浅葱色の空
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梅雨も明け、本格的な夏がやってきた。油蝉が休むことなく鳴いているように、新選組も京の取り締まりに励んでいて。けれど、あまりの暑さに、熱中症になる隊士が続出していた。
「冷房がなしでこの暑さはきついなぁ」
額の汗をぬぐって、井戸まで水を汲みに走る。ふと井戸には先着がいて。誰だろうと近付くと、見覚えのある男の人が手拭いを濡らして汗を拭いていた。彼は私に気づくと横にどいてくれた。
「あ、すみません。ありがとうございます」
私が桶に水をいっぱいにしている間も無言で。何か喋ったほうがいいかなって思いながらも、ふと彼を見る。物凄い汗に目を見張る。
「稽古の後ですか?」
「あぁ」
「お疲れ様です。えっと、名前は確か・・・」
「斎藤一。貴女は大滝ひまりさんだったか?」
「あ、はい。斎藤さんも、熱中症には気をつけて下さいね」
そう言って会釈をし、私はいっぱいになった桶を持ち上げ、歩きだす。新選組の隊士の名前はまだぜんぜん覚えられないけれど、これでも結構顔見知りの隊士ができてうれしく思う。原田さんや藤堂さんは気さくでよく話しかけてくれるけど、それ以外の隊士とはあまり話す機会ないからなぁ。
――なんて思いながらえっちらおっちら運んでいると、急に桶が軽くなって。びっくりしていると、いつの間にか隣に斎藤さんがいた。
「女一人では、これは重いだろう。俺が運ぶ」
「え、あ、そんな。申し訳ないです!大丈夫です。こう見えても力あるので!」
「・・・・全くそうは見えないけどな」
私を見て、ぼそりと呟いた彼。
「どこまで運べばいいんだ?」
「勝手場です。すみません」
結局、斎藤さんが桶を運んでくれることになった。
「ありがとうございました」
「礼には及ばぬ」
そう言いながら、勝手場から出て行った斎藤さんに頭を下げ、再び夕餉の支度に取り掛かる。栄養満点のメニュー考えて、熱中症対策でもしようかな。ほうれん草とカブと鰯・・・野菜少ないな・・・。買い出しに行こうかな、と悩みながら食材を確認していると、後ろから声がした。
「ひまりちゃーん、何か手伝う?」
「あ、咲さん。えーと、私ちょっと野菜買ってくるので、ここ頼んでもいいですか?」
快く頷いてくれた彼女に勝手場を任して、私は急いで町に出かけようとする。門を出ようとしたところで、偶然にも沖田さんと会って、話しかけられた。
「ひまりさん、どこ行くんですか?」
「ちょっと買い出しです」
「じゃあ、俺も付き合います」
申し訳ないですよ、と断っていたけど「帰り荷物重くなったら、困るでしょう?」と言われ渋々承諾する。確かに新選組隊士は多いから材料が沢山必要なのだ。
「まず何が必要?」
「きゅうり、そして茄子。あとは大根です」
「……野菜ばかり」
嫌な顔をする彼に、栄養満点ですからと得意げに笑う。
相変わらず夏の暑い日でも、町の人々は元気で。
「おじさん、この大根お願いします」
「おっ、嬢ちゃんいい目してるね。これはとれたて新鮮ほやほやだぞ!」
「へぇー、俺には全然分かりませんけど」
大根を一つ一つ真剣に眺めるものだから、思わず吹いてしまう。