ハンター試験編
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ぱちりと目を覚ます。
ふかふかな大きなベッドの上で、窓から差し込む日の光とおだやかな風に揺れるカーテンを眺める。
「おなかすいた…」
「おや、もう目が覚めましたか」
部屋に入ってきたサトツさんが、豪華な椅子をベッドの方へ向けて優雅に座る。
ぼんやりとした頭で上半身を起こすと、焼けつくような胸の痛みが思い出したかのように広がった。
「キルアはどうなりましたか」
「あなたを刺したあと、会場から立ち去りました」
キルア、やっぱりだめだったのかな。
「レオリオ氏とボドロ氏の試合を意図的に妨害しようとしたのは明白でした。結果は未遂に終わりましたが、そのまま退場したキルア氏を委員会は不合格とみなしました。何はともあれ、合格おめでとうございます」
サトツさんの手から差し出されたハンターライセンスを、少し間を置いて受け取る。
誰も殺してないわけだから、不合格にならないと思ったんだけどな。
「しかし驚きました」
「えへへ、体だけは丈夫なので」
「いえ、あの怪我からここまで回復したことはもちろんですが。小さな少女が突然、成長したかのように今のあなたへ変化したのですから」
そうか、と自身の体を見下ろす。
馴染みのある元の大人の姿。
あのままでは、キルアの腕を受け止めきれなかった。
筋肉で止めて、臓器への損傷も避けたので問題ない。
服はあたらしいものに着替えられていて、胸には包帯が巻かれている。
服と包帯の上からそっと、傷口を確認するように手でふれた。
「本当は救急搬送するほどの重傷だったのですが、ネテロ会長が控え室に運んでおけばよいとおっしゃって聞かないもので。今からでも医師を呼びましょうか?」
「大丈夫です。もうふさがってますので」
「ほう」
見てみます?と聞くと、年頃の女性がそんなことを言うものではありませんと表情一つ変えずに怒られた。
苦笑いをしたあと、ふと何か忘れてるような気がして固まる。
「そうだ、ゴンは!説明会は!」
「ゴンくんなら先ほど目覚めて、講習へ向かったばかりです。なまえさんは怪我を考慮して、後日行われるので大丈夫ですよ」
よかった、まだ間に合うと床に足をつけて立ち上がる。
よし、何も問題ないな。
「ダメです。あれからまだ1日しか経っていないのですよ」
サトツさんの制止を顧みず、扉へ向かうと貧血で足元がふらついた。
壁伝いに歩いていると、手をふれてないのに扉が開く。
サトツさんの腕が目の前に差し出された。
「仕方ありません。案内しましょう」
「すみません、ありがとうございます」
目的地の会場に到着すると、サトツさんはポケットから小さなお菓子の包みを取り出す。
子供のときと変わらない接し方で、自然と笑みがこぼれる。
再びお礼を言って受け取り、扉を開けて中に入る。
ゴンとイルミが、少し距離を置いて対峙しているところだった。
イルミの腕はすでに折れている。
生きてたのか、と小さくつぶやいたポックルに笑って手を振った。
「やはり来たか、なまえ。キルアの不合格について各々から異議があっての。ボドロ自身から不合格になるのはキルアではなく、助けられた自分だと申し出があった。お主の意見はどうじゃ」
合格も不合格も、何を言っても結果は変わらないのにネテロ会長はわざわざ聞いてくる。
これも委員会としての役目か。
この会場に、ボドロさんがいるという不思議な光景。
しかし、彼が負い目を感じる必要はどこにもなかった。
「私は誰かを助けたつもりはありません。妨害行為を止めたかった、ただそれだけです。キルアが自らの意思で最終試験を放棄した以上、彼の不合格は致し方ないと思います」
ネテロ会長が頷いて話をまとめ、やはり合否の結果は変わらないと告げる。
