【短編集】稲荷崎
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縁側は月光のおかげでほんのり明るかった。優しい秋風に吹かれながら、ほろよいの秋限定《秋色りんご》をちょっとずつ飲む。
「なんや、ここにいたんか」
不意に信介がヒョイッと縁側に顔を出すなり、私の隣に並んだ。
「なんや月見ながら酒飲んどんのか?月見酒やん」
『月に慰めてもらってた』
「……? なんかあったん?」
小首を傾げる彼に、私は今日の出来事を話す。後輩育成を任命された上に、担当してたプロジェクトが難航して、さらにそこに体調不良者一名出て、やることが増えていること。忙しいのに、コピー機は不具合だわ、家にスマホを忘れるやら、つくづく運がないこと。
「ほんと、やってられない…」
はぁ、と深い溜息を吐いて、残りのアルコールを一気にグイッと飲み干した。
「――慰めてもらう相手違うんとちゃうか?」
月に向けていた視線を、隣の彼に向けた。柔らかな月光の中で、信介が両腕を広げていて。思わず彼の腕の中に飛び込む。彼の温もりに、ホッと安心して『…月よりもこっちがいいわ』と思わず零した。
「せやな。お月さんはこうしてギュッてできへんからな。それに--、」
ふとそこで言葉を切った彼が、そっと私の唇に優しいキスを落とした。
「お月さんやと、キスもできへんしな」
『月と張り合ってるの?』
「いおりが、俺やなくてお月さんに頼ろうとするからや」
『月に嫉妬してるってことだね』
思わず、ふふっと笑えば、私の笑いを封じ込めるようにまたキスをされて。さっきよりも長くて深い、濃密なキスに「んっ」と息が漏れる。
ようやく唇が離れた時には、私は酸素を欲するように肩で大きく息をしていて。びっくりして目を見開いている私に向かって、彼がフッと目を細めた。
「せや、嫉妬してるから、お月さんに見せつけてやったわ」
-FIN-
「なんや、ここにいたんか」
不意に信介がヒョイッと縁側に顔を出すなり、私の隣に並んだ。
「なんや月見ながら酒飲んどんのか?月見酒やん」
『月に慰めてもらってた』
「……? なんかあったん?」
小首を傾げる彼に、私は今日の出来事を話す。後輩育成を任命された上に、担当してたプロジェクトが難航して、さらにそこに体調不良者一名出て、やることが増えていること。忙しいのに、コピー機は不具合だわ、家にスマホを忘れるやら、つくづく運がないこと。
「ほんと、やってられない…」
はぁ、と深い溜息を吐いて、残りのアルコールを一気にグイッと飲み干した。
「――慰めてもらう相手違うんとちゃうか?」
月に向けていた視線を、隣の彼に向けた。柔らかな月光の中で、信介が両腕を広げていて。思わず彼の腕の中に飛び込む。彼の温もりに、ホッと安心して『…月よりもこっちがいいわ』と思わず零した。
「せやな。お月さんはこうしてギュッてできへんからな。それに--、」
ふとそこで言葉を切った彼が、そっと私の唇に優しいキスを落とした。
「お月さんやと、キスもできへんしな」
『月と張り合ってるの?』
「いおりが、俺やなくてお月さんに頼ろうとするからや」
『月に嫉妬してるってことだね』
思わず、ふふっと笑えば、私の笑いを封じ込めるようにまたキスをされて。さっきよりも長くて深い、濃密なキスに「んっ」と息が漏れる。
ようやく唇が離れた時には、私は酸素を欲するように肩で大きく息をしていて。びっくりして目を見開いている私に向かって、彼がフッと目を細めた。
「せや、嫉妬してるから、お月さんに見せつけてやったわ」
-FIN-