【長編】「俺が跳ばせたる」
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そして彼らの邪魔にならないよう、小声で「しつれいしまーす」と言い、体育館倉庫へ向かおうとした。
だけどーー
「お、いおりや。なにしとん?」
と、幼馴染の銀に、声をかけられた。
すると、
「あ、ほんとや。なんやいおり、声かけぇや」
と、侑くんが言い
「ちょうど今人手足りとらんのや。手伝ってくれへん?」
と、治くんが言う。
「え?なにを?」
「マネージャー業や」
「エッ?!」
どうやら今、インターハイを控えているらしく、練習やら練習試合やらスケジュールがキツキツらしい。
男子バレー部はマネージャーがいない。侑くん曰く「中途半端な奴が入っても邪魔やねん。それにギャーギャー喧しいのはいらんねん」と。
侑くんも治くんもモテる。身長高くて、顔もかっこいい。それにプレーもめちゃくちゃかっこいい。
宮双子を目当てに、女子のファンが沢山駆けつける。
さすがに練習のときは気散るから、見学は禁止だけど、練習試合になるとたちまちギャラリーは女子の見学人で埋まる。そして黄色い歓声が炸裂する。その黄色い歓声がどうやらうざったいらしい。
宮双子はモテるけど、必要以上に女子と関わろうとはしていない。
「アイツらにとって、今はバレーが命やからな」って、前に銀が言ってた。銀とは、家が近くて幼稚園の頃からの仲だ。
私は銀と仲良いから、必然的にバレー部のみんなとも話すようになった。
高校に入学してまだ間もない頃のことーー
その日は、銀と帰ろうとしているところに、
「おー、銀、と…なんやっけ、幼馴染のなんとかちゃん」
「なんとかちゃんは失礼や、ツム」
と、宮双子と合流した。
入学してから2回くらい顔を合わせてんだけど、まだ名前覚えられてへん…、と少し落ち込むけど、
「すまんなぁ。ツムの奴、女子に対して言葉キツイねん」
と、治くんが言ってから、「あ、女子以外にもやったな。全体的に言葉キツくて、友達できんのや」と言い直していた。
そしたら「はァ?なんやとサム!どこがキツイんや!?」と、応戦する侑くん。
でも確かに、その噂は聴く。
宮侑は、言葉がキツくて、態度が悪い、と、
入学式から「かっこいい双子がおる!」と話題に上っていた宮双子は、すでにたくさんの女子から告白されていているけど、全部断っているらしく。
しかも
「アンタのこと知らへんし。言うてまだ入学して2週間くらいで、俺のこと何がわかるわけ?」とかなりキレッキレの辛辣な言葉で。
そんで泣いた女子が、すでに2、3人おる、って誰かが言ってた。
「何も知らへん癖に勝手にギャーギャー騒がれてやかましいねん。恋愛にしに高校きてるんちゃうで」
「なんのために高校きてるん?」と、銀が聞く。
「バレーのためや。全国優勝するんや!」
大真面目な顔で、でも目は物凄くキラキラさせて、さも当たり前のように言い切る彼が、なんだか眩しかった。“全国”という響きが、懐かしくて、くすぐったくて、それでも真っ直ぐ胸に響いた。
「ええな、全国優勝。かっこええ」
気付けば、口からポロリと出ていた。
侑くんの綺麗な目が、私を見た。
全国という舞台へ向けて輝く、その曇りのない綺麗な目に、すごい魅了された。
「ほんなら銀の応援行くな。全国優勝したら、サインちょーだいな」
「え、銀の応援?俺らの応援は?」と侑くん。
「幼馴染の応援が第一やな。次いで、チームの応援」
そう言い切れば、ふいに治くんがおかしそうに笑いだした。
「なんや、アンタおもろいなぁ。ツム振られてもうたな」
「はァ?!なんやサム、笑うところちゃうで!しかも告ってへんわ!」