【長編】運命の糸
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『…っ、倫くんは優しすぎるよ…っ』
「いおり限定だよ」
『……っ!』
倫くんのその台詞に、息を飲んだ。一気に時が戻り、春の日の優しい記憶が蘇って、脳内に会話が蘇る――
『倫くんは、運命って信じる?』
「なに唐突に」
『いいからいいから』
「さぁ、どうだろ」
桜の花びらが舞う春の夕暮れ。柔らかい風が、倫くんのサラサラの綺麗な黒髪をなびかせている。
「ーーいおりは?」
『信じるよ!倫くんとの運命の赤い糸!』
意気込んでそう言えば、倫くんは「ふはっ」と笑った。
「絶対それ言うと思った。いおりらしい」と、目を細めるなり、ふいに私の頭に手を伸ばして「桜の花びら、ついてるし」と優しく髪に触れる。その瞬間、春一番が吹き抜けてーー
「いおり限定で、俺も信じてる」
――あの時の幸せな記憶に、涙が溢れて頬を伝った。
運命を信じていたあの頃。だけど、事故にあって怪我をした時、その運命を呪った。倫くんと別れることになって”運命の赤い糸”なんて騒いでた自分が馬鹿馬鹿しく思ってたのに――
『…倫くんのことが好きです…っ、もう、離れたくないです…!』
ぼろぼろと泣きながら彼を見てそう言えば、彼の大きな手がそっと涙をぬぐって優しく頬を包み込んだ。
「うん、俺も好きだよ。もう離さないから、絶対に」
ふっ、と優しく目を細めて笑った倫くん。不意にぐいっと腕を引っ張られて、引き寄せられたかと思えば優しく抱き締められた。ふわり、と彼の香りに包まれる。懐かしくて温かくて愛しくて、涙が止まらない私を見て倫くんが「体中の水分ぜんぶ出し切りそうな勢いだね」なんて場違いな発言するから、思わず泣き笑いの顔になってしまって。
その瞬間、唇が重なった。え、と目を見開いてびっくりしている私を他所に彼が、ふっ、と笑う。
「久しぶりのキス、しょっぱい」
『……っ!な、泣き止むから待って!』
「いいよ、どんな味でも。泣き顔も可愛いし」
そうして、また唇が重なった――。
ーFINー
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