願い叶えし刻
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血の海から聞こえてくる微かな息の音や呻き声に、耳を塞ぎたくなる。気を抜けば、恐怖で足は動かなくなりそうで。
「クッ!まだまだ!!」
ある部屋の中から、刀が擦れる音と藤堂さんの声が聞こえた。慌てて部屋の中へ急ぐ。
「こんな程度か?」
「余裕ぶっこきやがって」
藤堂さんの見事な剣裁きに敵も手こずっているようで。
「なっ、何でひまりちゃんが!?」
「怪我人の面倒を……って藤堂さん前見ないと危ないですって!」
オロオロしながら言う私に、彼は笑った。
「俺は大丈夫だって」
いや大丈夫じゃないでしょう、と言おうとしたところで隣の部屋から物凄い大きな物音が聞こえた。
「そ、総司!?」と、藤堂さんが心配そうに他所見した瞬間、敵が斬り込む。
「おらあああああああああ!」
「うおっ、あっぶね」
ひらりと避けたが刀の先が掠って、わき腹に赤い線が浮き上がる。ヒュッと背筋に冷たいものが走って、彼の名前を叫んだ。
「藤堂さん!」
「くっ、俺より総司を見てきてくれ!!」
「で、でも……」
藤堂さんは脇腹をおさえながらも「こんなかすり傷どうってことねぇよ」と、へらっと笑う。
「早く総司のとこに!」
彼に叫ばれて、後ろ髪をひかれる思いで隣の部屋に走った。
物音がした部屋を覗いてみれば、目の前の光景に思わず絶句して固まった。血だらけの部屋に血だらけの2人が刀を交えていて。
「どうやら動きが鈍ってきてるようだが?」
と、沖田さんに向かってふっと鼻で笑う男は見覚えのある人で。
――あ、この人確か、前に河川敷で会った……
「よ、吉田……とし…まろ……?」
固まりながらボソッと零すと、どうやら私の声を拾ったらしい沖田さんと吉田さんが瞬時にこっちを向いた。
「ひ、ひまりさん?」
目を見張って驚く沖田さん。
「あれ~、この間の子じゃん。何でこんなところにいるのかな?」
一方の吉田さんは、面白そうに喉を鳴らしながら目を細めた。
「吉田稔麿、お前の相手は俺だろ?その子には近づかないでもらえる?」
「・・・ッチ」
再び金属音が鳴り響く。鼓膜を通して全身を震わすような刀のこすれる音に、ただただ圧倒されて、体が動かなくて。
「ホント嫌になっちゃう」
「それはこっちの台詞なんだけど?」
凄い迫力。沖田さんの冷たい凍てつくような目と弧を描くように笑う口元。笑っているのに笑っていない。背筋が凍る。
どのくらい打ち合っていたんだろう。ほんの数分かもしれないけど、物凄く長く感じた。突然沖田さんが咳き込み始めて。
「あれ~、もう疲れちゃったのかな?沖田もここまでだね」
「ごほっ・・・そういう君も相当疲れてるっぽいけど。ごほっごほっ」
咳をして口を押えた沖田さんの手には、血がべっとりとついていて。なおも苦しそうに血を吐き、よろける沖田さんに駆け寄る。
「ごほっ・・・大丈夫だから、早くここから出て」
「そんな血を吐いてるのに……っ」
沖田さんを支えながら、顔をしかめる。肩ではぁはぁと辛そうに息をする彼は、どう見てもこれ以上戦える様子ではなくて。体中にはかすり傷から血が滴り落ちている。
「おいおい、女のお前が出しゃばってくんなよ~。斬り殺してほしいわけ?」
その瞬間、吉田さんは風の如く、刀を振りかざして迫ってきた。あまりにの速さに私はギュっと目を閉じる。