【長編】運命の糸
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たぶん、私は倫くんに対して少しずつ少しずつ、”見えない壁”を作り続けていたのかもしれない。倫くんは相変わらず毎日LINEをしてくれて、体調や怪我の具合を心配してくれる。
そのたびに「大丈夫だよ」と私は強がって。大丈夫じゃない癖に、彼に弱音を吐けなくなっていた。
怖いと思った。もし「辛い、助けて」と言ったとして、倫くんにとって重たいと思われてしまうんじゃないか、と。毎日LINEをくれるのも、本当は倫くんにとって重荷だったらどうしよう。暫く顔も合わせていないし、デートももちろんできていない。
こんな私と付き合っていて、倫くんは本当にいいのかな?
今の自分が倫くんにとって迷惑で重荷になっているんじゃないか、と思考はどんどんと悪い方向に流れていってしまう。付き合っていることに対して、段々と罪悪感みたいなものが、薄く薄く重なりあっていく。
彼のことが好きなはずなのに、今の彼と隣に立てる自信がない。
彼のことを喜ばせたり、笑顔にさせるどころか、私はいつも彼に不安な顔をさせたり心配させてしまう。もしかしたら彼はもう義務感みたいなもので私を守らなきゃとか、可哀想だから付き合っているのだとしたら、と考えると言いようのない胸の苦しみに襲われる。
そしてなによりも。
今、付き合っていることが、とても、辛いと感じてしまう自分が、一番怖い。
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骨の癒着は順調で、あと2か月間リハビリを真面目にやれば完治するから、とお医者さんに励まされた。その頃には、すっかり季節は秋めいて、ひんやりとした木枯らしが吹き抜けるようになっていた。
左脚の太い骨を骨折してしていたため最初は車椅子生活だったが、松葉杖で歩けるようになると、学校にも登校できるようになった。
久しぶりに制服を着て、久しぶりに学校で倫くんと会う。
この約2か月弱、入院と一時退院を繰り返しながら、授業に出れない分の遅れを取り戻すための勉強と、軽いリハビリに専念するというのを理由に、私はほぼ倫くんと会っていなかった。たぶん4回くらいしか会っていない。
会いたい。だけど会いたくない。
好き。だけど怖い。
相反する感情が、より一層私の心を締め付けて、苦しかった。気を緩めば、去年の懐かしい倫くんとの思い出が蘇ってしまう。まだ私が事故に会う前の、元気で、純粋に倫くんを好きいれた日々は、今の自分にとって凄く眩しくて、できればもう思い出さないように心の奥底に封じ込めたかった。
だから、決めた――
今日彼に会ったら、伝えようと。
私の勝手なわがままだけど、でも、もう全て終わりにしよう、と。