ヨークシン編
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ゴンとキルアを連れて、パクと一緒にリンゴーン空港へ向かう。
なぜ逃げないのかと聞いて返ってきた子供たちの言葉に、ヒールの音が止まった。
「パク」
冷たい雨が頬を濡らす。
私は裏切り者だ。
非難でも恨み言でも、なんでも聞き入れるつもりだった。
早く行こうと、先を歩く二人から声がする。
「そうね。早く、団長を取り戻しましょう」
微笑んだパクはそれ以上、何も言わない。
「どうして、クラピカはなまえも呼んだのかな」
歩きながらうしろを向くゴンと目が合うが、私は目を閉じて首を横に振る。
たぶんだけど、とポケットに手を入れたキルアが口を開いた。
「小細工を確認するためじゃねーの?万が一にそなえて。オレらが気づかないとこで何かしてても、旅団と関わりの深いなまえならわかるだろうし」
そっか、とゴンはつぶやく。
時折、黙って隣を歩くパクに視線を向けるが、目が合うことはなかった。
リンゴーン空港に到着すると、アジトから抜け出して来たヒソカが待ち構えていて肩を落とす。
飛行船内でプロペラ機の音が響く中、名前を呼ばれて目線だけ動かす。
トランプをもてあそび、クロロとの決闘を目前にして一人たのしそうにヒソカは笑っていた。
叶わないとはまだ知らずに。
「もしボクがクロロを殺したらどうする?」
どこかで聞いたことのあるセリフに、未来の記憶を思い出す。
「殺されない。クロロは勝つよ」
夜空が見える冷たいガラスに手を置いて、反射する自分の姿に眉をひそめた。
5人を乗せた飛行船は、断崖絶壁の荒野へとたどり着く。
風が止むことなく吹き荒れて、クラピカの横で拘束されているクロロを遠目に見る。
「なまえ、クラピカが代われって」
キルアから直接ケータイを受け取る。
「胸にケータイをあてろ」
向こう側で、センリツが確認している。
そういや、前に同じ車両に乗っていたから会うのは二度目か。
私は再び耳にケータイを当てる。
「人質交換がおわったあと、クロロと会話したらアウト?」
「会話、接触を禁じているのは旅団だけだ」
どうして、と素直に浮かんだ疑問を投げかける。
「なまえは旅団ではない。それだけだ」
通話が切れて、人質交換が開始される。
ちらりと振り向いたキルアと目が合い、眉を下げて笑みを浮かべる。
ほら、キルアが戻る居場所はあっちだよ。
バイバイ。
「ただいま」
「おかえり」
傷だらけの顔に手を伸ばすと、クロロの唇がきれいな弧を描く。
ヒール音とともに、パクは無言で飛行船に向かって歩いていく。
その背中を見つめていると、遠くから無事をよろこぶ笑い声が聞こえる。
うん、4人はそうやって笑い合ってるのが一番だ。
むじゃきな声で名前を呼ばれて、思わず弾けるように振り返った。
「なまえ!またね!」
大きく手を振るゴンの横にいるキルア、レオリオ、クラピカの顔を見る。
まぶたの上に手の甲をあてたあと、彼らに手を振り返した。
飛行船内に入ると、パクはガラスからヒソカと対峙しているクロロを見つめていた。
「ねえ、パク」
「何、なまえ?」
「パクの占いに誇りか、裏切りかってあったよね。選ぶのはどちらか片方だけだよ」
黙すのが裏切りか、話すのが裏切りか。
パクは両方ともを選んで、その結果代償を受け取ってしまう。
きっとそれは、私がいようとも変わらない。
「死んじゃ嫌だよ、パク」
「ふふ、やっぱりなまえには何でもお見通しなのね」
目を閉じて笑うパクは、抱きついた私の頭をやさしくなでる。
今では逆転した身長、不安げな顔をした少女はもういない。
「たまに、あの頃の思い出を今でも夢に見るの。世界で初めて自分を気にかけてくれる人に、自分を見てくれる人に出会って、仲間ができた日々のことを。とっても楽しかったわ。だから、笑って?なまえ」
またね、と最後に笑顔を見せてパクが離れていく。
出会ってから今まで、私の記憶を読む事をパクはしなかった。
もし記憶を読んでいたら、運命は変わっていただろうか。
その答えを知る者は、もうどこにもいない。
機械音とともに砂埃を上げて、ヒソカとパクを乗せた飛行船は飛び立つ。
冷たい風に逆十字のコートがなびいて、クロロの指の背が私の頬を伝う雫をぬぐった。
空が少しずつ明るくなり、陽の光に照らされる。
「東…か」
隣に立つクロロから、手のひらが差し出される。
黒の瞳と視線が交わり、ゆっくりと頷いた。
