【長編】運命の糸
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『倫くんは、運命って信じる?』
「なに唐突に」
学校からの帰り道、倫くんに唐突に質問すれば彼は眉をひそめた。
『いいからいいから』
「さぁ、どうだろ」
桜の花びらが舞う春の夕暮れ。柔らかい風が、倫くんのサラサラの綺麗な黒髪をなびかせている。
「ーーいおりは?」
『信じるよ!倫くんとの運命の赤い糸!』
意気込んでそう言えば、倫くんは「ふはっ」と笑った。
「絶対それ言うと思った。いおりらしい」
と、目を細めるなり、ふいに私の頭に手を伸ばして「桜の花びら、ついてるし」と優しく髪に触れる。その瞬間、春一番が吹き抜けてーー
「いおり限定で、俺も信じてる」と、大好きな人の甘く愛しい声が耳元で響いた。
ふふ、と私も笑って、二人で手を繋ぐ。温かくて大きくて優しい手。この手を放したくない。ずっと、ずっと手を繋いでいたい。
運命を信じている。
この頃は、ただ純粋に運命を信じていた。
倫くんと両想いなこと、倫くんと付き合えていること。
それがずっと続いていくものなんだ、とーー
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高3の5月。ゴールデンウイーク明けの登校中のことだった。いつも通りに朝起きて顔洗って朝ご飯食べて。いつも通りの日常が続いていくはずだったのにーー
ーーキキィーッッ‼
当たり前の日常というものは、いとも簡単にあっさりと崩れてしまうとどっかの小説で読んだことがあったけど、そんなことは自分の身に起こるはずがないと思っていた。
耳を裂くようなブレーキ音が響いたと思えば、目の前にはトラックがあって。逃げる暇も、息をのむ暇もなかった。ドン、と体中に強い衝撃が走って、息ができなくなったと思えば、全身に鋭い痛みが駆け巡ってーー。
そのまま意識を手放した私が、次に目覚めたのはこの交通事故から3日も経った日のことだったーー。
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