ヨークシン編
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そこはゴミの臭いしかしなかった。
砂塵が吹き荒れる、廃墟の教会。
ステンドグラスの光の下、黒髪の幼い少年と名もなき怪物。
怪物が座る膝の上に、夜空のような少年は頭を預ける。
その髪をとかすように、怪物である私は指先でゆっくりとなでる。
折り重なった死体の山の上で。
月が太陽を食らい、真昼の空が闇へと墜ちていった。
「なんだ、夢か…」
チュンチュン、と小鳥のさえずりが聞こえる。
むくり、と眠気まなこの体を起こす。
窓を開けて陽の光を浴びながら、新鮮な空気を肺に取り込む。
「けむたい…」
「おはよう寝坊助さん。もうお昼だよ」
宿主のおじさんが、外のベンチに座りタバコをくわえていた。
室内に戻りコーヒーを流し込んで、身支度を整えて宿を出る。
約束していた街でマチたちを見つけて、大きく手を振った。
「フェイたーん!」
「くたばるといいね」
久々の再会に腕を伸ばして飛びつけば、あっさりと避けられた。
地面と熱いキスを交わす。
「何年経っても変わんねーな」
「ね。フェイってば恥ずかしがり屋さんなんだから」
「いや、そうじゃねーだろ」
ノブナガの笑い声と、マチのあきれたようなため息が聞こえる。
ふいに、体がふわっと宙へ浮いた。
目の前にはポケットに両手を入れたフェイタン。
首を横にすると傷だらけのフランクリンの顔が見えて、つま先から地面に下ろしてもらった。
いつもたすかります。
4人と再会して街を出て、砂漠公路の車道外を歩く。
徒歩移動、たのしいな。
話題は旅団の新メンバーヒソカの事となり、うしろでノブナガとフランクリンがじゃれ始めた。
「フェイタンに同意。私のマチを口説いてるのが気に食わん」
「なまえも人のこと言えないね」
「私?なんでさ」
なぜかマチもうんうん、とまぶたを閉じてうなずいている。
フェイタンの切れ長の瞳と目が合ったが、ハッと鼻で笑われておわった。
よくわからないが、ヒソカと同じ扱いだけはやめていただきたい。
欲望が渦巻く街、ヨークシンシティに到着。
そのまま仮宿であるアジトへ向かう。
道中、甘い匂いの誘惑に負けてヨークシン名物のドーナツを箱で買った。
邪道ね、と野次が飛んできたが、私の職業は盗賊じゃありませーん。
「お嬢さん、そこのお嬢さん。そう、あなた」
だんだんと人通りが少なくなってきた街角で、大きな水晶玉を前に明らかにあやしい占い師的な人に声をかけられた。
ベールの中から、少しだけ水色の髪が見える。
やめときな、と言うマチにちょっと話を聞いてくるだけだからと小走りに近づく。
「男運の悪さが出ておる…この先、ろくでもない男に捕まり災厄に見舞われ…やがて身を滅ぼすであろう…いや、そうとわかっていながら、お主自ら破滅の道を選ぶというのか…」
占い師の指先に力が入り、水晶玉の奥底をぐぐぐと見ている。
「このまま行けば奈落の底へ落ちるのみ…そんなあなたに、じゃーん!この開運厄除けグッズ!今ならなんとたったの2000ジェニー、おまけにもう一個つけちゃう!」
「いらないです」
幸せになれるお水もあるよー!と言う占い師に頭を下げて、みんなの元に戻る。
「なんだって?」
「素敵な地獄に落ちるわよ、だって」
「何それ」
「ほら、一寸先は地獄って言うじゃない」
「それを言うなら闇ね」
歩き出したフェイタンのあとを追って、再び5人で移動する。
フランクリンに頼んで、ことわざクイズを出題してもらう。
「溺れるものは?」
「すべて見放す」
「藁をも掴む、だ」
その後も大喜利みたいに答えていたら、フェイタンやフランクリンからすぐさま正解が飛んできた。
かしこい子たちだ。
一番正解率の低いノブナガはすねて、途中から参加しなくなった。
しばらくすると完全に人の気配がなくなり、何棟もの連なる廃墟ビルの前まで来た。
みんなとそろって会うのは久しぶりなので、ドキドキする。
ていうか、初対面の子もいるし。
あ、とすっかり忘れていたことを思い出して出入口の前で固まる。
「ちょっと、なまえ。どこ行くの」
「やっぱ帰る」
くるり、と踵を返そうと思ったら他の子たちもやってきた。
「こんなとこで突っ立って何やってんだ」
「あれ、なまえもう来てるじゃん」
「げ」
フィンクスとシャルナークの姿を見て、口元が引きつる。
私はサッとフランクリンの背後に隠れて、手だけ大きく振る。
「久しぶり!めちゃくちゃ会いたかった!」
「隠れながら言うセリフじゃねーだろ」
「挨拶はあとにして、さっさと中に入ろうよ」
背中からこっそり顔を出すと、シャルがいつものベビーフェイスで建物の奥を指差している。
あれ?フツーじゃん。
なんだ、私が変に意識してただけか。
べつに連絡取れなくなるくらい、きっと今のシャルたちにとってなんてこともない。
もうみんな大人だもんね。
あとに続いて歩き出そうとしたら、がしりとたくましい腕に手首をつかまれた。
さびついたロボットみたいにシャルの顔を見上げて、顔が青ざめる。
だ、だまされた!
