ヨークシン編
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雑踏の街角で、団子屋の看板を見つけて思わず足を止める。
「ジャポンのお菓子だよ、どうだいお嬢ちゃん」
「ん〜じゃあ、みたらしと花見団子ください」
「まいど!」
桜色の包み紙を受け取り、待ち合わせ場所のホテルへと向かう。
伝えられた部屋番号の扉を開けると、液晶の光に照らされたクロロがこちらを振り向いた。
「一個ちょうだい」
「どーぞ」
手にしていたみたらし団子を欲しがっていたので、口へと運ぶ。
スーツ姿のクロロは、またパソコンに向き直ってマウスを動かしている。
甘くてしょっぱいタレがおいしい。
見て、と指差された画面をのぞきこむと、ハンターサイトに一枚の写真が映し出されていた。
「この女が、ノストラード組の組長の娘。なまえが好きそう」
「ごめーさつ」
「適当に声かけてくれればいいから」
かわいい女の子は大好きだ。
はいこれ、とワイシャツと黒のスーツを手渡される。
その場で着替えて襟を正すと、ちょうどいいサイズで自然と背筋がピンと伸びる。
「クロロー、ネクタイ結んで」
「はいはい」
シュッと、手早くきれいに結んでもらって、にこりと笑い合う。
写真の印刷をしている間、落ちていたサングラスを拾って顔にかけるが、すぐに外されて胸ポケットにしまわれた。
マフィア感でると思ったのに。
公園でダンボールに住んでたおじさんを拾い、先に盗っておいた車でセメタリービルの検問前に止まる。
車から降りて、写真で見た途方に暮れているはずの少女を探す。
ヨークシンの街は、すっかり夜景に包まれていた。
「ホントは、クロロ一人の方が適任だと思うけどなー」
「どうして?」
きょとん、と前髪を下ろしたクロロは、団長モードより幼く見える。
だってホラ、ピンチのときクロロみたいな人に助けてもらったらときめくもんじゃん。
そんな必要ないからね、と隣を歩きながらあっさり断られた。
残念、見てみたかったのに。
間もなくして、このヨークシンで身一つのワンピース姿の少女を見つけた。
「ネオンちゃん」
「?」
「ネオン=ノストラードちゃんよね?」
「そうだけど……あなたは?」
「はじめまして、あなたのファンです」
◇
警備員にオークションの参加証を提示して、4人を乗せた車は再び動き出す。
「よかったー、検問通れなくて困ってたの。ホントにありがとう」
「どういたしまして」
「ネオンちゃん、ビルに着いたらちょっと休憩しようか」
「うん!もう喉カラカラ!」
セメタリービルの中に入って、3人で席に座る。
隣にいるクロロがコーヒーを二人分注文して、ネオンに何を頼むか聞く。
一息ついて落ち着いたネオンに、クロロは占いの質問をして今すぐ占ってもらうことに。
着々と盗むための条件を満たしていく。
「おねーさんは?」
「彼女、自分の生年月日を知らないんだ」
「へェーめずらしい。じゃ、クロロさんだけ占ってみるね」
くるくると、ペンをまわすネオンをじっと見つめる。
天使の自動筆記(ラブリーゴーストライター)。
念獣が消えて、はい、とクロロに紙が渡される。
私にも見えるよう寄せられたので、一緒に詩を見る。
「クロロ」
名前を呼べば、濡れた瞳がこちらを向く。
ウボォーの死を確信して、静かに流した涙を私は指でそっとぬぐう。
ほら、ネオンが驚いた顔で固まってる。
正面に向き直り、詩の内容を話そうとするクロロだがあわてて止められる。
こうやって占い結果を一切見ないようにしてるの、無意識の制約っぽいよね。
ふと、ネオンのかわいらしい目が好奇の色を宿した。
「二人は恋人?」
「そうだよ」
「あーやっぱり!」
クロロが口元を上げて、お決まりのセリフで受け答える。
間違えられるのも、冗談で返すのも慣れっこだ。
私はカップを手に取り、コーヒーを口にする。
「馴れ初め、聞きたい?」
