【長編】仮面カップルを卒業したい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「な、このままデートせん?美味しいパフェあるとこあんねん。行こ?」
こくり、と頷けば、治くんは嬉しそうに顔を緩ませた。ゆるゆる、と私の心がほぐれていく。さっきまでストーカーの人への恐怖心でいっぱいだったのに、今はこんなにも治くんにドキドキしている。
――そうだ、私、今、治くんと手つないでいるんだ…っ!
そう意識し始めたら、なんだか段々緊張と恥ずかしさがあいまって、顔が熱くなっていく。
――どうしよう、不謹慎だけど、私、今すっごく幸せかもしれない。
_____________
_______
『わあ、どのパフェも美味しそうで迷う…』
メニューには、抹茶パフェ、マンゴーパフェ、苺パフェ、チョコレートパフェなど沢山の種類のパフェがあって、頬が緩んだ。
「なにとなにで迷ってん?」
『この抹茶パフェと苺パフェで迷ってる!』
「ほんならその2つ頼もうか」
『え?』
「半分個せえへん?そしたらどっちも食べれるで?」
『え、でも治くんが食べたいのものは…』
「俺、これ全部制覇してんねん」
『え?!』
「俺、甘党でここのパフェ好きやから、ツム無理矢理連れてきて、2日間かけて制覇した」
けろっと言い放った彼に、私はびっくりして目を見開いたのち、思わず『ぷはっ』と吹き出した。
『それはすごすぎる!』
だってこんなに種類あるのに…!
でも、治くんならぺろりと平らげちゃいそうだなぁ。
そして、きっとすごく美味しそうに食べたんだろうなぁ。
いつも教室で、お弁当を食べる彼は幸せそうに食べていて、その横顔を見るのが私は大好きだった。
治くんのお言葉に甘えて、抹茶パフェと苺パフェの2つを頼んで、二人で半分個にした。
「んまぁ、やっぱここのパフェが一番や」
本当に美味しそうに食べる目の前の彼が可愛くて、思わず見惚れてしまう。ほんとうに夢みたい。大好きな人とこうして放課後にカフェデートをしているなんて。
「ほら、いおりちゃんもあーん」
不意に治くんがスプーンを私に差し出した。
『え?ちょ、ーー』
口元まで来たスプーンから、アイスが溶けて落ちそうになって慌てて私はぱくっと食べた。口の中に甘い苺アイスの味が広がってーー
「どう?美味いやろ?」
ニカッと笑う治くん。
(ーー間接キスだよ~~~っ!)
意識しているのはきっと私だけで。
恥ずかしさで、思わずカァァ、と顔が赤くなって
『ほんと恥ずかしくてむり…!』
「ふはっ、カップルはこれくらいやるで?」
と、からかうように笑う彼の言葉に、ほんの少しだけ胸の痛みを覚える。
ーーカップル。
私たちは今、はたから見ればカップルに見えているのかもしれない。だけど、本当は、偽物のカップルだ。
私たちは付き合っていなくて。
治くんは優しいから、私のために「彼氏のフリ」をしてくれている。
(ーーっ、うぬぼれそうになる…っ)
あまりにも甘くて幸せな時間に浸っていると、脳が錯覚してしまう。