその場から、にこりと笑顔を返しておいた。
あーあ、見なきゃよかった。
「ジン…!?」
ゴンの声に、ヨオと小さく手を上げて困った表情のジンへ顔を向ける。
ゴンの当初の目的達成、親子感動の再会の瞬間である。
あぁ、もう…ついにこんなところまで来たんだな。
「なまえ、ジンだよ!」
「うん、よかったねって…ちょっと、ゴン!?」
ゴンはなぜか私の手を引っ張って、一目散に階段を降りて駆け寄っていく。
「ゴン、おまっ…!よりによって何でなまえを…!」
「ごめんなさい!オレのせいで…オレのせいでカイトが!女の子になっちゃったんだ!」
「?」
涙を流しながらカイトのことをしどろもどろに伝えるゴンに、ジンがあたふたしている。
周囲のハンターたちが驚く中、私はうしろで手を組んで頬をゆるめて見守っていた。
「オイなまえ、笑ってないで何とかしやがれ」
「なんでそこで私?まあ、いいや。ジンもゴンもいったん落ち着こうか。ゴンはジンの隣に座って、ハイ深呼吸ー。吸ってー吐いてー」
「スゥー、ハァー」
落ち着いたゴンがカイトのことを話し始めて、ジンが仲間に謝る時のルールをゴンに教える。
行けとゴンの背中を押すジンは、もうすっかり父親の顔をしていた。
「いってらっしゃい、ゴン。戻ってきたらジンともっと話しなね」
「おい」
「ホント?ジン…もっと話せる…?後で…」
「…ん〜難しいな」
「ジン〜?」
「いや、だってオレ忙しいし…」
外野から野次とブーイングが次々と飛んできて、キレたジンが帽子を脱ぎ捨てたところで、スピーカーから耳をつんざく声が響き渡る。
すっかり忘れてたけど、そういやまだ選挙の途中だったな。
パリストンにセリフを取られて丸眼鏡の下で表情を歪ませるチードルを、私は頬に手をついてため息を吐きながら眺める。
「あー、チードルかわいい…めっちゃ犬だ…」
「中身は全然キャラ固まってねーけどな」
あとで挨拶しに行って、あの肉球本物かどうか確かめさせてもらおう。
◇
「皆さん、13代会長のパリストンです!早速ですが、重大発表です!私パリストンは副会長にチードルさんを指名し!この場で会長を辞する事といたします!」
ま、記憶通りならそうなるわな。
十二支ん含め、驚愕するハンターたちの顔ぶりったらおかしなものはなかった。
そのまま会場を去るパリストンをチードルが追いかけて、それをさらに私が追う。
大きな扉の陰から対話する二人の様子をひっそりと伺っていると、しばらくして沈黙が流れた。
「そんなところで見てないで、こちらに出てきたらどうですか?なまえさん」
もう話はいいのかと言われたとおり出てみると、無駄に笑顔のパリストンと少し訝しげに振り向くチードルの姿が見えた。
「いやぁー、ホントに久しぶりですね!何年ぶりでしたっけ?今日の今日までなまえさんがこの世に存在していること、すっかり忘れてました!本っ当に申し訳ない!だってホラ、あの事故があったのって確か10年以上前じゃないですか?実に不幸な事故でしたね…左目はもう完全に回復したんですか?後遺症とかボク、心配だなぁ。何ならボクがオススメする医者をご紹介しましょうか!安心安全信頼の、それはもう腕の立つ誠実な人がいるんですよ!なんたってこのボクよりもね。あ、ここ笑うところですよ〜?」
「有望な医者なら間に合ってるんで、大丈夫です」
相変わらずペラペラとよく口の回る男だこと。
パリストンの前にいるチードルと視線が合い、彼女の手のひらの指先がこちらへ向く。
「あなたは確か→287期生のなまえさん」
「え!私のこと知ってるんですか!?」
「同胞の顔と名前を覚えるのハンターとして、ひいては十二支んとして当然でしょう?」
はー、さすがジン曰くモラリストかつマニュアリストのチードルさん。
丸帽子に緑の髪からのぞかせる犬のような耳と鼻、丸眼鏡を改めてまじまじと見る。
「好きです」
「…は?」
「私この会長選挙出席したら、チードルさんに投票するつもりだったんですよ!」
「それは、感謝します」
手を差し伸べると、若干困惑しながらも冷静に白い手を出して握手してくれた。
ヤバい、めっちゃぷにぷにしてる。
「いやぁ〜、微笑ましいですねェ。でもチードルさん、気をつけてくださいよ?こう見えてこの人、結構お年の方なんで。今年で50歳くらいでしたっけ?いやホント、昔から不気味なくらいお変わりなくて!うらやましい!」
はっはっはっ、残念だったなパリストン。
元の世界にいた時と合わせるともっと上だ。
「それにしても、今になってやっとハンターになったんですね。理由はやっぱアレですか?フラれたジンさんを探すため?健気だなァ。しかし、ジンさんの息子さんと一緒にこの選挙会場へ訪れるとは、さぞ胸が痛むでしょうに。心中お察しします…まあでも!歳の差が、歳の差ですし?若い女性が選ばれるのは、仕方のないことだと思いますよ!ホラ、元気出してくださいって!このボクのステキな笑顔でも見て!」
わずかに目を見開くチードルに、アイツの言うことは気にしないでくださいなと、ひらひらと手を振る。
「パリストン」
「はい!なんでしょう!」
「ネテロ会長が亡くなって、さびしいね」
そう言うと、パリストンの表情から笑顔が消える。
人から嫌われることに、憎まれることに幸せを感じるその感情は共感できないけど。
「なんでかなァ。あなたといるとどうも胸がざわつくんですよ」
「やだ、恋してる乙女みたいなこと言わないでよ」
フィンクスじゃあるまいし。
「冗談でもそういうこと言うの、やめてくれません?ボクがなまえさんに恋するだなんて、天地がひっくり返ってもありえませんので」
いや、わかっているけれども!
