ゴン視点

くやしい。
殴られた衝撃でまだ頭が震える。
44番のプレートを残して、ヒソカは立ち去った。
他の人にずっとつけられてるのに気づかず自分のプレートを奪われて、ヒソカから一度奪ったプレートを借りだと言われて置いていかれて。
ヒソカにやり返せなかった自分が、くやしくて情けない。
毒にやられた体は言うことを聞かず、意識もだんだん朦朧としてきた。
足音がして、誰かが近づいてくる。
必死に手足を動かそうとしたけど、もうさっきみたいには立ち上がれない。
プレート、取られちゃうのかな。
足音が止まり、頭をゆっくりと持ち上げられる。
まぶたは重くて開かない。

「解毒剤、飲み込んで」

吐き出す力もなくて、口に流された水と共に飲み込む。
浮遊感がして、どこかへと運ばれるみたいだった。
女の人特有のこの柔らかな匂い。

「ゴンはよくがんばったよ」

ぼんやりとした頭に声が響いたが、うまく聞きとれない。
じんわりと体の中心があたたかくなる心地よい感覚。
ミトさん。
くじら島を出る前、ミトさんに抱きしめられたあの時を思い出した。
匂いがだんだんと薄れていく。
意識を手放す前、うっすらと開いた目には見知らぬ女の人のうしろ姿とその肩に降り立つフクロウが見えた。

目を覚ますと、野原ではなく大木のほらあなに寝ていて、体の痺れはもうすっかりと消えていた。
包帯やテープで傷を手当てされていて、手の包帯も新しいもの。
ヒソカに殴られた右頬はまだ大きく、腫れは引いていなかった。
足元には2枚のプレートと赤いりんごが1つ。
あの人は。