ハンター試験編
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キルア視点
最終試験の前日。
試験会場であるハンター協会貸切のホテルで、用意された個室の扉を開ける。
明日で最後か。
最終試験もどうせ楽勝だろう。
「キルア?」
開けた扉を静かに閉める。
部屋番号を見ると、間違いなく自分の個室だった。
「人の部屋で何やってんだよ、なまえ」
できるだけ平然を装って部屋に入る。
そこには、だぼっとゆるい服を着たなまえが、いつもより肌をさらしてベッドの上に座っていた。
膝の上に乗せた本にしおりを挟み、パタンと閉じて丁寧にしまう。
シャワーを浴びたばかりなのかシャンプーのいい香りが漂う。
ってオレは変態か。
あーもう、心臓に悪い。
なんでなまえがオレの部屋にいんだよ!
「あそびに来たに決まってんじゃん」
なんかすげームカつく。
こんな夜遅く平気で男の部屋に上がり込むかよ、フツー。
出会ったときもそうだったけど、こいつは緊張感とか警戒心っつーものを持ち合わせてない。
人の気も知らないで。
「ハンター試験、どうだった?」
「どうって、まだおわってないだろ」
「ここまでの感想」
変なことを聞いてくる。
ネテロのジーサンにも言ったけど、試験よりも集まってきた連中がなかなかおもしろいやつらばかりだった。
ゴンも一緒にいて飽きないけど、なまえは良くも悪くもと言ったところ。
今にして思えば、ハンター試験が始まる前からここまでずっとなまえに振りまわされっ放しだ。
かっこいいとか、好きとか、簡単に言うくせにすぐ目に見えないところに消えていく。
四次試験でもせっかく一緒に行動できると思ったのに、呼び止める声を無視して一人で先走りやがって。
あとヒソカと針野郎の二人と、やたら仲良くしてるのをしょっちゅう見かけた。
思い出したら、また胸のあたりがもやもやしてきた。
「ま、ヒマつぶし程度にはなったって感じ」
「そっか」
なまえは、なぜかうれしそうに笑っていた。
わけわかんねーやつ。
「じゃーん。お菓子パーティーしましょう、キルアくん」
いつものでっかいカバンからチョコやクッキー、チョコロボくんやらを大量に取り出している。
これでもかって言うくらい、次から次へと出てくる。
「お前、こんなものハンター試験に持ち込んでたのかよ」
「ちがうよ!半分はサトツさんからもらったやつ!」
半分でも充分な量だろ。
チョコロボくんを手に取りながら、ベッドにいるなまえの隣に少し距離を開けて座る。
ふーん、なまえもチョコロボくん好きなんだ。
ゴンを呼んでくると立ち上がるなまえを、オレは内心あわてて引き止める。
壁にかかってる時計が目に入り、ホラと指さした。
「え、もうこんな時間!?早く寝なきゃダメでしょ、めっ」
「マジで何しに来たんだよ、お前…」
なまえはオレよりもチビなくせして、ときどき年上ぶったふるまいをする。
唇をとがらせるなまえを見て、あーそうかと気づく。
こいつ、こんな時間になるまでオレが帰ってくるの待ってたのか。
別に明日でもと思ったけど、よくよく考えたら明日の最終試験がおわれば、こんなやりとりもできなくなる。
試験がおわったら、なまえは家にでも帰るのだろうか。
親父たちの顔が頭に浮かぶ。
なまえは人殺しの場面に遭遇しても、取り乱すどころかむしろ説教までしてきた。
初めてだった。
人殺しがいけないと、叱られたのは。
それが暗殺家業じゃない、普通の家の教え。
もし普通の家に生まれていたら、普通になまえと友達になって、普通に遊んで、普通に、ふつうに。
「キルア、大丈夫?」
うつむいた顔を勢いよく上げる。
顔色が悪いよと、眉を下げるなまえから顔を背けて、平気だから放っておいてくれと突き放すように答える。
