浅葱色の空
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こうやって女子二人でお買い物ができるなんて。平成ではあまり経験しなかったな。それよりも、まず外に出るのがあまり許されてなかったからなぁ。まるでそのことが遠い過去のようだ。
「ひまりちゃんひまりちゃん!私、これに決めたわ。どうかな?」
彼女の手の平には、橙色の簪が乗せられていた。元気でいつも笑顔な咲さんにぴったりの色で。
「すっごく咲さんに似合うと思います!」
「ありがとう!ひまりちゃんは買わないの?」
「私は大丈夫です」
咲さんの勘定を終え、私達は甘味屋に行くことになった。
「みたらし団子とお饅頭と・・・あとは何がいい?」
「それだけで十分ですよ」
笑いながら言うと、咲さんはお店の人に注文する。
「咲さん、甘いの好きですよね」
「大好き!けど、沖田さんには負けるかな」
「沖田さんはかなりの甘党ですもんね」
出てきたみたらし団子と饅頭に目を輝かせながら、私達はすぐに頬張った。
ふと帰り際になって、私は咲さんに頼み込む。
「ちょっと寄りたいとこあるんだけど、いいですか?」
「もちろん」
甘味屋の近くにある、幸さんと五郎さんの家。3ヵ月前まで焼け焦げていた家が今はもう復活していて。早まる鼓動を抑えながらも、玄関で彼らの名前を呼ぶ。
「はーい、今いくでぇ」と、家の中から響いた幸さんの元気そうな声にホッと胸を撫で下ろす。そして、ガラガラと開いた戸から覗かした幸さんの顔を見た瞬間、いろいろな想いが混じりあって。言いたいことが沢山あるのに、声が出てこなくなってしまい――。
幸さんも驚いているようで、目を見開いて固まっていた。そんな彼女に向って「……っ無事で良かったです。どこも怪我とかしてないですか?」と声を搾り出す。
「うんうん、凄い火だったけど、運良く逃げ切れたさぁ」
「五郎さんは?」
「今は出かけているよ。それにしても心配かけちまったみたいですまなかったねぇ。ここには2週間前に帰ってきたばかりで、色々忙しかったんよ」
「何か手伝えることがあったら、遠慮なく言って下さいね」
うんうん、と頷く幸さんに、また来ます、と言って別れる。こうやってまた元気な姿が見れただけで、十分だ。
「・・・えっと、ひまりちゃんの両親ではないよね?」
おずおずと話しかける咲さんに、私は首を横に振りながら言う。
「親ではないですけど、でも、親みたいな存在です。私の凄く大切な人達だから」
真っ赤に染まっている紅葉がひらひらと舞い落ちるのを見ながら、微笑む。
「そっか、じゃあ、あの大火から無事で良かったわね!!」
嬉しそうに頬を緩める私を見て、咲さんも嬉しそうに微笑んで言った。
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屯所前で、イチョウや紅葉など色とりどりの葉を箒でかき集めながら、ボーっとしていると目の前を子供たちが走り抜ける。
「あ、お姉ちゃん、こんにちは!」
中には、一緒に鬼ごっこやかくれんぼをした子もいて。私を見つけるなり、嬉しそうに寄ってきた。
「一緒に遊ぼうよ!」
「うーん、今ちょっと仕事してるからごめんね?」
困ったように笑っていると、子供たちは面白くなそうな顔をする。
「そっか・・・。じゃあ総司は?」
「えーと、部屋で休んでるかな。今日はお休みの日っぽいから」
巡察がないって言ってたのを思い出して、首を傾げながら言う。子供たちは、今日は遊び相手がいないと分かると手を振りながら駆けていく。楽しそうな笑い声が聞こえて、私も手を振りながら微笑む。元気だなぁ。なんておばさんみたいなことを思っていると、屯所から藤堂さんが顔を覗かせた。
「・・・子供たちもう行ったか?」
「あ、はい・・・どうしたんですか?」
キョロキョロしながら出てきた藤堂さんは頭を掻きながら、ぼそりと言った。
「いや、さっきでてったら絶対子供たちと遊ばされそうだったから」
そういえば、子供苦手だって言ってたっけ。それでも、なんだかんだ言って一緒にかくれんぼしてた藤堂さんを思い出して、口元を緩ませる。
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