願い叶えし刻
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それから3日ほど経ったある日。沖田さんはどこかに出かけ、部屋で一人何もすることなくボーッとしていると、襖の向こうから呼びかけれた。
「総司ぃ、いるかぁ?酒持ってきたぞ、酒ぇ」
「えっと…、お、沖田さんはいません…!」
「おっ!お咲かぁ?」
ガラっと襖があき、お酒の瓶を持った大男が赤い顔で笑ってた。ぷぅ~ん、とお酒の匂いが届いて、思わず顔をしかめそうになるのを堪える。
「何で、お咲がここにいるんだぁー?珍しいもんだなぁー」
酔っ払いの男の人はふらふらの足取りで、畳にドカッと胡坐をかぐと、ぐびっと酒を飲んだ。酔っている。お酒臭い……。
「あの……誰ですか?」
「お咲、俺のこと忘れちまったのかぁ?原田左之助様だぞぉ?」「・・・・あ、あぁ・・・」
なんとなく相槌を打っておく。どうやら、酔って私を咲さんと勘違いしているらしい。
「ったく、総司のやつはまた甘味屋かぁ?遊郭より、甘味をとるなんて馬鹿げてるわぁい」
「遊郭?」
「お咲も行ってみたいかぁ?男装すれば、女どもがわんさか寄ってくるぞぉ」
にやつく彼に、首を激しく横に振る。
「それにしてもよぉ、3日前のの斬り合いは珍しくよぉ総司のやつ手こずってたなぁ。お咲、あいつ何かあったんかぁ?」
ふとその日の夜の出来事を思い出す。いつもと違った沖田さん。
「ん?お咲、お前もしかして・・・」と怪訝に首を傾げて、私の顔を覗き込む原田さん。やっと人違いってことに気付いてくれたのかと思えば――
「いつの間にか、別嬪さんになったなぁ」
「・・・・」
思わず、ガクッと肩を落とす。
「ははぁん、恋だな。想い人でもできたかぁ?」と、意味深な顔で聞いてくる原田さんに、慌てて即答する。
「いや、できてません」
「何、まだ過去のこと引きずっているのかぁ?」
何気ない彼の言葉に、ズキッと心に棘が刺さる。まるで自分の過去のことを言われたみたいで。
「あんなやつは忘れっちまえぇ!なんなら、俺が嫁に貰うかぁ」
咲さんも過去に何かあったのかな?忘れっちまえってことは、想い人がいたってこと?
「どした?真剣に俺のことで悩んでるのかぁ?」
がははと大声で笑う彼に苦笑いする。悩んでたのは、咲さんのことなのに。誤解を解くのも面倒くさくて、ため息をつく。
「おしっ、俺は新八ところ行ってくるぜ!またなぁー!」
一通り好き勝手に話して彼は満足したらしい。結局私を咲さんと勘違いしたまま手を振って部屋を出ていく彼が部屋からいなくなって、ようやく平和な静寂が訪れたけど。まだ残る酒の匂いに少し顔をしかめた。
少しすると、また足音が近づいて来て。もしかしてまた原田さんかな、と構えると、別の人の声がした。
「沖田君、いるかね?」
「あ、外しゅちゅ・・・外出中です」
噛んでしまって、襖の向こうで笑い声が聞こえた。……もうやだ。何で今日はこんなに人が訪ねてくるの。
「開けてもいいかね?」と尋ねられ慌てて「はい」と返事をする。中に入ってきたのは、青年というより優しそうなおじいさんだった。