真顔で言われると、さすがにちょっと傷つくぞ!
「なまえさんボクはね、可能性を感じてるんですよ。ジンさんが目をかけている、あなたにね」
「なんのこっちゃ。私は私でいそがしいので、遊び相手なら他を探してください」
「そうそう、ミザイさんにはお気をつけください。長年可愛がってる同郷の彼らとは、まだサヨナラしたくないでしょう?」
十二支んメンバーの丑、犯罪ハンターミザイストム。
でも今最も気をつけるべきなのは、目の前にいる人物。
心底愉快そうに笑うパリストンに、負けじと私も笑みを浮かべる。
「うちの子たちのこと、舐めないでもらえます?」
「あはは!とんでもない!熟練ハンターですら迂闊に手を出さない、Aクラスの賞金首ですもんね!」
にこにことお互い笑い合い、静かに火花を散らす。
これだから苦手なんだ、この男は。
ハンター協会を退屈なものにしたら次は本気でおちょくると、会長となるチードルに釘を打ってからパリストンは去っていく。
キメラアントの繭のことは気がかりだけど、もはや私がどうこう出来る話じゃない。
チーグルに名前を呼ばれて、パリストンへ向けてとは違う笑顔で振り返る。
「さっきの話ですけれど」
「やだ、チーグルさん!拷問されても、うちの子たちのことはしゃべりませんので!絶対に!」
「…今、何の確証もなしに、あなたを問いただす事はしません。あくまで興味本位で聞くのだけれど、亥の、あの男のどこがいいの?」
「え?」
「なんだなまえ、まだいたのか」
思わぬ質問に瞬きしたあと、噂のジンが扉からひょっこりと顔を出す。
すっかり暴れたあとのようで、髪も服もボロボロとなっていた。
私はあごに手を当てて、背の高い無精髭の男を見上げる。
「うーん、初恋の人に顔が似てるとか」
「オイ、それ初耳なんだが」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「…私が首を突っ込むことでもないけれど、何だかよくわからないわ。あなたたちの関係」
「なまえとはガキん頃からの知り合いなんだよ。ただ、そんだけだ」
「そうそう、それだけ〜」
何か言いたそうなチードルに、眉尻を下げて笑いかける。
パリストンめ、よくも誤解を招くようなこと言ってくれやがりましたね。
「じゃあ、ジン。私もカイトのとこ行ってくるから」
「おう、顔見せてやれ。アイツもお前のこと会いたがってたぞ」
「ゴンとの約束、すっぽかしたら許さないんだからねー!」
「へーへー、わーってるって」
走りながら大きく手を振り、片手を上げるジンと呆然とするチードルに別れを告げてハンター協会本部をあとにした。
「…やっぱりよくわからない」
今まさに会長選挙が行われている会場へ近づくにつれて、耳に入ってきた演説の声に眉をひそめた。
「んだよ、なまえ。ウンコでも我慢してるような顔して」
「ハゲの人ってデリカシーないんですか?」
「オレはハゲてねェし、デリカシー云々はそっくりそのまま返すぜ」
「なまえ、行きたくないの?」
振り向きながら前を歩くゴンに、そんなことないよと手を振って笑いかける。
なんたってここには、ずっと会いたかったジンがいるもんね。
ハンゾー以外にも、ゴンのために集まった人々と共に病院から移動してついに到着。
滝のように涙と鼻水を流すモラウが、閉め切った扉を音を立てて勢いよく開けた。
「レオリオ!!」
「ゴンン!!うオオおをちくしょオオオ心配したぞ!!!!!」
ハンターたちの大きな拍手に包まれて、レオリオとゴンの再会のハグを微笑ましく見つめる。
背後から低い声がかかって、鼻をすする大きな身体を見上げた。
「お前さん、なまえって言ったか。あんたのことはすでにキルアから聞いてるぜ。協力、感謝する」
「こちらこそ、ゴンとキルアのこといろいろとありがとうございました。でも私、本当に何もしていないので…みなさんが力を貸してくださったおかげです。あ、よかったらハンカチいります?」
「ん?あぁ、悪いな」
傍にいたビスケから、猫かぶってんじゃないわよと小さなツッコミが入ってきた。
ちらりと会場の壇上にいる会長候補たちを見ると、マイクを手にキラキラと笑みを張り付けている男とばちりと目が合う。