続けてビーンズが、ハンターライセンスや協会の規約について説明する。
ゴンとイルミがそれぞれ離れた席に着くと、私はイルミの隣に顔をほころばせて座る。
一瞬、イルミと目が合ったが特に何も言われなかった。
「ここにいる9名を、新しくハンターとして認定いたします!」
「では、解散!」
あーあ、あっという間におわっちゃったなハンター試験。
席を立つとすぐさまゴンがイルミに、キルアの居場所を聞いていた。
私は名前を呼ばれて振り返る。
ボドロさんが深く頭を下げて謝罪していたので、あわてて手を横に振った。
「顔を上げてください。ひどい言い方をしますけど、本当にキルアを止めたかっただけで、ボドロさん自身を助けたつもりはないんです」
「承知の上だ。理由はなくとも、助けてもらった事実は変わらぬ。命を救われた上、合格とは情けない話だ」
「命だなんて、そんなおおげさな」
正直こわかった。
私にはもう、ボドロさんのその後の人生を知る術はない。
あるべき運命をねじ曲げて、必ずしもいい方向に向かうとは限らない。
無事を願うことさえおこがましく感じたが、元気でいるに越したことはない。
お体に気をつけてください、と眉を下げて別れた。
ゴンと会長の言う通り、本当の合格は自分自身で決めることだ。
委員会の人から荷物を受け取り会場から出るとゴン、レオリオ、クラピカの三人に囲まれた。
もう動いて大丈夫なのかと問うレオリオに、もちろんと笑顔で答える。
「なまえ、なんだよね」
そっか、ゴンはあの場にいなかったんだ。
じっとこちらを見上げるゴンに、こくりと頷く。
こうしてみると本当にまだまだ小さな子供だ。
「なまえもオレたちと一緒にキルアを連れ戻しに行こうよ」
「ダメ、こいつはオレと行くから」
ぐいっと、横から現れたイルミに手首をつかまれる。
もちろん、折れてない方の腕で。
なんだ?泥沼三角関係ルート突入か?
「連れてこいってうるさいんだよ。母さんも父さんも」
イルミの言葉に、あーと納得する。
キキョウちゃんはいつものことだけど、こっちの泥沼関係は勘弁願いたい。
とはいえ、ゾルディック家にはもちろん最初から行くつもりだ。
バチバチと火花を散らす二人に挟まれて、私はゴンの方へ顔を向ける。
「ごめんねゴン。先に行ってるね」
「そっか…」
「なまえ、いいか。少し話がしたい」
ゴンのうしろから声をかけるクラピカの言葉に、私はイルミを見上げる。
外にいるから早くしてよね、と言うイルミに頷くとつかまれた腕が離された。
先に口を開いたのはクラピカではなくゴンだった。
「サトツさんから聞いたんだけどさ、ギタラクルはなまえも殺すって言ったんだよね」
「言ってたね」
「なのになんで、あんなに仲良くできるの?」
ゴンの純真無垢でまっすぐな瞳に見つめられる。
非難や詮索からではなく、単純に疑問に思ったから聞いてるはその顔でよくわかった。
「好きだからかな」
「な、にィ!?」
素っ頓狂な声を上げたのはレオリオだった。
なんか前もあったな、こんなこと。
「あのゲス野郎のどこがいいんだ!?」
「まあ、イルミの愛は曲がりに曲がってるからねー」
あれはキルアへの愛というより自己愛ゆえの過保護と執着。
そこがまた愛しいところなんだよね、という私も相当な自覚はあった。
「ゾルディック家はいろいろと特殊だから、そういう意味でも一度訪れてみた方がいい。正門まで行くのは簡単だよ。観光バスが出てるからね」
「なまえは行ったことあるの?」
「うん。もうしばらく行ってないけど、昔ちょっとね」
ゴンの肩に手を置いて、厳しい顔をしたクラピカが一歩前に出る。
「私は正直、戸惑っている。自称ギタラクルとの関係から、何か裏があったのではないかという可能性も捨てきれない」
「でもよ、クラピカ。体張ってキルアの攻撃止めて、ボドロのオッサンを助けたのも事実だぜ。演技であんな大怪我負えるかよ」
