浅葱色の空
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「お疲れ~」
「楽しかったか?」
「永倉さんを鬼にしてはいけないとよく分かりました」
木陰に待機していた藤堂さんと原田さんのもとへ行くと、彼らが笑いながら尋ねてきた。走りにくい着物で疲れた。額の汗をぬぐって、ふぅため息をつく。
「新八は勝負事は何でも本気で挑まねぇと納得いかねぇ奴だからなぁ」
「そういえば、随分前に『子供相手でも油断は禁物』とか語ってたしな!」
彼らの言葉に苦笑する。
「代わりに原田さんが鬼をやったらどうですか?」
「いやいや、俺は酒飲みながら、眺めてるだけで十分だぜ」
昼間っから、酒を手にする原田さんに半ばあきれながら、藤堂さんにも聞いてみる。
「俺、子供相手にするの苦手だからなぁ」
「へぇ・・・意外です」
「いつもは総司の奴が、子供の相手してるからな」
「あいつは子供の扱いうまいよなぁ」
3人で話していると、くたくたになった永倉さんが帰って来て「疲れたあああああ」と盛大に溜息をつきながらドカッと地面に胡坐をかく。すると、子供たちもやってきた。
「今度はかくれんぼしようよ~!」
あんなに走ったのに、まだ元気な子供たちは今度はかくれんぼを提案してきて。「若いなぁ・・」なんてしみじみ呟けば、それを聞いた原田さんが笑いながら言う。
「何言ってんだよ。ひまりちゃんも十分若いぞ」
「左之助さんはもうおじさんだもんな」
「んだと、平助。言ってくれるじゃねぇか」
そこで、子供たちが再び口を揃えて言う。
「かくれんぼしようよ~!」
「俺、今鬼やって疲れてるから、他のお兄ちゃんに頼みな」
永倉さんの言葉にその場にいた私達は、顔を見合わせる。きっと3人とも考えていることは同じで。絶対やりたくない。
「俺、夕方巡察あるからごめんな」
「さっきまで俺、巡察でくたくただから無理だな」
「え・・あ、私は今鬼ごっこしましたので・・・ご、ごめんね?」
それぞれが各自の言い訳を小さな声で言う。えぇーっ、と頬を膨らませる子供たちに、心がいたたまれなくなって。藤堂さんと原田さんも困ったような顔をしていた。
「じゃ、じゃあ折角だからやりましょうか!藤堂さんと原田さんも一緒にね!!」
「やったぁああああ!」
飛び跳ねるくらい嬉しかったのか、と思わず苦笑いしていると「勘弁してくれよ、ひまりちゃん」「こうなったら、しょうがないな」と、2人も渋々と腰を上げてくれた。
「じゃあ、このお兄ちゃんが鬼ね!!」と、一人の少年が藤堂さんを指さす。
「え、お、俺!?」
戸惑う彼を他所に、皆が一斉に走り出す。
「藤堂さん、頑張ってください」
「平助、大人げないことするなよ~」
私と原田さんも子供たちと一緒に隠れる場所を探す。
「俺はあっちのしげみの方に行くわ」
「分かりました」
原田さんと別れて、どこに隠れようか少しの間悩む。そしてお寺の建物の陰に向かうと、そこには一人の少年がいた。
「あ、私もお邪魔していいかな?」
「うん、いいよ!一緒に隠れよう!!」
にこにこ微笑む彼。遠くでは、藤堂さんが数を数えていて。なんか、かくれんぼなんて何年振りだろって考えてしまう。まさかこんな歳でやるとは思わなかったな、なんて一人でに笑ってしまう。
「何が面白いの、お姉ちゃん?」
「え、あ、いや。こうやって遊ぶのもたまには悪くないかなって」
「変なのー。・・・お姉ちゃんって新選組の人でしょ。総司と仲いい、ひまりさん?」
「・・・え、あ、ひまりだけど・・う、うん。仲いいのかな?まぁ普通に仲はいいか」
一人でに呟いていると、その子は笑いながら言った。
「あはは、総司が言った通りだ!!!」
「・・・え?沖田さんなんて言ってたの?」
固まって、思わず聞き返す。
「新しく来たひまりさんっていう人は謎が多くて、面白くて、静かだけど慌ただしい人で、見ていて飽きないですよって」
お、沖田さん!何で子供にそんなの話してるんですか!!それにしても、謎が多くて、面白くて、静かだけど慌ただしい人ってどういう人!?貶しているのか褒めているのか、よく分からない言葉。だけど、何故か嬉しくて。少しだけ恥ずかしいようなくすぐったいような。
その瞬間――、
「はい、2人ともみつけた」
そう言って、藤堂さんが姿を現した。
「え、あれ!?まだ少ししか経ってないような。見つけるの早いね!」「だって、話し声が聞こえたから」
ハッと口を押えて、その男の子と顔を見合わせて、思わず吹き出した。初夏の風が吹いていた。