私もその場から、にこりと笑顔を返しておいた。
あーあ、見なきゃよかった。
「ジン…!?」
ゴンの声に、ヨオと小さく手を上げて困った表情のジンへ顔を向ける。
ゴンの当初の目的達成、親子感動の再会の瞬間である。
あぁ、もう…ついにこんなところまで来たんだな。
「なまえ、ジンだよ!」
「うん、よかったねって…ちょっと、ゴン!?」
ゴンはなぜか私の手を引っ張って、一目散に階段を降りて駆け寄っていく。
「ゴン、おまっ…!よりによって何でなまえを…!」
「ごめんなさい!オレのせいで…オレのせいでカイトが!女の子になっちゃったんだ!」
「?」
涙を流しながらカイトのことをしどろもどろに伝えるゴンに、ジンがあたふたしている。
周囲のハンターたちが驚く中、私はうしろで手を組んで頬をゆるめて見守っていた。
「オイなまえ、笑ってないで何とかしやがれ」
「なんでそこで私?まあ、いいや。ジンもゴンもいったん落ち着こうか。ゴンはジンの隣に座って、ハイ深呼吸ー。吸ってー吐いてー」
「スゥー、ハァー」
落ち着いたゴンがカイトのことを話し始めて、ジンが仲間に謝る時のルールをゴンに教える。
行けとゴンの背中を押すジンは、もうすっかり父親の顔をしていた。
「いってらっしゃい、ゴン。戻ってきたらジンともっと話しなね」
「おい」
「ホント?ジン…もっと話せる…?後で…」
「…ん〜難しいな」
「ジン〜?」
「いや、だってオレ忙しいし…」
外野から野次とブーイングが次々と飛んできて、キレたジンが帽子を脱ぎ捨てたところで、スピーカーから耳をつんざく声が響き渡る。
すっかり忘れてたけど、そういやまだ選挙の途中だったな。
パリストンにセリフを取られて丸眼鏡の下で表情を歪ませるチードルを、私は頬に手をついてため息を吐きながら眺める。
「あー、チードルかわいい…めっちゃ犬だ…」
「中身は全然キャラ固まってねーけどな」
あとで挨拶しに行って、あの肉球本物かどうか確かめさせてもらおう。
◇
「皆さん、13代会長のパリストンです!早速ですが、重大発表です!私パリストンは副会長にチードルさんを指名し!この場で会長を辞する事といたします!」
ま、記憶通りならそうなるわな。
十二支ん含め、驚愕するハンターたちの顔ぶりったらおかしなものはなかった。
そのまま会場を去るパリストンをチードルが追いかけて、それをさらに私が追う。
大きな扉の陰から対話する二人の様子をひっそりと伺っていると、しばらくして沈黙が流れた。
「そんなところで見てないで、こちらに出てきたらどうですか?なまえさん」
もう話はいいのかと言われたとおり出てみると、無駄に笑顔のパリストンと少し訝しげに振り向くチードルの姿が見えた。
「いやぁー、ホントに久しぶりですね!何年ぶりでしたっけ?今日の今日までなまえさんがこの世に存在していること、すっかり忘れてました!本っ当に申し訳ない!だってホラ、あの事故があったのって確か10年以上前じゃないですか?実に不幸な事故でしたね…左目はもう完全に回復したんですか?後遺症とかボク、心配だなぁ。何ならボクがオススメする医者をご紹介しましょうか!安心安全信頼の、それはもう腕の立つ誠実な人がいるんですよ!なんたってこのボクよりもね。あ、ここ笑うところですよ〜?」
「有望な医者なら間に合ってるんで、大丈夫です」
相変わらずペラペラとよく口の回る男だこと。
パリストンの前にいるチードルと視線が合い、彼女の手のひらの指先がこちらへ向く。
「あなたは確か→287期生のなまえさん」
「え!私のこと知ってるんですか!?」
「同胞の顔と名前を覚えるのハンターとして、ひいては十二支んとして当然でしょう?」
はー、さすがジン曰くモラリストかつマニュアリストのチードルさん。
丸帽子に緑の髪からのぞかせる犬のような耳と鼻、丸眼鏡を改めてまじまじと見る。
「好きです」
「…は?」
「私この会長選挙出席したら、チードルさんに投票するつもりだったんですよ!」
「それは、感謝します」
手を差し伸べると、若干困惑しながらも冷静に白い手を出して握手してくれた。
ヤバい、めっちゃぷにぷにしてる。