「実際はピンピンしてますけどね」
「お前な、フォローしてやってんだから余計な口を挟むな」
仁王立ちしていると、レオリオに頭を小突かれた。
これでも怪我人だぞ、医者の卵。
「いたたたたた、頭の傷口が」
「おい、レオリオ」
「す、すまねー!って怪我したのは胸だろーがよ!」
元気なノリツッコミに笑うと、二人とも肩の力が抜けたようだった。
「ったく、見かけはネーチャンになっても中身はガキのままだぜ」
「たしかにな。気を悪くさせてすまない。確かめたかっただけなんだ。私もゴンと同じ気持ちだ」
フッと笑うクラピカの表情はとても柔らかい。
話が一段落したところで、ゴンが勢いよく手を上げる。
「じゃあさ、キルアの家で集合しようよ!」
「おっ、それいいな!」
「自分の家を勝手に集合場所にされて、キルアもたまったものではないな」
三人の笑い声が響き渡る。
そうそう、君たちはこうでなくっちゃね。
ハンゾーに声をかけられたのをきっかけに、みんなとホームコードを交換した。
頭に疑問符を浮かべるゴンが微笑ましい。
レオリオ、あと説明よろしく。
ハンター試験中、一度も電源を入れなかったケータイを確認しようとカバンを開けるが、ない。
どこかで落としたのかもしれない、と頭をひねると二次試験でいきなりヒソカに背中を押された記憶が鮮明に蘇る。
いやいや、まさかな。
他にも思い当たる節がありすぎたので、ま、いっかと潔くあきらめた。
ジンを見習おう。
用がある人は探し出して、直接会いに来てくれ。
なんてキメ顔をしていたら、遅いとキレたイルミに再び腕をつかまれて強引に連行される。
外にはすでに、ゾル家専用飛行船が到着していた。
乗船する手前、すれ違ったヒソカに名前を呼ばれて少しだけ振り返る。
「その姿のキミも美味しそうだ」
「お腹壊しますよ?」
「おや、殺りあってくれるのかい?」
「丁重にお断りします」
「くく、まあ今はいいよ。キミとはまた近いうち、会えそうな気がするしね」
はいはいと、背中を向けたまま片手を適当に振り返しておく。
悩みの種は尽きないものだ。
ふかふかな大きなベッドの上で、窓から差し込む日の光とおだやかな風に揺れるカーテンを眺める。
「おなかすいた…」
「おや、もう目が覚めましたか」
部屋に入ってきたサトツさんが、豪華な椅子をベッドの方へ向けて優雅に座る。
ぼんやりとした頭で上半身を起こすと、焼けつくような胸の痛みが思い出したかのように広がった。
「キルアはどうなりましたか」
「あなたを刺したあと、会場から立ち去りました」
キルア、やっぱりだめだったのかな。
「レオリオ氏とボドロ氏の試合を意図的に妨害しようとしたのは明白でした。結果は未遂に終わりましたが、そのまま退場したキルア氏を委員会は不合格とみなしました。何はともあれ、合格おめでとうございます」
サトツさんの手から差し出されたハンターライセンスを、少し間を置いて受け取る。
誰も殺してないわけだから、不合格にならないと思ったんだけどな。
「しかし驚きました」
「えへへ、体だけは丈夫なので」
「いえ、あの怪我からここまで回復したことはもちろんですが。小さな少女が突然、成長したかのように今のあなたへ変化したのですから」
そうか、と自身の体を見下ろす。
馴染みのある元の大人の姿。
あのままでは、キルアの腕を受け止めきれなかった。
筋肉で止めて、臓器への損傷も避けたので問題ない。
服はあたらしいものに着替えられていて、胸には包帯が巻かれている。
服と包帯の上からそっと、傷口を確認するように手でふれた。
「本当は救急搬送するほどの重傷だったのですが、ネテロ会長が控え室に運んでおけばよいとおっしゃって聞かないもので。今からでも医師を呼びましょうか?」
「大丈夫です。もうふさがってますので」
「ほう」
