【長編】伸ばした手の先に。
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その後、連絡先を交換してから彼のほうから連絡が来て、なぜかダラダラとやり取りが続くようになった。内容は本当に他愛もないものばかりで、ほぼ一方的に彼が今日あった出来事を報告してくることが多くて。
ーー今日な、サーブむっちゃ入ってん!調子よかったわ!
と言った具合に、内容は彼がバレー選手ゆえに、ほぼすべてバレーに関することで。
たまに、
ーーチームメイトの翔陽くんと写真撮った!
と、自撮りが送られてくることもあった。
そのおかげか、いつの間にか私は彼のチームメイトの名前と顔を一致するまでに詳しくなっていて。
でもまあ、さすがに
ーー双子のサムが作ったおにぎり!
と、おにぎりの写真だけ送られてきたときは返信に困ったけど。
だけど、やり取りを重ねているうちに、心のどこかで少し彼の連絡を楽しみにしている自分がいることにも気付き始めていた。気さくで面白くて、真っ直ぐな彼のメッセージを、疲れているときに受け取ると、自然と笑みが零れた。
会社と自宅の往復の毎日の中で、ふとした時に、彼からLINEがくると、思わずすぐに確認したくなるほどになっていて。代り映えのない何気なく過ぎていく日々が、少しづつ色どられていくような気がした。
いつの間にか彼は私のことを「いおりちゃん」と、そして私は彼のことを「侑くん」と言うようになっていて、何回か電話もしていた。
ーー見てや、このおみおみの顔。
今日送られてきた自撮り写真には、侑くんと、同じチームメイトでありあの時居酒屋に一緒にいた黒髪の佐久早さんが映っていて。
佐久早さんに思いっきり肩を組んでピースして満面の笑みを浮かべている侑くんの顔に対して、佐久早さんはめっちゃ嫌そうな迷惑そうな顔をしている。
思わず、ぶはっ、と笑いが込み上げてしまって、「何笑てんねん」と上司にどやされた。
その一連を見ていた同期が、昼休みになるなり、私を食堂に連れ出して、事の詳細を一からすべて話す羽目になってしまった。
「ええやん!いつの間に新しい恋に進んでたん?なんや最近、いおりの雰囲気明るくなったと思ってたんよ」
『え?』
「ええな恋の力やな」
雰囲気が明るくなっていた?
自分では無意識だったことを指摘されて、戸惑う。
『恋、では、ない…と、思う』
「めっちゃ歯切れ悪いやん!」
大爆笑している同期とは裏腹に、え?恋?自分が?と心は揺れていて。
だって、もう当分恋愛はしなくていいって自分で決めたじゃない。そういう感情に振り回されるのは、もう懲り懲りって思ってたはずなのに――