【長編】伸ばした手の先に。
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『ちょ、ちょっと待って…』
「お、おん」
『今、脳の処理が追いついていない…です…』
かぁ、と顔が赤くなっていくのを感じながら、ふと脳内に同期の「ええな恋の力やな」という言葉が思い浮かんで、うっ、と顔を覆いたくなる。よりによって、なんで今思い出すんだ自分!だめだ、調子狂う…!
どくんどくん、と脈打っている心臓を落ち着かせようにも、彼がじぃっとこちらを見ているから、余計に意識して、顔が赤くなっていくばかりで。
『と、と、とりあえず!!』
「おん」
『………』
ーーとりあえず……とりあえず…、どうしよう?
言葉が続かない。どうすべき?なにを言うべき?彼に返事をすべき?気持ちは嬉しいけど、今は恋愛をする気はなくてって告げる?
脳内プチパニックを起こしていればーー
「俺は本気やから。本気で好きやから、付き合おうて欲しい」
『……っ』
「でも無理強いはしぃひん。いおりちゃんはまだその元彼のことを好いとるんやろ?」
その言葉に、微かに胸がチクッと痛んだ。私は、まだ元彼のことが好き?いや、そんなことはないはず。吹っ切れたはずーー。もやもや、と考えている私を、どうやら侑くんは、まだ私が元彼を引きずっていると勘違いしているらしくーー
「俺は全力でいおりちゃんを振り向かせたる」
と、強い意志がこもった、熱い眼差しを向けられた。
結局、家まで送ってもらって「また会おうな」と侑くんは名残惜しそうに帰路についた。今日はもう疲れたから、元彼へのLINEの返信は、明日の朝にしようって思ってーー。
そして翌日の朝になって、スマホを握りながら『…気、重いなぁ』と溜息が出た。
『やっぱ退勤して夜にゆっくりできるときに返信しよう』と思ったもののーー、結局、なんだかんだ返信できないまま、3日が経って、金曜日の夜を迎えていた。
「はぁぁ?あほなん!!?」
『うぐっ』
居酒屋で、同期の子に一通り話せば、思いっきり叫ばれて、言い返す言葉もない。
「さっさと元彼に返信しぃや!」
『いや、まあ…しようと思ってんだけど…、できなくて、ね』
「ね、やないやろ!」
怒っている同期に、はい、すみません、と小さく謝る。
「ええか?いつまで経っても問題解決できへんで?このままズルズル、もやもやを抱えとくの嫌やろ?」
こくり、と頷く。
「はい、じゃあ今ここでLINE返しな」
『え?!今!?ここで!?』
「あんた一人じゃいつまで経っても、返信しぃやん」
正論を言われ、うっ、と口ごもる。でも彼女の言う通りだから、恐々と元彼のメッセージに既読をつけて『元気です』とだけ返信した。
「なんやそっけないな」
『いやこちとら別れてますし』
「まあせやな。そういやクソ男やったな。《元気です》やなくて《新しい彼氏おって幸せるんるん元気100%やで》って返信したほうが良かったんちゃう?」
『…いや、いい』