嫌な汗がじわりとにじむ。
「いい加減、早く自分の部屋に帰れよ」
自分が嫌になる。
言いたいことはもっと他にあるのに、口からは反対の言葉しか出てこない。
ベッドが少し揺れて、なまえはオレの目の前に立っていた。
顔を見ることができなくて、顔を背けたまま目をつぶる。
突然、柔らかな感触に包まれる。
「誰に何を言われてもね、キルアの人生はキルアのものだよ。人生は夢だらけってね」
突拍子で脈絡もない言葉。
口調は軽かったが、凛と大人びた声色をしていた。
ていうか、これって。
「ばっか!何してんだよ、なまえ!」
「そうそう。元気なキルアが一番だよー」
ぎゅっと抱きしめられて、体温が一気に上がっていくのがわかる。
心臓がうるさくて甘い匂いに頭がくらくらする。
「嫌でもちょっとだけ我慢してね」
すぐおわるから、と言われてなんのことだと疑問に思う。
じんわりと体の中心から広がる、不思議な満足感や満腹感みたいな感覚。
パッとなまえの体が離れていき、なんだか名残惜しく感じた。
ハグってリラックス効果あるんだ、なんて笑って話すなまえはいつもと変わらなくて。
オレばっかりが意識してなんかくやしかった。
「キルア、顔真っ赤」
「なまえのバカ!お前って、ほんっとアホ!」
「えー?って、わー!枕投げするなら明日とかにしようよ」
「明日は最終試験だっつーの。もうねーよ、バーカ」
「なんで?試験おわってもまたあそぼうよ」
一瞬、息の仕方さえ忘れた。
オレの顔を見て瞬きするなまえにとって、きっと深い意味もない言葉。
時計の針が12時を指した。
明日に備えてそろそろ寝るね、と部屋を出ていくなまえを呼び止める。
ゼビル島のときとは違い、今度は立ち止まってオレの方をちゃんと見ていた。
それだけなのに、なんかすげーうれしかった。
「…おやすみ」
「おやすみ。明日の試験、合格しようね」
にっこりと笑ったなまえがいなくなって、扉が閉まる音がやけに虚しく響いた。
最終試験の前日。
試験会場であるハンター協会貸切のホテルで、用意された個室の扉を開ける。
明日で最後か。
最終試験もどうせ楽勝だろう。
「キルア?」
開けた扉を静かに閉める。
部屋番号を見ると、間違いなく自分の個室だった。
「人の部屋で何やってんだよ、なまえ」
できるだけ平然を装って部屋に入る。
そこには、だぼっとゆるい服を着たなまえが、いつもより肌をさらしてベッドの上に座っていた。
膝の上に乗せた本にしおりを挟み、パタンと閉じて丁寧にしまう。
シャワーを浴びたばかりなのかシャンプーのいい香りが漂う。
ってオレは変態か。
あーもう、心臓に悪い。
なんでなまえがオレの部屋にいんだよ!
「あそびに来たに決まってんじゃん」
なんかすげームカつく。
こんな夜遅く平気で男の部屋に上がり込むかよ、フツー。
出会ったときもそうだったけど、こいつは緊張感とか警戒心っつーものを持ち合わせてない。
人の気も知らないで。
「ハンター試験、どうだった?」
「どうって、まだおわってないだろ」
「ここまでの感想」
変なことを聞いてくる。
ネテロのジーサンにも言ったけど、試験よりも集まってきた連中がなかなかおもしろいやつらばかりだった。
ゴンも一緒にいて飽きないけど、なまえは良くも悪くもと言ったところ。
今にして思えば、ハンター試験が始まる前からここまでずっとなまえに振りまわされっ放しだ。
かっこいいとか、好きとか、簡単に言うくせにすぐ目に見えないところに消えていく。
四次試験でもせっかく一緒に行動できると思ったのに、呼び止める声を無視して一人で先走りやがって。
あとヒソカと針野郎の二人と、やたら仲良くしてるのをしょっちゅう見かけた。
思い出したら、また胸のあたりがもやもやしてきた。
「ま、ヒマつぶし程度にはなったって感じ」