「いやぁ〜、微笑ましいですねェ。でもチードルさん、気をつけてくださいよ?こう見えてこの人、結構お年の方なんで。今年で50歳くらいでしたっけ?いやホント、昔から不気味なくらいお変わりなくて!うらやましい!」
はっはっはっ、残念だったなパリストン。
元の世界にいた時と合わせるともっと上だ。
「それにしても、今になってやっとハンターになったんですね。理由はやっぱアレですか?フラれたジンさんを探すため?健気だなァ。しかし、ジンさんの息子さんと一緒にこの選挙会場へ訪れるとは、さぞ胸が痛むでしょうに。心中お察しします…まあでも!歳の差が、歳の差ですし?若い女性が選ばれるのは、仕方のないことだと思いますよ!ホラ、元気出してくださいって!このボクのステキな笑顔でも見て!」
わずかに目を見開くチードルに、アイツの言うことは気にしないでくださいなと、ひらひらと手を振る。
「パリストン」
「はい!なんでしょう!」
「ネテロ会長が亡くなって、さびしいね」
そう言うと、パリストンの表情から笑顔が消える。
人から嫌われることに、憎まれることに幸せを感じるその感情は共感できないけど。
「なんでかなァ。あなたといるとどうも胸がざわつくんですよ」
「やだ、恋してる乙女みたいなこと言わないでよ」
フィンクスじゃあるまいし。
「冗談でもそういうこと言うの、やめてくれません?ボクがなまえさんに恋するだなんて、天地がひっくり返ってもありえませんので」
いや、わかっているけれども!
真顔で言われると、さすがにちょっと傷つくぞ!
「なまえさんボクはね、可能性を感じてるんですよ。ジンさんが目をかけている、あなたにね」
「なんのこっちゃ。私は私でいそがしいので、遊び相手なら他を探してください」
「そうそう、ミザイさんにはお気をつけください。長年可愛がってる同郷の彼らとは、まだサヨナラしたくないでしょう?」
十二支んメンバーの丑、犯罪ハンターミザイストム。
でも今最も気をつけるべきなのは、目の前にいる人物。
心底愉快そうに笑うパリストンに、負けじと私も笑みを浮かべる。
「うちの子たちのこと、舐めないでもらえます?」
「あはは!とんでもない!熟練ハンターですら迂闊に手を出さない、Aクラスの賞金首ですもんね!」
にこにことお互い笑い合い、静かに火花を散らす。
これだから苦手なんだ、この男は。
ハンター協会を退屈なものにしたら次は本気でおちょくると、会長となるチードルに釘を打ってからパリストンは去っていく。
キメラアントの繭のことは気がかりだけど、もはや私がどうこう出来る話じゃない。
チーグルに名前を呼ばれて、パリストンへ向けてとは違う笑顔で振り返る。
「さっきの話ですけれど」
「やだ、チーグルさん!拷問されても、うちの子たちのことはしゃべりませんので!絶対に!」
「…今、何の確証もなしに、あなたを問いただす事はしません。あくまで興味本位で聞くのだけれど、亥の、あの男のどこがいいの?」
「え?」
「なんだなまえ、まだいたのか」
思わぬ質問に瞬きしたあと、噂のジンが扉からひょっこりと顔を出す。
すっかり暴れたあとのようで、髪も服もボロボロとなっていた。
私はあごに手を当てて、背の高い無精髭の男を見上げる。
「うーん、初恋の人に顔が似てるとか」
「オイ、それ初耳なんだが」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「…私が首を突っ込むことでもないけれど、何だかよくわからないわ。あなたたちの関係」
「なまえとはガキん頃からの知り合いなんだよ。ただ、そんだけだ」
「そうそう、それだけ〜」
何か言いたそうなチードルに、眉尻を下げて笑いかける。
パリストンめ、よくも誤解を招くようなこと言ってくれやがりましたね。
「じゃあ、ジン。私もカイトのとこ行ってくるから」
「おう、顔見せてやれ。アイツもお前のこと会いたがってたぞ」
「ゴンとの約束、すっぽかしたら許さないんだからねー!」
「へーへー、わーってるって」
走りながら大きく手を振り、片手を上げるジンと呆然とするチードルに別れを告げてハンター協会本部をあとにした。
「…やっぱりよくわからない」