会長選挙・アルカ編
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「中に人は?」
「ツボネとカナリアのみだ。入り口は入ってすぐ施錠していい」
「アマネ、私はここで降りるから」
「なまえ?」
ハンター協会本部の目と鼻の先にある国立病院。
その駐車場に建てられたゴンの病室を前に、停車したドアを開ける。
「ゴンを治すのに、部外者は立ち入らない方がいいでしょ?」
「なまえ、それ本気で言ってるなら怒るぞ」
「機密保持のためだって。そこの屋上で警備しておくから。あとは頼んだぞ、お兄ちゃん」
ムッとする銀髪をくしゃくしゃとなでた後、眠るアルカもひとなでして車を離れる。
傍に執事がいるとはいえ、兄妹水入らずのところを邪魔しちゃ悪いじゃない。
「おう、久しぶりだな。なまえ」
国立病院の屋上へ続く階段を上り、扉を開けて聞こえた懐かしい声と姿に目を見開く。
「ハンゾー!うわー、私のことよく覚えてたね」
「アホか。最終試験であれだけ無鉄砲な事しといて、そう簡単に忘れる奴がいるかってんだ。ま、オレとしてはチビ助のお前の方が見慣れてるけどな」
「いてっ」
人差し指で額を軽く小突かれて、たしかにとハンター試験の思い出を懐かしみながら笑う。
「それにしても、みんなゴンのこと心配して集まったんだね」
見知った顔にくわえて、一方的に知ってるナックルやパームたちを遠目に眺めてホッと一息つく。
ふと、離れた場所にいるセンリツと目が合って、複雑そうな表情の彼女に眉を下げて微笑む。
敵だと思ってるだろうし、ヨークシンではろくに自己紹介もできなかったからな。
ズンズンと、眉をつり上げた少女がフリルのスカートを揺らしながら近づいて来た。
知り合いかと聞かれたのでゴンとキルアの師匠だと伝えると、ハンゾーは半信半疑な様子でビスケのことを見下ろしていた。
「や、ビスケ。G・Iぶり」
「ん、相変わらずムダに元気…じゃなさそうね。ま、あの子があんな状況じゃあたりまえか」
「安心して、ゴンならもう大丈夫だから」
「ゴンもそうだけど、キルアのこともよ」
まつ毛の長い大きな瞳と目を合わせて、首を傾ける。
「あの子、蟻退治の前に修行つけてるとき予想外に何の成果も出なくてね。それで何かきっかけでもあればと思って、あんたを呼ぼうとしたんだけど、キルアから強く反対されたんだわさ。自分自身の問題に、いつまでも面倒かけられないってね。そんなキルアが、今回ばかりはなりふり構わずにあんたを頼ったってわけ。詳しくは聞かないけど、ここまで来るのに相当ピンチだったんじゃない?状況的にも、精神的にもね」
柵に手置き、中の見えないゴンの病室を見下ろす。
すべてはゴンを、アルカを助けるため。
キルアはずっと一人で苦しみ抱え込んでいた。
パンパンッと、手の平を叩く音に顔を上げてビスケを見る。
「なーに、情けない顔してんの。キルアからよっほど信頼されてるってことに変わりはないんだからさ。ホラ、わかったなら最後まで油断せずに敵に警戒する!」
「うん…ビスケ、教えてくれてありがとね」
「今回は特別にタダでいいわよ。あたしも歳ね。あんたにまでお節介焼くようになるなんて」
「わ〜ん、ビスケちゃま〜」
「ええい!警戒しろって言ってんのに、抱きつくんじゃないわさ!この女狐!泥棒猫!」
「お前ら仲良いのか悪いのか、どっちなんだよ」
しばらくして、ナニカの力によりゴンは元の姿へと回復、駐車場からみんなのいる病棟へと移動した。
私はカナリアに呼ばれて、すでに不要となったゴン専用の病室の中へと入り歩く。
両サイドにツボネとアマネが控えているベンチで、疲れ果てて眠るアルカを膝に乗せてキルアは顔を伏せていた。
「まだゴンと会ってないんでしょ?アルカのこと、見ててあげるから」
ふるふるとうつむいたまま首を横に振られたので、キルアの隣にそっと腰かける。
なまえ、と消え入りそうな声を耳にして影を落とした顔をじっと見つめる。
「オレ、ずっとイル兄が怖くて、逆らえなくて、言いなりになる自分が、すごい嫌で」
ぽつりぽつりと紡がれる言葉に、静かに耳を傾ける。
「オレだけじゃなく、今度はナニカに無理矢理嫌なこと命令されたらって考えたら、すごく怖くなって。なまえのこと、本当は危険な目に合わせたくなかったのに、傷ついてほしくなかったのに。不安になって。なまえがいれば、何とかなるかもって……オレのせいでなまえを巻き込んだ」
ああそうか、やっぱりキルアは─。
座ったまま腕を伸ばして、キルアの頭を引き寄せる。
震える身体を落ち着かせるようになでながら、瞼を閉じる。
