ヨークシン編
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ホテルのラウンジのソファに座り、コーヒーカップを手に取る。
「鎖野郎ってクラピカのことでしょ」
そう告げると、眉をつり上げた鋭い視線が突き刺さる。
ずいぶんとやせちゃったな、クラピカ。
「…だとしたら何だ。私を捕らえにきたのか」
「まさか。クラピカのこと売ったりしないよ」
「信用ならないな。旅団と行動を共にするかぎり、貴様は私の敵だ」
キルアが周囲の気配を探っている。
尾行とかされてないから、安心してほしい。
いま全員アジトにいて、本拠地に戻るか話し合いをしている。
キルアと目が合ったが、ふいっと顔をそらされた。
なんか、ハンター試験の頃を思い出すな。
「敵じゃないよ」
聞こえた声は、隣からだった。
ゴンの曇りのない目は、クラピカを見ている。
「なまえは仲間や友達を、平気で裏切るような人じゃない」
「おいゴン。そう言いたい気持ちもわかるが、まだわかんねーだろ?こう言っちゃなんだが、ウソついてたり演技かも知れねーし…」
「じゃあさ、なんで一人でオレたちに会いに来たの?」
どーん、とゴンは人差し指を立てる。
私はカップ片手に、会話の行く末を見守る。
「べつに、ゴンの肩持つわけじゃないけどさ」
キルアは舐めてたウサギの棒キャンディを、クラピカの方へと向ける。
「なまえの話がウソだったら、今ごろとっくに見つかってるぜ。旅団のやつら、血眼になって鎖野郎のこと探してるから。オレたちも、ノブナガって男から命がけで逃げてきたわけだし。今こうやってのん気に話してる状況が、証拠になるんじゃねーの?」
「仮にそうだとしても、私がこのまま旅団の元に帰すとでも思ったか?」
ビリビリと、場に緊張の空気が走る。
旅団のことになると、すぐまわりが見えなくなるんだよなクラピカ。
「そうやって冷静さを欠いて、仲間を危険にさらすつもり?」
「なんだと…!」
「おい、やめろクラピカ」
すかさず、クラピカの隣にいるレオリオが肩をつかんで止める。
そう、誰かがこうやってそばにいてあげないと。
「レオリオ、ムチャするクラピカのこと止めてあげてね」
「それは一向に構わねェけどよ…」
「クラピカの気持ち、私にもわかるよ」
「ふざけるな!貴様に何がわかる…ッ!」
それはこの世にただ独りという、本当の孤独。
あの日、私は世界に捨てられてすべてを失った。
「私はね、もう誰にも死んでほしくないんだよ」
ソーサーの上にカップを置き、ふちを指でなぞる。
目を閉じると、ゴミ山で駆け回る少年少女たちの姿が鮮やかに蘇る。
もっと一緒に笑っていたかったな。
「旅団を止めようよ、なまえ」
まぶたを開けると、まっすぐな強い瞳と視線が交わる。
ゴンはいつだって本気だ。
立ち上がったキルアが、ちょっとこいとゴンを連れて席を離れる。
二人の当初の目的はG・Iの資金集めだ。
懸賞金を外された旅団を捕まえることに意味はないと、キルアが猛反対しているのだろう。
さて、二人が戻ってくる前に帰ろうかな。
これ以上一緒にいると、寂しくなっちゃうからね。
「四人とまた会えて、本当にうれしかったよ」
またね、と声をかけてソファから立ち上がる。
レオリオから呼び止められたが、クラピカは黙ったままだった。
ぴたり、と途中で歩みを止める。
「帰さないんじゃなかったの?」
「…行け」
「いいの?旅団抜きで会う機会、もうないよ?」
「情報提供者ならすでにいる。私の気が変わる前に早く行け」
うつむく金髪の姿に、フッと目を細める。
私の敵は、昔から変わらずただ一人だった。
「クラピカ、忘れないで。あなたはやっぱりやさしい人よ」
「……」
「じゃあ、また戦場でね」
「待ってよ、なまえ!」
ホテルを出る直前、ゴンとキルアに呼び止められる。
「もう帰っちゃうの?」
子犬みたいにしょげて、眉を下げたゴンを思いっきり抱きしめる。
そうだ、と再会のうれしさのあまり、言い忘れていたことを思い出した。
「ゴン、キルア」
「うん?」
「旅団から手を引いてって、電話で言ったよね?」
あ、と私の顔を見たキルアが青ざめていく。
「いたたたた!骨が折れちゃうよ、なまえ!」
「だいじょーぶ。どこぞのハゲ忍者みたいに、キレイにくっつくよう折ってあげるから」
「ごめん!ごめんなさいっ!」
必死に謝るゴンの背中を、ポンポンとなでてから放す。
キルアも抱きしめの刑をしようと思ったが、先に両手を上げて謝られてしまった。
