【長編】仮面カップルを卒業したい
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『…はぁはぁ、っ』
自分の机に着いて、息を整えていればーー
「どうしたん?」と治くんが目を丸くしてた。
『え、あ、…走ってきて、ちょっと疲れて…』
「まだ予鈴まで余裕あんで?」
『そ、そうだよね。時計見間違えちゃった…あは、は』
適当に誤魔化して笑っていれば、
「サムー!!数学の教科書貸してや!」
と、侑くんが教室に来て、
「はぁ?また忘れたんか?」と治くんが眉間に皺を寄せながら、侑くんの方へ行く。
一人にになって、ふぅ、と溜息をついた。
――今日の放課後も、またあとつけられたらどうしよう。誰かに相談すべきだよね?でも、もしかしたらもう現れないかもしれないし。それに後つけられているかもしれないなんて、言いにくいし。
『ーー…はぁ、言えないよ』
「なにが?」
『!!??』
いつの間にか、角名くんが私の横に立っていた。驚きすぎて、声を失っている私に、彼は目を細めながら「言ってみなよ」と首を傾げている。
『ななななんのこと?』
「どもりすぎw」
おっほほ、と笑った角名くん。
「なにが言えないの?」
『……ちょっとした、出来事があって』
「うん」
『それをどうしようかな、と思ってまして』
「うん」
角名くんは、私をジッと見ている。まるで続きを促すみたいに。
――どうしよう。せっかくだから、お言葉に甘えて…
一通り話し終えた私は、黙ったままの角名くんに慌て始める。
『あの、でも私の勘違いかもしれないし!』
「でも勘違いじゃなかったら、どうすんの?」
『え?』
「ちゃんと言わなきゃダメだよ。なにかあってからじゃ遅いじゃん」
『そ、うですよね。ごめんなさい』
項垂れていれば、
「なんやなんや、角名がいおりちゃんいじめとるん?」
と、侑くんが興味津々に会話に入ってきた。
手元には治くんから借りたらしい数学の教科書がある。
『あ、いや私が悪くて――』
「――いおりちゃん、ストーカーされてるかもしれないんだって」
『ちょ、す、なくん!?!?』
ズバッと言い放った角名くんに、ひっ、と声を漏らしながら固まる私。侑くんも治くんも「「え?」」と、一瞬動きを止めて、目を見開きながら私を見る。
「は?待て、そいつ誰や?」
ふいに治くんの聞いたことのないような、低い声が響いた。
『あ、わ、わからなくて。知らない人だけど、たぶん20代くらいの男性?』
「いつからや?」
眉をひそめた治くんが、低く唸る。
『一昨日…です』
「はぁ?なんでもっと早う言わないねん!」
『勘違いかもしれないし…』
なんか自分の思い込みだったら恥ずかしいし…、と口ごもれば、
「あほか!いおりちゃん女の子なんやで!?」
治くんがいつもに増してすごい怒っていることに、たじろぐ。
「危ない目にあってからやと遅いやろ!」
『…っ』
真剣な顔をして怒る彼は正論を言ってて、なにも言えない私は『ご、めん…』と小さく呟いた。