浅葱色の空
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その日は、局長近藤さんの招集を受けて、隊士たちが広間に集結していた。私と咲さんも、端の方で見守る。
「会津藩からの正式な要請で、長州制圧のため出陣せよ!とのことだ」
近藤さんの言葉に、室内がガヤガヤする。私もごくりと息を呑む。
「いよいよ、この時が来たか」と、ニヤリ笑う原田さんと永倉さん。
「新選組の晴れ舞台ですね」と、嬉しそうに言う沖田さん。
みんなが興奮していて。それと反対に、私は不安に駆られる。
「総司は体調が万全じゃねぇから、留守番だ」と言う土方さんの言葉に、沖田さんは不服そうに文句を飛ばしている。
「まぁ、留守番組として屯所を守るのも大事な役目ですよ」
ふと山南さんが自嘲気味に笑って、その場は収まった。そっか、彼も怪我をしているから出動できないのか。唇を固く結ぶ彼の横顔を見ながら、なんとなく心が曇った。
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「ひまりちゃん」
廊下を歩いている途中で、ふと咲さんが私の名前を呼んで、駆け寄ってくる。
「咲さん?」
「今回はもうあのような真似はしないでね」
「え?」
怪訝に首を傾げると、咲さんは不安そうに言った。
「池田屋事件の時、私はひまりちゃんが一人で池田屋に走っていたって聞いてとても怖かった。命に関わるようなことがあったらって、凄く心配で堪らなかった」
彼女が顔を歪めるものだから、本気で心配したんだなと申し訳なくなる。
「だから今回も・・・・」
「大丈夫ですよ。実はさっき土方さんに屯所で待機していろとキツク言われたので、大人しく咲さんとお留守番です」
彼女の言葉を遮って微笑めば、安堵をついた咲さん。
「ひまりちゃんって見かけずによらす無鉄砲だもんね。私まで、ひやひやするよ!!」
「ごめんなさい」
自分では自覚ないなぁ、なんて苦笑いする。でも、五郎さんや幸さん、咲さんといい心配してくれる人がいるって本当嬉しい。本当に、幸せなことだと思う。
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見たこともないような大きな入道雲に目を細める。真っ青な空の下、同じ色の羽織を着た新選組は山南さんと沖田さんを残して出陣した。いつもと違って静かな屯所に、蝉の声が虚しく響き渡る。今、彼らは何しているんだろう。夏の匂いを思いっきり吸い込む。
――彼らが無事に帰ってきますように。そう願ってから、ふと自嘲する。ほんの数ヵ月前までは「死にたい」なんて願ってた奴が他の人の安否を気にしているんだなんて。
「ひまりさん、金平糖いりますか?」
「えっ・・・あ、はい」
突然の沖田さんに驚く。この人は本当に気配を消すのが上手い。手のひらに転がる数粒の金平糖が懐かしくて、思わず顔が綻ぶ。
「まさか沖田さんが金平糖食べるだなんて」
「俺、甘党ですから」
「えッ・・・」
金平糖を口に入れれば、カリッという固い食感に口の中に甘さが広がって。
「美味しい~」と夢中で食べる私の横で、沖田さんはじーっと私を見てた。
「な、何ですか?」
「いや、ひまりさん変わったなぁって。来た時よりも明るくなったし、表情豊かになった」
嬉しそうに言う彼に、ふと考える。確かに変わったかもしれない。色とりどりの金平糖を見ながら、ふと思う。あの頃の私の世界はモノクロで、けれどこっちの世界は色がついていて。