「聞きたい聞きたい!」
「聞かんでよろしい」
「なまえはね、オレにとって聖母なんだよ」
「聖母マリア?」
「そう」
だから、その話はもういいですって。
下りのエスカレーターへ移動して、話題は占いの内容から死後の世界について変わる。
「オレはね、霊魂って信じてるんだ」
天体が描かれた天井を見上げ、光に反射したクロロの耳飾りがきらめく。
「なまえさんも、信じてる感じ?」
「そうだね。死んだら、会いたい人に会えるからね」
「へェー。そういう考え方もありかも。その言葉も、今生きてる人を幸せにするためのものよね」
可憐な少女と笑い合う。
彼女のこういうしっかりしたところ、好きだな。
警戒心なくて、悪い大人にはだまされちゃうけど。
腕を動かしたクロロと同時に、ネオンから目の光が消える。
声もなく倒れ込む体を、私はしっかりと受け止める。
迫真の演技で声を荒げたクロロはマフィアを介して医者を呼んでもらい、案内された501号室へネオンを運んだ。
「じゃ、一息ついたら連絡するから」
「りょーかい。気をつけてね」
「うん」
しばらくして、コウモリ型のケータイに着信が入る。
私は用意しておいた白百合を抱えて、連絡のあった部屋へと歩いて行く。
扉を開けると、盗賊の極意(スキルハンター)を手にしたクロロと目が合う。
宙を泳いでいた念魚がうなり声をあげて、男の肉片が飛び散った。
「インドアフィッシュ、消えちゃった」
「また今度見せてあげるよ」
クロロがボタンを押すと、派手な爆音や銃声が聞こえて涼しい夜風がカーテンをはためかせる。
差し出された手を取って、ガラスが下りた窓台に立つ。
私は手向けの花を、風にのせて宙へと手放す。
月明かりの下、白の花びらが喧騒できらめくヨークシンの街へと舞い散った。
クロロが目を閉じて指揮を執る。
これが旅団からウボォーへ贈る、葬いの鎮魂曲だ。
さよならバイバイ、ウボォーギン。
◇
「なんじゃ、なまえか」
気配とともに聞こえた声に、イスに座ったまま目を開ける。
上の階からシルバとゼノがやってきた。
クロロならこの部屋にいますよ、と扉を指を差す。
「あやつに味方せんで良いのか?」
「私は旅団じゃないので。そうだ。おいしいお団子屋さん見つけたんで、今度お土産に持っていきますね」
やれやれ、とゼノがうしろで手を組みながら進んでいく。
シルバが何か言いたそうにこちらを見てたが、結局何も言わずに入っていった。
何気にヨークシンにゾル家集合してるんだよな。
ミルキとご飯食べに行きたいけど、行くヒマあるかなぁ。
なさそー。
大きな衝撃音とともに、床が揺れる。
扉を開けて様子をうかがうと、壁が大きく崩れて戦闘の凄まじさを物語っていた。
砂埃が舞う中、クロロとゼノが瓦礫の下から出てきて、シルバが無線機でイルミと通話している。
破れたスーツでボロボロの姿のクロロを見て、やっぱり部屋の外にいてよかったと思う。
見てたら絶対、手出してたもん。
依頼人が死んだことにより、帰って行く二人。
私は足を踏み出して、クロロの元に駆け寄る。
すれ違ったシルバに、名前を呼ばれて振り返った。
「いつでもオレのところに来い」
これを言われるのは、何回目だろうか。
お決まりのセリフに苦笑して眉尻を下げる。
ぐっと腰を引き寄せられたと思ったら、背中から感じるぬくもり。
ちらりと見上げれば、さらりと揺れる黒髪に青い耳飾り。
クロロに捕えられて、逃げられない。
「見ての通り、息子が離してくれそうにないので」
流星街の廃れた教会で育った幼い子たち。
彼らは、本当の家族を知らない。
シルバはそれ以上は何も言わず、背を向けて立ち去っていった。
ふう、と息を吐きクロロは大の字になってうしろへ倒れる。
「しんどー。ありゃ盗めねーわ」
「おつかれさま」
私は膝を折り曲げ、素の状態のクロロに笑う。
ゾルディック家の二人を相手にして、盗もうとしてるんだもんな。
