【長編】伸ばした手の先に。
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「好き」っていう感情って、どういうものだっけ?
好きで好きで堪らなくてあんなに幸せな日々だったのに、別れは一瞬で。そんな恋愛に臆病になっていたあの頃、彼に出会った――。
「残業、残業、残業!なんでこんな毎日残業あんねん!」
『まあまあ、落ち着いて』
同期の女の子と、居酒屋でサシ飲み。時刻は22時を回ろうとしている。今日も今日とて残業だった私たちは、金曜日ということで、日頃の鬱憤を晴らすために居酒屋に来ていた。
明日は土曜日で休日。だから少し気が緩んだらしく、同期は飲みまくって完全に酔っぱらっていた。
「癒しが欲しいわ!こんな毎日働いて、家帰ってクタクタになって死んだように眠って、朝死にそうな顔しながら出勤して…もうええわ!さっさと結婚して、会社辞めたるわ!」
グイっとジョッキを飲み干した同期。
「彼氏欲しい!!イケメン彼氏に癒されたい!!」
『はいはい、落ち着いて落ち着いて』
「いおりだって欲しいやろ?イケメン彼氏」
『ん~、別に今は恋愛しなくていいかなぁ』
「はぁ?何言うてんねん!あ、まだ元彼のこと引きずっとんのか?あんなクソ男忘れたほうでええで」
あはは、と苦笑する。
元彼、クソ男、ねぇ。
私には3年も付き合っている人がいた。本当に大好きで大好きで、私のほうから告白した。
だけど去年、私が東京本社から大阪支社に移動が決まって、遠距離恋愛になると告げた瞬間、別れを切り出された。しかも、他に好きな人ができたらしい。
何を言われたのか。なんでこんなことになったのか。全然頭が追いつかなくて。それでも引っ越しの準備で忙しくて。
がむしゃらに働いていれば、それだけ「元彼」のことも忘れられるような気がした。
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