「私、本当は知ってたんだ。ゴンとキルアが危険な目に遭ってること。でも、助けに行かなかった。知らないフリをして、ヨークシンの時と同じように平気な顔してクロロたちと一緒にいた。私は、そんな最低な人間だよ」
これは紛れもない事実。
嫌われてもいい、意気消沈してるキルアを奮い立たせられるなら。
身体を離して眉をひそめるキルアと目が合うと、大げさにため息を吐かれてきょとんと瞬きをする。
「平気な顔、してないんだけど」
「うっ」
「それになまえ、ヨークシンでも助けようとしてくれたし、今回も呼んだらすぐに駆けつけてくれたろ?そんなこと言われても、全然説得力ないんだけど」
「うぐぐ…」
「あとな、なまえ。たとえ本人でもなまえを悪く言う奴は、オレが許さないからな。覚えとけよ」
ビシッと人差し指を突きつけて怒るキルアを見て、目を細めて小さな身体へと腕を伸ばす。
「あ〜もう、やっぱりキルア好き好き。大好き」
「あー、はいはい。知ってるから落ち着けって」
「うっそキルア、対応が大人になってる…!?」
「ま、なまえと別れてからいろいろあったからな。話したいこと山ほどあるし、ゴンのことも含めて落ち着いたらまたゆっくり話すよ」
なんだか、いつまでも小さいと思ってた親戚の子がいつの間にか大きくなって結婚報告を聞いた時のような、寂しい感情。
子供の成長はあっという間だ…。
「なに落ち込んでるんだよ」
「結局、私はあの頃のままで…ここまでついて来ただけで、キルアのために何も出来なかった」
なんだそんなことかと、あっけらかんとするキルアをジト目で見つめて頬を膨らませる。
ちょっと、私としては重要なことなんですけど。
「そんなのいいんだよ。ここまでついて来てくれて、なまえがそばにいてくれて、それだけでよかったんだ。ありがとな、なまえ」
顔を上げて笑うキルアに思わず泣きそうになって、顔を隠すように再び抱きしめる。
キルアはやっぱり、誰よりも傷ついていて誰よりもやさしい子だよ。
気が済むまでそうしたあと、アルカの様子を見るがまだ起きる気配はない。
「なまえ、ゴンと一緒にレオリオのとこに行ってやってくれ」
「イルミのことは?」
「もう大丈夫。だって、わかったんだ…立場が違っても、離れていても一人じゃないって。アルカはオレが守るよ」
曇りのない瞳と目合わせて、うなずく。
椅子から立ち上がり、瞳を閉じたままのアルカの額をそっとなでてから病室を出た。
「ツボネとカナリアのみだ。入り口は入ってすぐ施錠していい」
「アマネ、私はここで降りるから」
「なまえ?」
ハンター協会本部の目と鼻の先にある国立病院。
その駐車場に建てられたゴンの病室を前に、停車したドアを開ける。
「ゴンを治すのに、部外者は立ち入らない方がいいでしょ?」
「なまえ、それ本気で言ってるなら怒るぞ」
「機密保持のためだって。そこの屋上で警備しておくから。あとは頼んだぞ、お兄ちゃん」
ムッとする銀髪をくしゃくしゃとなでた後、眠るアルカもひとなでして車を離れる。
傍に執事がいるとはいえ、兄妹水入らずのところを邪魔しちゃ悪いじゃない。
「おう、久しぶりだな。なまえ」
国立病院の屋上へ続く階段を上り、扉を開けて聞こえた懐かしい声と姿に目を見開く。
「ハンゾー!うわー、私のことよく覚えてたね」
「アホか。最終試験であれだけ無鉄砲な事しといて、そう簡単に忘れる奴がいるかってんだ。ま、オレとしてはチビ助のお前の方が見慣れてるけどな」
「いてっ」
人差し指で額を軽く小突かれて、たしかにとハンター試験の思い出を懐かしみながら笑う。
「それにしても、みんなゴンのこと心配して集まったんだね」
見知った顔にくわえて、一方的に知ってるナックルやパームたちを遠目に眺めてホッと一息つく。
ふと、離れた場所にいるセンリツと目が合って、複雑そうな表情の彼女に眉を下げて微笑む。
敵だと思ってるだろうし、ヨークシンではろくに自己紹介もできなかったからな。
ズンズンと、眉をつり上げた少女がフリルのスカートを揺らしながら近づいて来た。
知り合いかと聞かれたのでゴンとキルアの師匠だと伝えると、ハンゾーは半信半疑な様子でビスケのことを見下ろしていた。
「や、ビスケ。G・Iぶり」
「ん、相変わらずムダに元気…じゃなさそうね。ま、あの子があんな状況じゃあたりまえか」
「安心して、ゴンならもう大丈夫だから」
「ゴンもそうだけど、キルアのこともよ」
まつ毛の長い大きな瞳と目を合わせて、首を傾ける。