さすが団長、盗賊の鑑。
クロロの大きく切れた左頬に指をはわせて、スゥと止血する。
「他は平気?」
「うん、問題ないよ」
「そ。よかったよかった」
ケータイを取り出したクロロは、救急車は襲うなとメンバーへ通達。
シュルリと額の包帯が外されて、十字の刺青が現れる。
さて、あとはみんなの到着を待ちますか。
「なまえ」
「ん?」
「やっぱり充電させて」
「はい、どーぞ」
にっこりと笑って、クロロに向かって大きく両手を広げる。
正面から覆い被さるように抱きしめられた身体。
私はオーラを込めて、ぎゅっと背中を抱きしめ返す。
クロロが疲れた時の、いつもの恒例行事だ。
くすぐったさに少し離れようとすれば、まわされた腕の力が強くなる。
「まだダメ」
「はいはい」
その後、暴れながらもセメタリービルに着いたみんなと合流して、野外にフェイクの死体を放置する。
各々が、自分の死体作りを演出している。
クロロの死体をじーっと眺めていたら、なまえも痛めつけていいよ、と本人から声がかかった。
私にそういうヘキはないので、大丈夫です。
コルトピからコピーの自分を受け取り、適当に転がすと誰かが近づく気配。
「なまえ、ワタシにやらせるね」
「うん、お好きにどーぞ」
きっといい具合にやってくれそうだな。
ウキウキとやけにうれしそうなフェイタンに、死体作りはまかせる事にした。
◇
「かんぱーい」
偽のオークション開催も無事におわり、アジトで一人機嫌を損ねたノブナガ以外のみんなと酒盛りをする。
よしよし、ゴンとキルアはちゃんと逃げ出せたな。
「なまえ、飲み過ぎないでよ。弱いんだから」
「ヘーキだって。私、酔ったことないもん」
「雰囲気酔いするだろ?この前だって、ジュースで酔ってたもんなぁ」
マチとシャルにそろってとがめられる。
もう、この子たちは心配性なんだから。
ろうそくが何本も立てられた、逆十字の墓標を見る。
供えられた缶ビールの横に、桜色の包み紙を置いた。
地獄でまた会おう。
コツンと、一人乾杯を交わして旅団の子たちと飲み明かした。
「ジャポンのお菓子だよ、どうだいお嬢ちゃん」
「ん〜じゃあ、みたらしと花見団子ください」
「まいど!」
桜色の包み紙を受け取り、待ち合わせ場所のホテルへと向かう。
伝えられた部屋番号の扉を開けると、液晶の光に照らされたクロロがこちらを振り向いた。
「一個ちょうだい」
「どーぞ」
手にしていたみたらし団子を欲しがっていたので、口へと運ぶ。
スーツ姿のクロロは、またパソコンに向き直ってマウスを動かしている。
甘くてしょっぱいタレがおいしい。
見て、と指差された画面をのぞきこむと、ハンターサイトに一枚の写真が映し出されていた。
「この女が、ノストラード組の組長の娘。なまえが好きそう」
「ごめーさつ」
「適当に声かけてくれればいいから」
かわいい女の子は大好きだ。
はいこれ、とワイシャツと黒のスーツを手渡される。
その場で着替えて襟を正すと、ちょうどいいサイズで自然と背筋がピンと伸びる。
「クロロー、ネクタイ結んで」
「はいはい」
シュッと、手早くきれいに結んでもらって、にこりと笑い合う。
写真の印刷をしている間、落ちていたサングラスを拾って顔にかけるが、すぐに外されて胸ポケットにしまわれた。
マフィア感でると思ったのに。
公園でダンボールに住んでたおじさんを拾い、先に盗っておいた車でセメタリービルの検問前に止まる。
車から降りて、写真で見た途方に暮れているはずの少女を探す。
ヨークシンの街は、すっかり夜景に包まれていた。
「ホントは、クロロ一人の方が適任だと思うけどなー」
「どうして?」
きょとん、と前髪を下ろしたクロロは、団長モードより幼く見える。
だってホラ、ピンチのときクロロみたいな人に助けてもらったらときめくもんじゃん。
そんな必要ないからね、と隣を歩きながらあっさり断られた。
残念、見てみたかったのに。