「なまえってさ、学習能力ないよね」
「毒舌モード!?」
「そんなモードないから。ハイこれ」
ポケットから何かを手渡される。
ケータイだ。
しかも、見覚えのあるコウモリ型のケータイ。
ついにブラックボイスでアンテナでも刺して操作してやろうか、みたいなことだろうか。
「それ、既存で販売されてるただのケータイだよ。ちょっと見た目いじったけど」
「えー、シャル好きあいしてる」
「愛はいいから金をくれ。もうなくすなよ」
シャルに抱きつこうと腕を伸ばすも、ぺちんと額を叩かれた。
「涙ぐましい努力だな」
フィンクスの言う通りだ。
なんかこう、勉強嫌いな子にあそびながら覚えられる学習キット渡すような感じ。
自分で言っててかなしくなってきた。
隙を見て再び抱きつこうとしたら、なぜかヘッドロックを決められた。
反省しろと言うことらしい。
シャルの肌をさらしてる上腕二頭筋に、あやうくしめ殺されるところだった。
うん、それも全然ありだな。
アジトに入りながらケータイの電源を入れ、ホームコードの着信履歴を確認する。
シャルやキキョウちゃんからの怒涛の不在着信は、いつものことだとして。
目新しい一件に手が止まる。
通話はかけず、私はメッセージを送信した。
『ごめんキルア、家族といるからまだ会えない』
砂塵が吹き荒れる、廃墟の教会。
ステンドグラスの光の下、黒髪の幼い少年と名もなき怪物。
怪物が座る膝の上に、夜空のような少年は頭を預ける。
その髪をとかすように、怪物である私は指先でゆっくりとなでる。
折り重なった死体の山の上で。
月が太陽を食らい、真昼の空が闇へと墜ちていった。
「なんだ、夢か…」
チュンチュン、と小鳥のさえずりが聞こえる。
むくり、と眠気まなこの体を起こす。
窓を開けて陽の光を浴びながら、新鮮な空気を肺に取り込む。
「けむたい…」
「おはよう寝坊助さん。もうお昼だよ」
宿主のおじさんが、外のベンチに座りタバコをくわえていた。
室内に戻りコーヒーを流し込んで、身支度を整えて宿を出る。
約束していた街でマチたちを見つけて、大きく手を振った。
「フェイたーん!」
「くたばるといいね」
久々の再会に腕を伸ばして飛びつけば、あっさりと避けられた。
地面と熱いキスを交わす。
「何年経っても変わんねーな」
「ね。フェイってば恥ずかしがり屋さんなんだから」
「いや、そうじゃねーだろ」
ノブナガの笑い声と、マチのあきれたようなため息が聞こえる。
ふいに、体がふわっと宙へ浮いた。
目の前にはポケットに両手を入れたフェイタン。
首を横にすると傷だらけのフランクリンの顔が見えて、つま先から地面に下ろしてもらった。
いつもたすかります。
4人と再会して街を出て、砂漠公路の車道外を歩く。
徒歩移動、たのしいな。
話題は旅団の新メンバーヒソカの事となり、うしろでノブナガとフランクリンがじゃれ始めた。
「フェイタンに同意。私のマチを口説いてるのが気に食わん」
「なまえも人のこと言えないね」
「私?なんでさ」
なぜかマチもうんうん、とまぶたを閉じてうなずいている。
フェイタンの切れ長の瞳と目が合ったが、ハッと鼻で笑われておわった。
よくわからないが、ヒソカと同じ扱いだけはやめていただきたい。
欲望が渦巻く街、ヨークシンシティに到着。
そのまま仮宿であるアジトへ向かう。
道中、甘い匂いの誘惑に負けてヨークシン名物のドーナツを箱で買った。
邪道ね、と野次が飛んできたが、私の職業は盗賊じゃありませーん。
「お嬢さん、そこのお嬢さん。そう、あなた」
だんだんと人通りが少なくなってきた街角で、大きな水晶玉を前に明らかにあやしい占い師的な人に声をかけられた。
ベールの中から、少しだけ水色の髪が見える。
