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てつぐろ の かけら


君への想いはどの言葉に託そうか。
推敲に推敲を重ねて消費された便箋が山を成す。

書きたいことが多すぎてまとまる気配がない。


体温より低くなったミルクティーに再び口をつけた。
ふと送られてきた手紙を改めて読み返してみた。
彼女が作成したであろう小さなドライフラワーと共に紙が2枚。
その文字を見るといつも顔が綻ぶ。


完璧とは言い難いが、味のある気持ちのこもった字体。
その文からは、蒼天の元で洗濯物を干す彼女が容易に想像された。


家は郊外に建てた。
都会の喧騒も苦手ではないが、住むなら自然が豊かなところが良いという彼女の希望で。

彼女は今日も静かな家で俺を待っている。
そのことを考えると胸が締め付けられる。

そばにいてやることができたら。
不意に心配で心配でいてもたってもいられなくなる時がある。
いつか失うものと頭では理解しているはずなのに。

彼女にそのことを言うと、ぐるちゃん心配しすぎやねん、と笑うだろうか。

一度、暇そうなゾムあたりをガード役として派遣しようか、と提案したが笑われてしまったことがある。


しかし心配なものは心配なので、あなたの身を憂えているということ、近況報告などを綴ると便箋を4枚も使ってしまった。


炉にセットした蝋燭に火を灯す。

ゆるくなっていくワックスの様子をうかがいながら窓の外を眺めた。

君から離れて何年が経っただろうか。
共に過ごした美しい季節たちもすっかり色褪せてしまった。

フラップを閉じ、ワックスを垂らす。
細かい金箔を散りばめ、最後にスタンプを押す。
この想いは無事に届くことを願い、封をした。

「全てを片付けて、早よ帰らな」
今日も待っている彼女の元へ。
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