間もなくして、このヨークシンで身一つのワンピース姿の少女を見つけた。
「ネオンちゃん」
「?」
「ネオン=ノストラードちゃんよね?」
「そうだけど……あなたは?」
「はじめまして、あなたのファンです」
◇
警備員にオークションの参加証を提示して、4人を乗せた車は再び動き出す。
「よかったー、検問通れなくて困ってたの。ホントにありがとう」
「どういたしまして」
「ネオンちゃん、ビルに着いたらちょっと休憩しようか」
「うん!もう喉カラカラ!」
セメタリービルの中に入って、3人で席に座る。
隣にいるクロロがコーヒーを二人分注文して、ネオンに何を頼むか聞く。
一息ついて落ち着いたネオンに、クロロは占いの質問をして今すぐ占ってもらうことに。
着々と盗むための条件を満たしていく。
「おねーさんは?」
「彼女、自分の生年月日を知らないんだ」
「へェーめずらしい。じゃ、クロロさんだけ占ってみるね」
くるくると、ペンをまわすネオンをじっと見つめる。
天使の自動筆記(ラブリーゴーストライター)。
念獣が消えて、はい、とクロロに紙が渡される。
私にも見えるよう寄せられたので、一緒に詩を見る。
「クロロ」
名前を呼べば、濡れた瞳がこちらを向く。
ウボォーの死を確信して、静かに流した涙を私は指でそっとぬぐう。
ほら、ネオンが驚いた顔で固まってる。
正面に向き直り、詩の内容を話そうとするクロロだがあわてて止められる。
こうやって占い結果を一切見ないようにしてるの、無意識の制約っぽいよね。
ふと、ネオンのかわいらしい目が好奇の色を宿した。
「二人は恋人?」
「そうだよ」
「あーやっぱり!」
クロロが口元を上げて、お決まりのセリフで受け答える。
間違えられるのも、冗談で返すのも慣れっこだ。
私はカップを手に取り、コーヒーを口にする。
「馴れ初め、聞きたい?」
「聞きたい聞きたい!」
「聞かんでよろしい」
「なまえはね、オレにとって聖母なんだよ」
「聖母マリア?」
「そう」
だから、その話はもういいですって。
下りのエスカレーターへ移動して、話題は占いの内容から死後の世界について変わる。
「オレはね、霊魂って信じてるんだ」
天体が描かれた天井を見上げ、光に反射したクロロの耳飾りがきらめく。
「なまえさんも、信じてる感じ?」
「そうだね。死んだら、会いたい人に会えるからね」
「へェー。そういう考え方もありかも。その言葉も、今生きてる人を幸せにするためのものよね」
可憐な少女と笑い合う。
彼女のこういうしっかりしたところ、好きだな。
警戒心なくて、悪い大人にはだまされちゃうけど。
腕を動かしたクロロと同時に、ネオンから目の光が消える。
声もなく倒れ込む体を、私はしっかりと受け止める。
迫真の演技で声を荒げたクロロはマフィアを介して医者を呼んでもらい、案内された501号室へネオンを運んだ。
「じゃ、一息ついたら連絡するから」
「りょーかい。気をつけてね」
「うん」
しばらくして、コウモリ型のケータイに着信が入る。
私は用意しておいた白百合を抱えて、連絡のあった部屋へと歩いて行く。
扉を開けると、盗賊の極意(スキルハンター)を手にしたクロロと目が合う。
宙を泳いでいた念魚がうなり声をあげて、男の肉片が飛び散った。
「インドアフィッシュ、消えちゃった」
「また今度見せてあげるよ」
クロロがボタンを押すと、派手な爆音や銃声が聞こえて涼しい夜風がカーテンをはためかせる。
差し出された手を取って、ガラスが下りた窓台に立つ。
私は手向けの花を、風にのせて宙へと手放す。
月明かりの下、白の花びらが喧騒できらめくヨークシンの街へと舞い散った。
クロロが目を閉じて指揮を執る。
これが旅団からウボォーへ贈る、葬いの鎮魂曲だ。
さよならバイバイ、ウボォーギン。
◇
「なんじゃ、なまえか」
気配とともに聞こえた声に、イスに座ったまま目を開ける。
上の階からシルバとゼノがやってきた。
