【長編】運命の糸
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久しぶりに登校した私は、今までの重要提出物やらプリントやらが沢山溜まっていて、放課後教室に残ることになった。次々とクラスメイトが帰っていく中で、倫くんが私の前の席の椅子に座って、私と向かい合う形になった。
一瞬どきりとしたけど、作業に集中しているフリをする。そうすると、カシャッとシャッター音がして。
『あ、倫くん。今、写真撮ったでしょ!』と思わず顔をあげれば、倫くんが「ようやくこっち見た」と笑った。
「いおりの写真2か月も撮れていなかったからね。たくさん撮らなきゃ」そう微笑む倫くんの姿に、思わず胸がぎゅうってなった。言葉を失っている私に彼が「おかえり、いおり」と優しく言う。
「ぜんぜん会えないから、寂しかった」
いつの間にか、放課後の教室には誰もいなくなっていて、二人きりになっていた。窓の外から野球部の威勢のいい声と、ボールが金属バットに当たる清々しい音が聞こえてくる。
――このまま時間が止まってしまえばいいのに。
そう本気で思った。もしくは叶うならば、時間を巻き戻してほしい。
あの幸せだった過去に巻き戻して、もう一度事故に合わない人生をやり直したい。
――そんなの、叶うはずないけど。
『――倫くん、ごめんなさい』
喉の奥から絞り出した声は、微かに掠れていた。
『倫くんと別れたい』
「……っ」
彼の目が見開かれた。
『ごめん、今まで沢山支えてきてくれたのに…、ごめんなさい』
「……俺のこと嫌いになったから?」
『………』
答えられなかった。
嫌いな訳ない。でも、否定も肯定もしちゃいけない気がした。
好きとか嫌いとか、そういうんじゃなくて。今のこの関係性が辛い。
倫くんには可能性に溢れた未来があって、今はなんでもできる時期。かたや私は、あと2か月はリハビリに専念しないといけなくて、自分のことで精一杯。
倫くんの重荷になっているかもしれないと思うたびに怖くなって、倫くんに申し訳なくなって。そんなことない、といくら倫くんが否定しても、これは私の気持ちの問題で。
『私、通信制の高校に編入するの。来週から』
「…え?」
『入院してて単位数がやばいし、これからまた2か月リハビリにも時間とられるから稲高だと卒業できないかもしれない。だから試験やレポートをスクーリングで単位が得られる全日制に編入することになったの』
そう言えば、彼は驚いて言葉も出ないようで。