【長編】仮面カップルを卒業したい
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ーーどうして、こんなに優しくしてくれるんだろう。
嬉しくて、でも苦しくて、期待して、でも怖くて。
ああ、もう本当に好きが溢れて、止められない。
再び泣き出した私に、彼がおろおろとし始める。
『ご、ごめん…なさい…ストーカーとかじゃなくて…』
「え?ちゃうの?」
『うん…、あの、寂しくて…』
「え?」
『隣に治くんがいないことが…、っ、さ、寂しくて…、私、治くんのことが好きだから…だから…』
嗚咽を漏らしながら告白だなんて、本当にカッコ悪い。
俯いたまま、唇を噛む。
「…ホンマに言うてる?」
ふと治くんのびっくりしたような声が降ってきて、顔をあげた。そこには、目を見開いて少し顔を赤くした治くんがいて。
「まって、アカン。嬉しすぎて、ちょっと頭おかしくなっとるわ」
と、口元を抑えている彼。
『え?』と私も目を見開いて、彼を見たまま固まる。
「いおりちゃんのこと、俺も好きやから…やから今、ちょっと嬉しすぎてて…」
『え?…うそ』
「嘘やあらへんって!ホンマは、仮面カップルやなくて、本物のカップルになりたいってずっと思っててん」
『……っ、わ、私も!』
思わず大声が出てしまって、慌ててハッと口を抑える。すると治くんが、ふはっ、と目尻を下げて笑った。
「ほんなら、今から本物のカップルやな」
そう言うなり、彼が優しく微笑みながら
「いおりちゃん、俺と付き合おうてください。ぜったい幸せにします」
と、真剣な声で言った。
『…っ、はい!』
さっきまでの切ない苦しい涙とは違って、今度は嬉し涙が溢れてきてーー
「ふはっ、いおりちゃん泣いてばっかやん」
『うぅ、し、幸せの涙です』
「アカン、それは可愛すぎや」
彼がそっと私の涙を拭うなり、涙で濡れた頬に、優しく口付けを落とした。
FIN
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