クロロならこの部屋にいますよ、と扉を指を差す。
「あやつに味方せんで良いのか?」
「私は旅団じゃないので。そうだ。おいしいお団子屋さん見つけたんで、今度お土産に持っていきますね」
やれやれ、とゼノがうしろで手を組みながら進んでいく。
シルバが何か言いたそうにこちらを見てたが、結局何も言わずに入っていった。
何気にヨークシンにゾル家集合してるんだよな。
ミルキとご飯食べに行きたいけど、行くヒマあるかなぁ。
なさそー。
大きな衝撃音とともに、床が揺れる。
扉を開けて様子をうかがうと、壁が大きく崩れて戦闘の凄まじさを物語っていた。
砂埃が舞う中、クロロとゼノが瓦礫の下から出てきて、シルバが無線機でイルミと通話している。
破れたスーツでボロボロの姿のクロロを見て、やっぱり部屋の外にいてよかったと思う。
見てたら絶対、手出してたもん。
依頼人が死んだことにより、帰って行く二人。
私は足を踏み出して、クロロの元に駆け寄る。
すれ違ったシルバに、名前を呼ばれて振り返った。
「いつでもオレのところに来い」
これを言われるのは、何回目だろうか。
お決まりのセリフに苦笑して眉尻を下げる。
ぐっと腰を引き寄せられたと思ったら、背中から感じるぬくもり。
ちらりと見上げれば、さらりと揺れる黒髪に青い耳飾り。
クロロに捕えられて、逃げられない。
「見ての通り、息子が離してくれそうにないので」
流星街の廃れた教会で育った幼い子たち。
彼らは、本当の家族を知らない。
シルバはそれ以上は何も言わず、背を向けて立ち去っていった。
ふう、と息を吐きクロロは大の字になってうしろへ倒れる。
「しんどー。ありゃ盗めねーわ」
「おつかれさま」
私は膝を折り曲げ、素の状態のクロロに笑う。
ゾルディック家の二人を相手にして、盗もうとしてるんだもんな。
さすが団長、盗賊の鑑。
クロロの大きく切れた左頬に指をはわせて、スゥと止血する。
「他は平気?」
「うん、問題ないよ」
「そ。よかったよかった」
ケータイを取り出したクロロは、救急車は襲うなとメンバーへ通達。
シュルリと額の包帯が外されて、十字の刺青が現れる。
さて、あとはみんなの到着を待ちますか。
「なまえ」
「ん?」
「やっぱり充電させて」
「はい、どーぞ」
にっこりと笑って、クロロに向かって大きく両手を広げる。
正面から覆い被さるように抱きしめられた身体。
私はオーラを込めて、ぎゅっと背中を抱きしめ返す。
クロロが疲れた時の、いつもの恒例行事だ。
くすぐったさに少し離れようとすれば、まわされた腕の力が強くなる。
「まだダメ」
「はいはい」
その後、暴れながらもセメタリービルに着いたみんなと合流して、野外にフェイクの死体を放置する。
各々が、自分の死体作りを演出している。
クロロの死体をじーっと眺めていたら、なまえも痛めつけていいよ、と本人から声がかかった。
私にそういうヘキはないので、大丈夫です。
コルトピからコピーの自分を受け取り、適当に転がすと誰かが近づく気配。
「なまえ、ワタシにやらせるね」
「うん、お好きにどーぞ」
きっといい具合にやってくれそうだな。
ウキウキとやけにうれしそうなフェイタンに、死体作りはまかせる事にした。
◇
「かんぱーい」
偽のオークション開催も無事におわり、アジトで一人機嫌を損ねたノブナガ以外のみんなと酒盛りをする。
よしよし、ゴンとキルアはちゃんと逃げ出せたな。
「なまえ、飲み過ぎないでよ。弱いんだから」
「ヘーキだって。私、酔ったことないもん」
「雰囲気酔いするだろ?この前だって、ジュースで酔ってたもんなぁ」
マチとシャルにそろってとがめられる。
もう、この子たちは心配性なんだから。
ろうそくが何本も立てられた、逆十字の墓標を見る。
供えられた缶ビールの横に、桜色の包み紙を置いた。
地獄でまた会おう。
コツンと、一人乾杯を交わして旅団の子たちと飲み明かした。