キルア視点

「57歳！？」
「ババァじゃん！」

問答無用でオレをぶっ飛ばしたビスケット＝クルーガーと名乗る女は、こっちの意向を無視してコーチすると言い出した。
外見年齢詐欺とか、ハンター試験のなまえかよ。
そういやなまえって一体何歳なんだと昔の記憶を思い出そうとすると、頭の奥が一瞬だけチクリと痛んだ。

「なんか、なまえみたいだね」
「だな」
「なまえって今言ったけど、もしかしてあの女狐？」

女狐って…。
ぷるぷると白手袋の拳を震わせて、鬼のような形相になったのを見てあとずさる。

「思い出しても腹立つ〜！なまえのやつあたしのブラッドルビーちゃんを奪うばかりか、若くていい男を侍らせてたんだわよ！？」
「後半はただの嫉妬じゃん」

またぶっ飛ばされて星が見えた。
もしかして別人じゃないかなと言うゴンに、オイオイと頬に汗をかく。
こいつ、なまえが旅団と関係持ってるの忘れちゃねーだろうな。

「で、あんたたちなまえと知り合い？」
「友達だよ！」
「そぉお。まさか、あのお節介焼きの泥棒猫から念も教わったわけ？」
「(泥棒猫になってる…)」
「いや、師匠はウイングさんって言う人だよ」
「そーだ！オレたちにはちゃんと師匠がいるからいいよ！」
「ウイングって、あのメガネをかけた寝グセボウヤでしょ？知ってるも何も、あたしの教え子だわよ。ウイングは」

世間は狭いわねェなんてつぶやきに、目を丸くする。
なまえとすげー仲悪そうなのは気になるところだけど、似た者同士だから同属嫌悪っやつ？
いや、全然似てねーか。
なまえの方が…って、何考えてるんだオレは。

そんなこんなで、ビスケから念を教わることになり修行すること3ヶ月。
ハンター試験をソッコーで合格してG・Iに戻ってくると、二人から獲得した呪文カードを見てほしいと言われる。
こんだけいっぱいあるんだからガンガン使っていこうぜと、ゴンのバインダーで今まで何人くらい遭ったかをチェックする。

「おい、ゴン…一体いつ、こいつに遭ったんだ？」
「え？」

クロロ＝ルシルフルの名前に、嫌な汗がにじみ出る。
緊張感が走る中ゴンと真剣な顔して話し合っていると、自分もまぜろとビスケに二人まとめて吹っ飛ばされた。
やっぱなまえとは全然ちげーわ。
ビスケから除念の話を聞いて、考えられるのはやっぱりクロロが念をはずしてこのゲームの中にいるってこと。
何の目的かはわかんねーけど。
もう一回現実世界に行って、クラピカにケータイで連絡する。

「それはないな」

クロロの念がはずされた場合、クラピカはそれを知ることができるらしい。
能力を決める時にその状況を予想してたのかと聞いたら、何当たり前のことを聞いてんだと返ってきてカチンとくる。
やなヤツ。

「ちなみに、そのゲームの中になまえはいるのか？」
「いないよ。全プレイヤー把握できるわけじゃないけど、少なくともリストに名前はなかった」
「そうか」

もちろん、いまだすれ違ってなくてリストに載っていないだけっていう可能性はある。
もしかして、クロロの名前でなまえがプレイしてたり…ってさすがにそれは考えすぎか。
それこそ何の目的かわかんねー話だし、なまえもまだ旅団のやつらと一緒にいるとは限らないしな。
礼を言われてクラピカとの通話を終える。
ケータイを見つめたまま少し考えて電話をかけるが、やっぱりつながらなかった。
べつに、ゴンと一緒で十分楽しいけど。
なまえもいたらなと、どうしようもないことを考えて電源を切り再びG・Iに戻っていった。