願い叶えし刻
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「ひまりちゃん、少し待ってろ!」
なんで……なんでここに……。
勝手に飛び出してきた私を追ってきた彼らに驚いて固まっている私を他所に、2人は殺気立っていって。”吉田稔麿”と呼ばれた男は刀に手をかけながら、面白そうに言った。
「この女は新選組のものか?」
「そうだと言ったら?」
「使えそうだね」
腕を掴んでいた男が、今度は髪を引っ張る。
「……痛ッ」
頭に走った激痛に、顔をしかめる。
その瞬間、刀と刀がぶつかる金属音が響く。喚き、刀を振り回し、血が飛び交う。いつの間にか、私を縛っていた人も戦いに参加して、自由の身になっていた。初めて見る、人と人の斬り合いに、ただ圧倒された。
「ひまりちゃん、こっちだ!!」
永倉さんに呼ばれ、ハッと我に返る。慌てて彼に誘導されて、安全なところに移動する。
「な、永倉さん、何でここに?」
「助けにきたに決まってんだろ!!!」
ニカっと笑う彼。鼻の奥がつんとなって唇を嚙みしめた。沖田さんを見ると、吉田っていう男に苦労しているようで。強い。吉田 稔麿って本で見かけたことあるような名前だけど…誰だっけ…?倒幕派…?
二人ともも互角だ。激しい打ち合いに息をのむ。ふと沖田さんの背後で刀を構えている男が目に入って。
「…っ!」
言葉が出るよりも早く体が反応した。沖田さんが、斬られる!
「ひまりさん…!」
驚く沖田さんを他所に、彼の背後に回る。刀が振り下ろされる瞬間、キツク目を閉じた。左腕に走った鋭い痛みに、呻き声をあげる。
「ひまりさん!」
「ひまりちゃん!?」
地べたに倒れ込むように膝をついた。
「飽きた。お前ら行くぞ」
吉田稔麿が、刀を鞘に仕舞いんがら一言呟いた。
「沖田総司、次会ったら殺してあげるから」
「それはこっちの台詞」
去っていく吉田稔麿たちの背中がぼんやりと霞んで見える。どくどくと溢れだす血が腕を伝って、道を赤に染めていく。自分の血がこんなにも溢れ出すのを見るのは初めてだ。鼻につく鉄の匂い。感覚のない左腕。「死」というワードを頭の中で浮かべながら、意識を手放した。
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屯所にて。
沖田の腕の中で、ぐったりとしているひまりを見て土方と藤堂は目を見張る。
「総司、何があった?」
「事情はあとです。彼女の処置を先に。平助、すぐに山崎君を呼んできて」
「わ、分かった」
慌てて駆けだした藤堂を横目に沖田は自分の部屋にひまりを寝かす。
「ひまりさんは俺を庇って、長州の奴らに斬られました」
「っ!??」
ぽつりと零した沖田の言葉に、土方は目を見開く。 布団に横たわって、苦しそうに顔を歪める彼女の腕からはどくどくと血があふれ出ていて。
「土方さん、長州のやつらはバラバラに逃げられちまったぜ。それより、ひまりちゃんは!??」
「今、山崎を呼んだ」
永倉は、苦しそうに呻きながら顔を歪めるひまりを見て「くそ、あいつらっ!」と怒りを露に拳を畳にぶつけた。