【長編】伸ばした手の先に。
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『……』
「……」
と、そこで会話終了。お礼を言ったから、もう立ち去っていいかな?と思いながら、もう一度会釈して、立ち去ろうとすれば――
「あの!」
と、腕を掴まれた。
怪訝に思えば――
「自分、宮侑言います!24歳です!」
『……あ、はい』
何故か自己紹介されて、思わず真顔で返事をしてしまった。
「あの!怪しいもんちゃうので!連絡先交換してください!」
ーーえ、ナンパを撃退してくれたと思えば、自分もナンパするの?
と、思ったけど、すっごい真剣な顔で、真っ直ぐ目を見つめられて少したじろいでしまう。冗談とかからかっているとかではなさそうで。
「…自分で怪しいものじゃないって否定する人ほど怪しいだろ」
ふいに別の男の人の声が聞こえたと思えば、これまた背の高い黒髪の、そしてマスクをつけた男の人が、呆れたように溜息をついていた。
「お、おみおみ!」
「おみおみ言うな」
「せやけど、怪しいもんちゃうで!名前はちゃんと名乗ったし!」
「そういうことじゃないだろ。バカなの?」
二人の会話に思わず「プッ」と噴き出してしまって、二人がこっちを見た。
「ーーこいつ、面倒くさいので辞めといたほうがいいですよ」
「なっ!おみおみ何失礼なこと言うてん!?」
慌てる宮侑さんが必死に「ちゃうで?本当にちゃうからな?」と弁明しようとしている。もう完全に警戒心は溶けていて、謎の親しみが芽生えていた私は、笑いながら『連絡先いいですよ』と言う。
「ほ、ほんま!?ほんまにええの!?」
『え、あ、じゃあやっぱり遠慮しときます…?』
「え?!嘘やん!まって、心臓痛いわ」
「はぁ、うるさ」と言いながら、おみおみと呼ばれた人はお手洗いの方へ歩いて行ってしまって。
結局、私は宮侑さんと連絡先を交換した。
これが、私と彼の出会いだった。