「てゆーか、クラピカを止めなくていいのかよ?あいつまだ、旅団狩る気満々だぜ?」
「ムリっしょ。やめてって言われて、やめるような人じゃないし」
「そりゃそーだけど…」
「私はゴンとキルアにやめてほしいんだけどな、旅団を追うの」
ゴンの両肩に手を置く。
記憶通りとはいえ、これ以上危険なことに関わってほしくない。
クラピカに協力して旅団を止めるって聞かないから、キルアもそれを阻止したいんだよ。
「捕まって体感したと思うけど、旅団にとって殺しは日常なの」
「うん」
「今度はもうホントに助けてあげられないよ」
「それでも、旅団を止めたいって気持ちは変わらないよ。なまえの顔を見て、改めてそう思ったんだ」
強い意志を宿した瞳で見上げてくるゴン。
ごめん、キルア。
火に油だった。
「こうなったらゴンのやつ、殴ったとしてもやめないぜ」
「ゴン、あんまりキルアのこと置いてきぼりにしないでね」
「しないよ!そんなこと!」
現在進行形でしてるんだけどなー。
キルアに服をちょいちょいとひっぱられて、首を傾ける。
「ヒゲから聞いたけど、なまえも今は旅団の一員なんだろ?この先、クラピカとのやりあうの必須じゃん」
「クラピカとは戦わないよ?私は旅団じゃないし」
「?」
キルアは何か勘違いをしている。
ノブナガめ、何をしゃべったんだろう。
「それにリスクしかないのに、クラピカは私を見逃してくれた。ゴンとキルアのおかげだよ」
「リスクしかないのはなまえも同じだろ」
いいや、リターンしかない。
にっこり笑って最後に抱きしめると、やっぱりキルアに怒られた。
ホテルのドアから出ると、まだ土砂降りは続いていた。
そうそう、最後にもう一つ。
「ゼパイルさんっていう、目利き知ってる?ヨークシンにいるらしいんだけど」
「うん!知ってるよ!」
「ゼパイルのおっちゃん?なんでまた」
仕事で頼みたいことがあるんだと答えて、連絡先を聞く。
念のため、旅団の仕事とは無関係なことを断っておく。
二人と別れて雑踏の中を、青色の傘をさして歩く。
「なまえ、また会えるよね?」
「お互い生きてたらね」
最後に交わした言葉を思い出して、どんよりとした灰色の空を見上げる。
雨はしばらく止みそうにない。
「クロロへの言い訳、どーしよ…」
はあ、とため息を吐く。
一人とぼとぼと歩き、みんなのいるアジトへ重い足取りで戻っていった。
「鎖野郎ってクラピカのことでしょ」
そう告げると、眉をつり上げた鋭い視線が突き刺さる。
ずいぶんとやせちゃったな、クラピカ。
「…だとしたら何だ。私を捕らえにきたのか」
「まさか。クラピカのこと売ったりしないよ」
「信用ならないな。旅団と行動を共にするかぎり、貴様は私の敵だ」
キルアが周囲の気配を探っている。
尾行とかされてないから、安心してほしい。
いま全員アジトにいて、本拠地に戻るか話し合いをしている。
キルアと目が合ったが、ふいっと顔をそらされた。
なんか、ハンター試験の頃を思い出すな。
「敵じゃないよ」
聞こえた声は、隣からだった。
ゴンの曇りのない目は、クラピカを見ている。
「なまえは仲間や友達を、平気で裏切るような人じゃない」
「おいゴン。そう言いたい気持ちもわかるが、まだわかんねーだろ?こう言っちゃなんだが、ウソついてたり演技かも知れねーし…」
「じゃあさ、なんで一人でオレたちに会いに来たの?」
どーん、とゴンは人差し指を立てる。
私はカップ片手に、会話の行く末を見守る。
「べつに、ゴンの肩持つわけじゃないけどさ」
キルアは舐めてたウサギの棒キャンディを、クラピカの方へと向ける。
「なまえの話がウソだったら、今ごろとっくに見つかってるぜ。旅団のやつら、血眼になって鎖野郎のこと探してるから。オレたちも、ノブナガって男から命がけで逃げてきたわけだし。今こうやってのん気に話してる状況が、証拠になるんじゃねーの?」
「仮にそうだとしても、私がこのまま旅団の元に帰すとでも思ったか?」
ビリビリと、場に緊張の空気が走る。
旅団のことになると、すぐまわりが見えなくなるんだよなクラピカ。
「そうやって冷静さを欠いて、仲間を危険にさらすつもり?」
「なんだと…!」
「おい、やめろクラピカ」
すかさず、クラピカの隣にいるレオリオが肩をつかんで止める。
そう、誰かがこうやってそばにいてあげないと。
「レオリオ、ムチャするクラピカのこと止めてあげてね」
「それは一向に構わねェけどよ…」
「クラピカの気持ち、私にもわかるよ」
「ふざけるな!貴様に何がわかる…ッ!」