夜明けの太陽が、祈りを結ぶ影を伸ばした。
さよなら、ヨークシン。
さよなら、幻が踊る街。
なぜ逃げないのかと聞いて返ってきた子供たちの言葉に、ヒールの音が止まった。
「パク」
冷たい雨が頬を濡らす。
私は裏切り者だ。
非難でも恨み言でも、なんでも聞き入れるつもりだった。
早く行こうと、先を歩く二人から声がする。
「そうね。早く、団長を取り戻しましょう」
微笑んだパクはそれ以上、何も言わない。
「どうして、クラピカはなまえも呼んだのかな」
歩きながらうしろを向くゴンと目が合うが、私は目を閉じて首を横に振る。
たぶんだけど、とポケットに手を入れたキルアが口を開いた。
「小細工を確認するためじゃねーの?万が一にそなえて。オレらが気づかないとこで何かしてても、旅団と関わりの深いなまえならわかるだろうし」
そっか、とゴンはつぶやく。
時折、黙って隣を歩くパクに視線を向けるが、目が合うことはなかった。
リンゴーン空港に到着すると、アジトから抜け出して来たヒソカが待ち構えていて肩を落とす。
飛行船内でプロペラ機の音が響く中、名前を呼ばれて目線だけ動かす。
トランプをもてあそび、クロロとの決闘を目前にして一人たのしそうにヒソカは笑っていた。
叶わないとはまだ知らずに。
「もしボクがクロロを殺したらどうする?」
どこかで聞いたことのあるセリフに、未来の記憶を思い出す。
「殺されない。クロロは勝つよ」
夜空が見える冷たいガラスに手を置いて、反射する自分の姿に眉をひそめた。
5人を乗せた飛行船は、断崖絶壁の荒野へとたどり着く。
風が止むことなく吹き荒れて、クラピカの横で拘束されているクロロを遠目に見る。
「なまえ、クラピカが代われって」
キルアから直接ケータイを受け取る。
「胸にケータイをあてろ」
向こう側で、センリツが確認している。
そういや、前に同じ車両に乗っていたから会うのは二度目か。
私は再び耳にケータイを当てる。
「人質交換がおわったあと、クロロと会話したらアウト?」
「会話、接触を禁じているのは旅団だけだ」
どうして、と素直に浮かんだ疑問を投げかける。
「なまえは旅団ではない。それだけだ」
通話が切れて、人質交換が開始される。
ちらりと振り向いたキルアと目が合い、眉を下げて笑みを浮かべる。
ほら、キルアが戻る居場所はあっちだよ。
バイバイ。
「ただいま」
「おかえり」
傷だらけの顔に手を伸ばすと、クロロの唇がきれいな弧を描く。
ヒール音とともに、パクは無言で飛行船に向かって歩いていく。
その背中を見つめていると、遠くから無事をよろこぶ笑い声が聞こえる。
うん、4人はそうやって笑い合ってるのが一番だ。
むじゃきな声で名前を呼ばれて、思わず弾けるように振り返った。
「なまえ!またね!」
大きく手を振るゴンの横にいるキルア、レオリオ、クラピカの顔を見る。
まぶたの上に手の甲をあてたあと、彼らに手を振り返した。
飛行船内に入ると、パクはガラスからヒソカと対峙しているクロロを見つめていた。
「ねえ、パク」
「何、なまえ?」
「パクの占いに誇りか、裏切りかってあったよね。選ぶのはどちらか片方だけだよ」
黙すのが裏切りか、話すのが裏切りか。
パクは両方ともを選んで、その結果代償を受け取ってしまう。
きっとそれは、私がいようとも変わらない。
「死んじゃ嫌だよ、パク」
「ふふ、やっぱりなまえには何でもお見通しなのね」
目を閉じて笑うパクは、抱きついた私の頭をやさしくなでる。
今では逆転した身長、不安げな顔をした少女はもういない。
「たまに、あの頃の思い出を今でも夢に見るの。世界で初めて自分を気にかけてくれる人に、自分を見てくれる人に出会って、仲間ができた日々のことを。とっても楽しかったわ。だから、笑って?なまえ」
またね、と最後に笑顔を見せてパクが離れていく。
出会ってから今まで、私の記憶を読む事をパクはしなかった。
もし記憶を読んでいたら、運命は変わっていただろうか。
その答えを知る者は、もうどこにもいない。
機械音とともに砂埃を上げて、ヒソカとパクを乗せた飛行船は飛び立つ。
冷たい風に逆十字のコートがなびいて、クロロの指の背が私の頬を伝う雫をぬぐった。
空が少しずつ明るくなり、陽の光に照らされる。
「東…か」
隣に立つクロロから、手のひらが差し出される。
黒の瞳と視線が交わり、ゆっくりと頷いた。
夜明けの太陽が、祈りを結ぶ影を伸ばした。
さよなら、ヨークシン。
さよなら、幻が踊る街。