見てみます?と聞くと、年頃の女性がそんなことを言うものではありませんと表情一つ変えずに怒られた。
苦笑いをしたあと、ふと何か忘れてるような気がして固まる。
「そうだ、ゴンは!説明会は!」
「ゴンくんなら先ほど目覚めて、講習へ向かったばかりです。なまえさんは怪我を考慮して、後日行われるので大丈夫ですよ」
よかった、まだ間に合うと床に足をつけて立ち上がる。
よし、何も問題ないな。
「ダメです。あれからまだ1日しか経っていないのですよ」
サトツさんの制止を顧みず、扉へ向かうと貧血で足元がふらついた。
壁伝いに歩いていると、手をふれてないのに扉が開く。
サトツさんの腕が目の前に差し出された。
「仕方ありません。案内しましょう」
「すみません、ありがとうございます」
目的地の会場に到着すると、サトツさんはポケットから小さなお菓子の包みを取り出す。
子供のときと変わらない接し方で、自然と笑みがこぼれる。
再びお礼を言って受け取り、扉を開けて中に入る。
ゴンとイルミが、少し距離を置いて対峙しているところだった。
イルミの腕はすでに折れている。
生きてたのか、と小さくつぶやいたポックルに笑って手を振った。
「やはり来たか、なまえ。キルアの不合格について各々から異議があっての。ボドロ自身から不合格になるのはキルアではなく、助けられた自分だと申し出があった。お主の意見はどうじゃ」
合格も不合格も、何を言っても結果は変わらないのにネテロ会長はわざわざ聞いてくる。
これも委員会としての役目か。
この会場に、ボドロさんがいるという不思議な光景。
しかし、彼が負い目を感じる必要はどこにもなかった。
「私は誰かを助けたつもりはありません。妨害行為を止めたかった、ただそれだけです。キルアが自らの意思で最終試験を放棄した以上、彼の不合格は致し方ないと思います」
ネテロ会長が頷いて話をまとめ、やはり合否の結果は変わらないと告げる。
続けてビーンズが、ハンターライセンスや協会の規約について説明する。
ゴンとイルミがそれぞれ離れた席に着くと、私はイルミの隣に顔をほころばせて座る。
一瞬、イルミと目が合ったが特に何も言われなかった。
「ここにいる9名を、新しくハンターとして認定いたします!」
「では、解散!」
あーあ、あっという間におわっちゃったなハンター試験。
席を立つとすぐさまゴンがイルミに、キルアの居場所を聞いていた。
私は名前を呼ばれて振り返る。
ボドロさんが深く頭を下げて謝罪していたので、あわてて手を横に振った。
「顔を上げてください。ひどい言い方をしますけど、本当にキルアを止めたかっただけで、ボドロさん自身を助けたつもりはないんです」
「承知の上だ。理由はなくとも、助けてもらった事実は変わらぬ。命を救われた上、合格とは情けない話だ」
「命だなんて、そんなおおげさな」
正直こわかった。
私にはもう、ボドロさんのその後の人生を知る術はない。
あるべき運命をねじ曲げて、必ずしもいい方向に向かうとは限らない。
無事を願うことさえおこがましく感じたが、元気でいるに越したことはない。
お体に気をつけてください、と眉を下げて別れた。
ゴンと会長の言う通り、本当の合格は自分自身で決めることだ。
委員会の人から荷物を受け取り会場から出るとゴン、レオリオ、クラピカの三人に囲まれた。
もう動いて大丈夫なのかと問うレオリオに、もちろんと笑顔で答える。
「なまえ、なんだよね」
そっか、ゴンはあの場にいなかったんだ。
じっとこちらを見上げるゴンに、こくりと頷く。
こうしてみると本当にまだまだ小さな子供だ。
「なまえもオレたちと一緒にキルアを連れ戻しに行こうよ」
「ダメ、こいつはオレと行くから」
ぐいっと、横から現れたイルミに手首をつかまれる。
もちろん、折れてない方の腕で。
なんだ?泥沼三角関係ルート突入か?
