願い叶えし刻
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「君は…えっとトシさんが言っていた大滝ひまりさんかね?」
”トシさん”って言うのは土方さんのことだろう。小さく頷くと、彼は微笑んで言った。
「私は井上源三郎。これでも6番組組長です。気軽に源さんって呼んでくれ」
ふとその名前に、前に藤堂さんの『って言っても作ったのは源さんなんだけどね』というセリフが蘇る。――もしかしておにぎりを作ってくれた人?
「随分前ですけど、おにぎりありがとうございました」
「あぁ、口に合って良かったよ。それにしても沖田君は、いないかぁ。困ったな」
「あの、何かあったんですか?」
「いや、実は今日の
困ったように笑う源さんを見ていると、何故かこっちの気が引けて。ふとある提案が頭に浮かび上がったが、流石にずうずうしいだろうと言葉を飲み込む。
「しょうがない。沖田君が帰ったらすぐに伝えておいてくれるかい?それまで、私が作っておこう」
苦笑しながら部屋を出て行こうとする源さんを、躊躇いながらも呼び止めた。
「あ、あの!も、もしよろしければ、私がかわりにお手伝いします…!」
私の言葉に驚いた顔をしている彼に、やはりずうずうしかったかと不安になり俯く。
「それは大助かりだよ。頼まれてくれるかい?」
「は、はいっ」
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「ひまりさんは前菜を頼まれてくれないか?」
「分かりました」
使い方とかよく分からないし、この時代の味に合わせてなんて作れないけど、料理は得意な方。あれだけ、叩き込まれてきたんだ。慣れない江戸時代の台所を忙しなく動き回ること30分。
「で、できた…!」
ふぅー、と安心していると、源さんがどれどれ、と近付いて来た。
「味見してもいいかね?」
「はい」
おひたしを口に入れた源さんを心配そうに見る。「うん、美味しい」と、微笑む彼に、私も思わず頬が緩んだ。
「でも……」
ふと言葉を濁らせる。ん?と首を傾げる彼に思いきって質問する。
「な、何で、疑われている私に手伝わせたんですか?きっと土方さんが怒ります…」
もしかしたら長州かもしれない、つまり敵かもしれないのに。それを源さんは知ってるはず。
「あぁ、でも君は心から私の力になりたい、という目をしていたからかな。その真剣な目は、沢山見てきたからすぐ分かるよ。さて、あとは運ぶだけだ。手伝ってくれるかい?」
大きく頷き、お盆を持つ。みんなの口に合うかな、と心配と期待が入り混じった気持ちで源さんと共に、大広間に食事を運びにいくと既に3,4人集まっていて。
「おっ!ひまりちゃんじゃないか!」
豪快に手を振る永倉さんに、驚いた顔をしている藤堂さん。それに、怪訝な顔でこちらを睨む知らない男の人に、まるで興味がないかのようにこちらを見向きもしない男の人。たくさんの隊士が集まった大広間の光景に圧倒されそうになりながらも、お盆を置いて準備をしていると、また誰かが入ってくる音がした。振り向くと、固まったままの土方さんがこっちを見てて。
「……っ」
彼の眉間に深い皺が寄っていくのを見ながら、私は思考回路が停止する。
「何でお前が昼餉を担当している?」
「トシさん、これは事情があって」
「総司のやつはどうした?」
「それが外出中らしく、代わりに手伝ってもらってたんだよ」
源さんが必死に代弁してくれている。周りの人もひやひやとこっちの様子を伺っていて。