【長編】運命の糸
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左鎖骨部と左足の骨折で、骨癒合まで2か月以上、リハビリで2か月以上、つまり全治にはおよそ約4か月はかかると、これが私の診断結果だった。
あの日の朝起きた出来事。交差点の青信号で、信号無視のトラックが勢いよくつっこんできて。避けきる暇もなかった私の体は、トラックに勢いよく跳ねられ、アスファルトに左半身を強打。3日間意識がなく、目覚めたときには、体のあちこちは痛くてギプスで強く固定されていた。
「今日はそろそろ帰るね。またお見舞い来るから」
ベッドサイドの椅子に座っていた親友が、立ち上がった。
『うん、ありがとう。ごめんね、わざわざ』
「何言うてん。親友の一大事にのほほんとしてられないやろ。あと角名くんもほんまに心配そうにしてたで。部活あってお見舞い来れなくて、ほんまに申し訳なさそうにしてた」
『…うん、わかってる。ありがとうね』
ばいばい、と親友の姿が病室からなくなり、手元の色紙に目を見落とした。
今、親友が持ってきてくれたクラスメイトたちの寄せ書き。色紙の中央に《早く良くなりますように》と大きく書かれて、その周りにクラスメイトたちの手書きメッセージが散りばめられている。
その中の一つ、倫くんの手書きメッセージには「信じて待ってるから。いつでも連絡して。俺もするから」と書いてあって。ふと視界がぼやけたと思えば、涙がじわじわと溢れて、ぽたっと色紙に落ちた。
大好きな彼の、少し癖のある文字を指でなぞる。
『ーーっ、倫くんっ』
入院から2週間経っていた。倫くんは2回お見舞いに来てくれている。最初の1週間は私は誰とも会う気力がなくて、ただただ絶望に打ちひしがれていて、面会を拒絶していた。
その間もクラスメイトや倫くんからのLINEメッセージが届いていて。それらに返信しながら1日1日過ごしているうちに、少しずつ元気も出てきて。入院2週間目になって、ようやく倫くんと面会をした。
病室に入ってくるなり、顔を歪ませて苦しそうな表情をしている倫くんが何も言わずに走り寄ってきて、ベッドにいる私を優しく抱き締めた。
温かくて懐かしい彼の温もりと匂いに、堪えてた涙が溢れだして。
「ーー怖かった、」と倫くんの震える声がして。
「事故のこと聞いていおりがいなくなったらって思って怖くなって…」
『……っ』
「生きてて、よかった…ほんとうによかった…」
彼の手が、彼の体がかすかに震えていて。私は声も出ずに、ただただ彼を強く抱き締めて、嗚咽を漏らしていた。