「あの子、蟻退治の前に修行つけてるとき予想外に何の成果も出なくてね。それで何かきっかけでもあればと思って、あんたを呼ぼうとしたんだけど、キルアから強く反対されたんだわさ。自分自身の問題に、いつまでも面倒かけられないってね。そんなキルアが、今回ばかりはなりふり構わずにあんたを頼ったってわけ。詳しくは聞かないけど、ここまで来るのに相当ピンチだったんじゃない?状況的にも、精神的にもね」
柵に手置き、中の見えないゴンの病室を見下ろす。
すべてはゴンを、アルカを助けるため。
キルアはずっと一人で苦しみ抱え込んでいた。
パンパンッと、手の平を叩く音に顔を上げてビスケを見る。
「なーに、情けない顔してんの。キルアからよっほど信頼されてるってことに変わりはないんだからさ。ホラ、わかったなら最後まで油断せずに敵に警戒する!」
「うん…ビスケ、教えてくれてありがとね」
「今回は特別にタダでいいわよ。あたしも歳ね。あんたにまでお節介焼くようになるなんて」
「わ〜ん、ビスケちゃま〜」
「ええい!警戒しろって言ってんのに、抱きつくんじゃないわさ!この女狐!泥棒猫!」
「お前ら仲良いのか悪いのか、どっちなんだよ」
しばらくして、ナニカの力によりゴンは元の姿へと回復、駐車場からみんなのいる病棟へと移動した。
私はカナリアに呼ばれて、すでに不要となったゴン専用の病室の中へと入り歩く。
両サイドにツボネとアマネが控えているベンチで、疲れ果てて眠るアルカを膝に乗せてキルアは顔を伏せていた。
「まだゴンと会ってないんでしょ?アルカのこと、見ててあげるから」
ふるふるとうつむいたまま首を横に振られたので、キルアの隣にそっと腰かける。
なまえ、と消え入りそうな声を耳にして影を落とした顔をじっと見つめる。
「オレ、ずっとイル兄が怖くて、逆らえなくて、言いなりになる自分が、すごい嫌で」
ぽつりぽつりと紡がれる言葉に、静かに耳を傾ける。
「オレだけじゃなく、今度はナニカに無理矢理嫌なこと命令されたらって考えたら、すごく怖くなって。なまえのこと、本当は危険な目に合わせたくなかったのに、傷ついてほしくなかったのに。不安になって。なまえがいれば、何とかなるかもって……オレのせいでなまえを巻き込んだ」
ああそうか、やっぱりキルアは─。
座ったまま腕を伸ばして、キルアの頭を引き寄せる。
震える身体を落ち着かせるようになでながら、瞼を閉じる。
「私、本当は知ってたんだ。ゴンとキルアが危険な目に遭ってること。でも、助けに行かなかった。知らないフリをして、ヨークシンの時と同じように平気な顔してクロロたちと一緒にいた。私は、そんな最低な人間だよ」
これは紛れもない事実。
嫌われてもいい、意気消沈してるキルアを奮い立たせられるなら。
身体を離して眉をひそめるキルアと目が合うと、大げさにため息を吐かれてきょとんと瞬きをする。
「平気な顔、してないんだけど」
「うっ」
「それになまえ、ヨークシンでも助けようとしてくれたし、今回も呼んだらすぐに駆けつけてくれたろ?そんなこと言われても、全然説得力ないんだけど」
「うぐぐ…」
「あとな、なまえ。たとえ本人でもなまえを悪く言う奴は、オレが許さないからな。覚えとけよ」
ビシッと人差し指を突きつけて怒るキルアを見て、目を細めて小さな身体へと腕を伸ばす。
「あ〜もう、やっぱりキルア好き好き。大好き」
「あー、はいはい。知ってるから落ち着けって」
「うっそキルア、対応が大人になってる…!?」
「ま、なまえと別れてからいろいろあったからな。話したいこと山ほどあるし、ゴンのことも含めて落ち着いたらまたゆっくり話すよ」
なんだか、いつまでも小さいと思ってた親戚の子がいつの間にか大きくなって結婚報告を聞いた時のような、寂しい感情。
子供の成長はあっという間だ…。
「なに落ち込んでるんだよ」
「結局、私はあの頃のままで…ここまでついて来ただけで、キルアのために何も出来なかった」
なんだそんなことかと、あっけらかんとするキルアをジト目で見つめて頬を膨らませる。
ちょっと、私としては重要なことなんですけど。
「そんなのいいんだよ。ここまでついて来てくれて、なまえがそばにいてくれて、それだけでよかったんだ。ありがとな、なまえ」
顔を上げて笑うキルアに思わず泣きそうになって、顔を隠すように再び抱きしめる。
キルアはやっぱり、誰よりも傷ついていて誰よりもやさしい子だよ。
気が済むまでそうしたあと、アルカの様子を見るがまだ起きる気配はない。
「なまえ、ゴンと一緒にレオリオのとこに行ってやってくれ」
「イルミのことは?」
「もう大丈夫。だって、わかったんだ…立場が違っても、離れていても一人じゃないって。アルカはオレが守るよ」
曇りのない瞳と目合わせて、うなずく。
椅子から立ち上がり、瞳を閉じたままのアルカの額をそっとなでてから病室を出た。