やめときな、と言うマチにちょっと話を聞いてくるだけだからと小走りに近づく。
「男運の悪さが出ておる…この先、ろくでもない男に捕まり災厄に見舞われ…やがて身を滅ぼすであろう…いや、そうとわかっていながら、お主自ら破滅の道を選ぶというのか…」
占い師の指先に力が入り、水晶玉の奥底をぐぐぐと見ている。
「このまま行けば奈落の底へ落ちるのみ…そんなあなたに、じゃーん!この開運厄除けグッズ!今ならなんとたったの2000ジェニー、おまけにもう一個つけちゃう!」
「いらないです」
幸せになれるお水もあるよー!と言う占い師に頭を下げて、みんなの元に戻る。
「なんだって?」
「素敵な地獄に落ちるわよ、だって」
「何それ」
「ほら、一寸先は地獄って言うじゃない」
「それを言うなら闇ね」
歩き出したフェイタンのあとを追って、再び5人で移動する。
フランクリンに頼んで、ことわざクイズを出題してもらう。
「溺れるものは?」
「すべて見放す」
「藁をも掴む、だ」
その後も大喜利みたいに答えていたら、フェイタンやフランクリンからすぐさま正解が飛んできた。
かしこい子たちだ。
一番正解率の低いノブナガはすねて、途中から参加しなくなった。
しばらくすると完全に人の気配がなくなり、何棟もの連なる廃墟ビルの前まで来た。
みんなとそろって会うのは久しぶりなので、ドキドキする。
ていうか、初対面の子もいるし。
あ、とすっかり忘れていたことを思い出して出入口の前で固まる。
「ちょっと、なまえ。どこ行くの」
「やっぱ帰る」
くるり、と踵を返そうと思ったら他の子たちもやってきた。
「こんなとこで突っ立って何やってんだ」
「あれ、なまえもう来てるじゃん」
「げ」
フィンクスとシャルナークの姿を見て、口元が引きつる。
私はサッとフランクリンの背後に隠れて、手だけ大きく振る。
「久しぶり!めちゃくちゃ会いたかった!」
「隠れながら言うセリフじゃねーだろ」
「挨拶はあとにして、さっさと中に入ろうよ」
背中からこっそり顔を出すと、シャルがいつものベビーフェイスで建物の奥を指差している。
あれ?フツーじゃん。
なんだ、私が変に意識してただけか。
べつに連絡取れなくなるくらい、きっと今のシャルたちにとってなんてこともない。
もうみんな大人だもんね。
あとに続いて歩き出そうとしたら、がしりとたくましい腕に手首をつかまれた。
さびついたロボットみたいにシャルの顔を見上げて、顔が青ざめる。
だ、だまされた!
「なまえってさ、学習能力ないよね」
「毒舌モード!?」
「そんなモードないから。ハイこれ」
ポケットから何かを手渡される。
ケータイだ。
しかも、見覚えのあるコウモリ型のケータイ。
ついにブラックボイスでアンテナでも刺して操作してやろうか、みたいなことだろうか。
「それ、既存で販売されてるただのケータイだよ。ちょっと見た目いじったけど」
「えー、シャル好きあいしてる」
「愛はいいから金をくれ。もうなくすなよ」
シャルに抱きつこうと腕を伸ばすも、ぺちんと額を叩かれた。
「涙ぐましい努力だな」
フィンクスの言う通りだ。
なんかこう、勉強嫌いな子にあそびながら覚えられる学習キット渡すような感じ。
自分で言っててかなしくなってきた。
隙を見て再び抱きつこうとしたら、なぜかヘッドロックを決められた。
反省しろと言うことらしい。
シャルの肌をさらしてる上腕二頭筋に、あやうくしめ殺されるところだった。
うん、それも全然ありだな。
アジトに入りながらケータイの電源を入れ、ホームコードの着信履歴を確認する。
シャルやキキョウちゃんからの怒涛の不在着信は、いつものことだとして。
目新しい一件に手が止まる。
通話はかけず、私はメッセージを送信した。
『ごめんキルア、家族といるからまだ会えない』