「そっか」
なまえは、なぜかうれしそうに笑っていた。
わけわかんねーやつ。
「じゃーん。お菓子パーティーしましょう、キルアくん」
いつものでっかいカバンからチョコやクッキー、チョコロボくんやらを大量に取り出している。
これでもかって言うくらい、次から次へと出てくる。
「お前、こんなものハンター試験に持ち込んでたのかよ」
「ちがうよ!半分はサトツさんからもらったやつ!」
半分でも充分な量だろ。
チョコロボくんを手に取りながら、ベッドにいるなまえの隣に少し距離を開けて座る。
ふーん、なまえもチョコロボくん好きなんだ。
ゴンを呼んでくると立ち上がるなまえを、オレは内心あわてて引き止める。
壁にかかってる時計が目に入り、ホラと指さした。
「え、もうこんな時間!?早く寝なきゃダメでしょ、めっ」
「マジで何しに来たんだよ、お前…」
なまえはオレよりもチビなくせして、ときどき年上ぶったふるまいをする。
唇をとがらせるなまえを見て、あーそうかと気づく。
こいつ、こんな時間になるまでオレが帰ってくるの待ってたのか。
別に明日でもと思ったけど、よくよく考えたら明日の最終試験がおわれば、こんなやりとりもできなくなる。
試験がおわったら、なまえは家にでも帰るのだろうか。
親父たちの顔が頭に浮かぶ。
なまえは人殺しの場面に遭遇しても、取り乱すどころかむしろ説教までしてきた。
初めてだった。
人殺しがいけないと、叱られたのは。
それが暗殺家業じゃない、普通の家の教え。
もし普通の家に生まれていたら、普通になまえと友達になって、普通に遊んで、普通に、ふつうに。
「キルア、大丈夫?」
うつむいた顔を勢いよく上げる。
顔色が悪いよと、眉を下げるなまえから顔を背けて、平気だから放っておいてくれと突き放すように答える。
嫌な汗がじわりとにじむ。
「いい加減、早く自分の部屋に帰れよ」
自分が嫌になる。
言いたいことはもっと他にあるのに、口からは反対の言葉しか出てこない。
ベッドが少し揺れて、なまえはオレの目の前に立っていた。
顔を見ることができなくて、顔を背けたまま目をつぶる。
突然、柔らかな感触に包まれる。
「誰に何を言われてもね、キルアの人生はキルアのものだよ。人生は夢だらけってね」
突拍子で脈絡もない言葉。
口調は軽かったが、凛と大人びた声色をしていた。
ていうか、これって。
「ばっか!何してんだよ、なまえ!」
「そうそう。元気なキルアが一番だよー」
ぎゅっと抱きしめられて、体温が一気に上がっていくのがわかる。
心臓がうるさくて甘い匂いに頭がくらくらする。
「嫌でもちょっとだけ我慢してね」
すぐおわるから、と言われてなんのことだと疑問に思う。
じんわりと体の中心から広がる、不思議な満足感や満腹感みたいな感覚。
パッとなまえの体が離れていき、なんだか名残惜しく感じた。
ハグってリラックス効果あるんだ、なんて笑って話すなまえはいつもと変わらなくて。
オレばっかりが意識してなんかくやしかった。
「キルア、顔真っ赤」
「なまえのバカ!お前って、ほんっとアホ!」
「えー?って、わー!枕投げするなら明日とかにしようよ」
「明日は最終試験だっつーの。もうねーよ、バーカ」
「なんで?試験おわってもまたあそぼうよ」
一瞬、息の仕方さえ忘れた。
オレの顔を見て瞬きするなまえにとって、きっと深い意味もない言葉。
時計の針が12時を指した。
明日に備えてそろそろ寝るね、と部屋を出ていくなまえを呼び止める。
ゼビル島のときとは違い、今度は立ち止まってオレの方をちゃんと見ていた。
それだけなのに、なんかすげーうれしかった。
「…おやすみ」
「おやすみ。明日の試験、合格しようね」
にっこりと笑ったなまえがいなくなって、扉が閉まる音がやけに虚しく響いた。