それはこの世にただ独りという、本当の孤独。
あの日、私は世界に捨てられてすべてを失った。
「私はね、もう誰にも死んでほしくないんだよ」
ソーサーの上にカップを置き、ふちを指でなぞる。
目を閉じると、ゴミ山で駆け回る少年少女たちの姿が鮮やかに蘇る。
もっと一緒に笑っていたかったな。
「旅団を止めようよ、なまえ」
まぶたを開けると、まっすぐな強い瞳と視線が交わる。
ゴンはいつだって本気だ。
立ち上がったキルアが、ちょっとこいとゴンを連れて席を離れる。
二人の当初の目的はG・Iの資金集めだ。
懸賞金を外された旅団を捕まえることに意味はないと、キルアが猛反対しているのだろう。
さて、二人が戻ってくる前に帰ろうかな。
これ以上一緒にいると、寂しくなっちゃうからね。
「四人とまた会えて、本当にうれしかったよ」
またね、と声をかけてソファから立ち上がる。
レオリオから呼び止められたが、クラピカは黙ったままだった。
ぴたり、と途中で歩みを止める。
「帰さないんじゃなかったの?」
「…行け」
「いいの?旅団抜きで会う機会、もうないよ?」
「情報提供者ならすでにいる。私の気が変わる前に早く行け」
うつむく金髪の姿に、フッと目を細める。
私の敵は、昔から変わらずただ一人だった。
「クラピカ、忘れないで。あなたはやっぱりやさしい人よ」
「……」
「じゃあ、また戦場でね」
「待ってよ、なまえ!」
ホテルを出る直前、ゴンとキルアに呼び止められる。
「もう帰っちゃうの?」
子犬みたいにしょげて、眉を下げたゴンを思いっきり抱きしめる。
そうだ、と再会のうれしさのあまり、言い忘れていたことを思い出した。
「ゴン、キルア」
「うん?」
「旅団から手を引いてって、電話で言ったよね?」
あ、と私の顔を見たキルアが青ざめていく。
「いたたたた!骨が折れちゃうよ、なまえ!」
「だいじょーぶ。どこぞのハゲ忍者みたいに、キレイにくっつくよう折ってあげるから」
「ごめん!ごめんなさいっ!」
必死に謝るゴンの背中を、ポンポンとなでてから放す。
キルアも抱きしめの刑をしようと思ったが、先に両手を上げて謝られてしまった。
「てゆーか、クラピカを止めなくていいのかよ?あいつまだ、旅団狩る気満々だぜ?」
「ムリっしょ。やめてって言われて、やめるような人じゃないし」
「そりゃそーだけど…」
「私はゴンとキルアにやめてほしいんだけどな、旅団を追うの」
ゴンの両肩に手を置く。
記憶通りとはいえ、これ以上危険なことに関わってほしくない。
クラピカに協力して旅団を止めるって聞かないから、キルアもそれを阻止したいんだよ。
「捕まって体感したと思うけど、旅団にとって殺しは日常なの」
「うん」
「今度はもうホントに助けてあげられないよ」
「それでも、旅団を止めたいって気持ちは変わらないよ。なまえの顔を見て、改めてそう思ったんだ」
強い意志を宿した瞳で見上げてくるゴン。
ごめん、キルア。
火に油だった。
「こうなったらゴンのやつ、殴ったとしてもやめないぜ」
「ゴン、あんまりキルアのこと置いてきぼりにしないでね」
「しないよ!そんなこと!」
現在進行形でしてるんだけどなー。
キルアに服をちょいちょいとひっぱられて、首を傾ける。
「ヒゲから聞いたけど、なまえも今は旅団の一員なんだろ?この先、クラピカとのやりあうの必須じゃん」
「クラピカとは戦わないよ?私は旅団じゃないし」
「?」
キルアは何か勘違いをしている。
ノブナガめ、何をしゃべったんだろう。
「それにリスクしかないのに、クラピカは私を見逃してくれた。ゴンとキルアのおかげだよ」
「リスクしかないのはなまえも同じだろ」
いいや、リターンしかない。
にっこり笑って最後に抱きしめると、やっぱりキルアに怒られた。
ホテルのドアから出ると、まだ土砂降りは続いていた。
そうそう、最後にもう一つ。
「ゼパイルさんっていう、目利き知ってる?ヨークシンにいるらしいんだけど」
「うん!知ってるよ!」
「ゼパイルのおっちゃん?なんでまた」
仕事で頼みたいことがあるんだと答えて、連絡先を聞く。
念のため、旅団の仕事とは無関係なことを断っておく。
二人と別れて雑踏の中を、青色の傘をさして歩く。
「なまえ、また会えるよね?」
「お互い生きてたらね」
最後に交わした言葉を思い出して、どんよりとした灰色の空を見上げる。
雨はしばらく止みそうにない。
「クロロへの言い訳、どーしよ…」
はあ、とため息を吐く。
一人とぼとぼと歩き、みんなのいるアジトへ重い足取りで戻っていった。