「連れてこいってうるさいんだよ。母さんも父さんも」
イルミの言葉に、あーと納得する。
キキョウちゃんはいつものことだけど、こっちの泥沼関係は勘弁願いたい。
とはいえ、ゾルディック家にはもちろん最初から行くつもりだ。
バチバチと火花を散らす二人に挟まれて、私はゴンの方へ顔を向ける。
「ごめんねゴン。先に行ってるね」
「そっか…」
「なまえ、いいか。少し話がしたい」
ゴンのうしろから声をかけるクラピカの言葉に、私はイルミを見上げる。
外にいるから早くしてよね、と言うイルミに頷くとつかまれた腕が離された。
先に口を開いたのはクラピカではなくゴンだった。
「サトツさんから聞いたんだけどさ、ギタラクルはなまえも殺すって言ったんだよね」
「言ってたね」
「なのになんで、あんなに仲良くできるの?」
ゴンの純真無垢でまっすぐな瞳に見つめられる。
非難や詮索からではなく、単純に疑問に思ったから聞いてるはその顔でよくわかった。
「好きだからかな」
「な、にィ!?」
素っ頓狂な声を上げたのはレオリオだった。
なんか前もあったな、こんなこと。
「あのゲス野郎のどこがいいんだ!?」
「まあ、イルミの愛は曲がりに曲がってるからねー」
あれはキルアへの愛というより自己愛ゆえの過保護と執着。
そこがまた愛しいところなんだよね、という私も相当な自覚はあった。
「ゾルディック家はいろいろと特殊だから、そういう意味でも一度訪れてみた方がいい。正門まで行くのは簡単だよ。観光バスが出てるからね」
「なまえは行ったことあるの?」
「うん。もうしばらく行ってないけど、昔ちょっとね」
ゴンの肩に手を置いて、厳しい顔をしたクラピカが一歩前に出る。
「私は正直、戸惑っている。自称ギタラクルとの関係から、何か裏があったのではないかという可能性も捨てきれない」
「でもよ、クラピカ。体張ってキルアの攻撃止めて、ボドロのオッサンを助けたのも事実だぜ。演技であんな大怪我負えるかよ」
「実際はピンピンしてますけどね」
「お前な、フォローしてやってんだから余計な口を挟むな」
仁王立ちしていると、レオリオに頭を小突かれた。
これでも怪我人だぞ、医者の卵。
「いたたたたた、頭の傷口が」
「おい、レオリオ」
「す、すまねー!って怪我したのは胸だろーがよ!」
元気なノリツッコミに笑うと、二人とも肩の力が抜けたようだった。
「ったく、見かけはネーチャンになっても中身はガキのままだぜ」
「たしかにな。気を悪くさせてすまない。確かめたかっただけなんだ。私もゴンと同じ気持ちだ」
フッと笑うクラピカの表情はとても柔らかい。
話が一段落したところで、ゴンが勢いよく手を上げる。
「じゃあさ、キルアの家で集合しようよ!」
「おっ、それいいな!」
「自分の家を勝手に集合場所にされて、キルアもたまったものではないな」
三人の笑い声が響き渡る。
そうそう、君たちはこうでなくっちゃね。
ハンゾーに声をかけられたのをきっかけに、みんなとホームコードを交換した。
頭に疑問符を浮かべるゴンが微笑ましい。
レオリオ、あと説明よろしく。
ハンター試験中、一度も電源を入れなかったケータイを確認しようとカバンを開けるが、ない。
どこかで落としたのかもしれない、と頭をひねると二次試験でいきなりヒソカに背中を押された記憶が鮮明に蘇る。
いやいや、まさかな。
他にも思い当たる節がありすぎたので、ま、いっかと潔くあきらめた。
ジンを見習おう。
用がある人は探し出して、直接会いに来てくれ。
なんてキメ顔をしていたら、遅いとキレたイルミに再び腕をつかまれて強引に連行される。
外にはすでに、ゾル家専用飛行船が到着していた。
乗船する手前、すれ違ったヒソカに名前を呼ばれて少しだけ振り返る。
「その姿のキミも美味しそうだ」
「お腹壊しますよ?」
「おや、殺りあってくれるのかい?」
「丁重にお断りします」
「くく、まあ今はいいよ。キミとはまた近いうち、会えそうな気がするしね」
はいはいと、背中を向けたまま片手を適当に振り返しておく。
悩みの種は尽きないものだ。